Article Title
ウクライナ情勢と市場動向
梅澤 利文
2022/02/21

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

北京冬季五輪が2月20日に閉幕しました。五輪閉幕を意識してか、ロシアのウクライナに対する軍事侵攻を懸念する声がある一方で、前面衝突を回避すべくギリギリの外交交渉が続けられています。複雑な政治問題ゆえ、今後の展開は全く読めませんが、仮に軍事的衝突となれば双方にとって経済的ダメージは大きく、メリットは少ないように思われます。



Article Body Text

ウクライナ情勢:軍事侵攻の懸念が高まる一方で、衝突回避の外交努力も継続

バイデン米大統領は2022年2月18日、ホワイトハウスで緊迫するウクライナ情勢について演説しました。ロシアのプーチン大統領がウクライナへの侵攻を決めたのかという記者団の質問に対し、バイデン米大統領は「現時点で彼(プーチン大統領)が決断したと確信している」と述べました。

一方バイデン米大統領はロシアが外交による緊張緩和に向け交渉のテーブルに戻るのは遅くないとも述べています。

なお、ホワイトハウスとフランス大統領府は20日に声明で、バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領が米ロ首脳会談を行う提案を「原則」として受け入れたと表明しましたがロシアがウクライナを侵攻しないことが開催の条件です。

どこに注目すべきか:ウクライナ、軍事侵攻、外交、NATO、制裁

ウクライナ情勢悪化が市場に与える影響を概観します。

まず、地政学リスクに反応しやすい通貨の動向を主な新興国についてみると(図表1参照)、ロシアルーブルの下落は当然として南アフリカランドやインドルピーも鈍い動きです。南アやインドなどの資源輸入国はウクライナ情勢の悪化による資源価格上昇のとばっちりを受けた格好です。

ウクライナ情勢の悪化は、ウクライナとウクライナを支持する米国を含む北大西洋条約機構(NATO)とロシアとの間でウクライナのNATO加盟を巡る争いと見られます。米国の利上げ観測が悪材料となっている新興国にとって、追い討ちをかける事態となっています。

次に、仮にロシアが軍事侵攻した場合ですが、西側からは前例の無い経済制裁を課すと警告しています。制裁を懸念してロシア債券市場はウクライナ情勢の悪化に伴い急速に下落(利回りは上昇)しています(図表2参照)。経済制裁が発動した場合、ロシア債券や財政には信用力の悪化が追い討ちをかけそうです。ロシアは主要格付け会社から現段階では投資適格の格付けを確保しています。しかし格付け会社はロシアが経済制裁を受けた場合、制裁内容次第で格付けを引き下げる可能性を示唆しているからです。

ロシア財政も余裕があるとはいえません。昨年12月にロシア上院が可決した22年~24年予算案は歳出を1.5%削減する緊縮予算です。国防費は3.5兆ルーブルを確保していますが軍事侵攻がエスカレートすることに伴う資金を確保する余裕があるとは考えにくいと思われます。

なお、西側からロシアに対する制裁として浮上した銀行間の国際的な決済ネットワーク、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを排除する案は米当局からも世界経済への影響が大き過ぎるとして慎重論が優勢となっています。

最後に、欧州のエネルギー事情を輸入先の構成比を過去10年程さかのぼって確認するとほぼ変動がなく、欧州は天然ガスをロシアに依存しています(図表3参照)。新たな輸入先として期待されるカタールのシェアは10%以下に留まっており短期的に輸入先を替えられるのかは疑問です。欧州は天然ガスだけでなく、原油もロシアに依存しています。ウクライナ情勢の悪化は経済的には双方にマイナス面が大きいとみられ、世論の支持が得られるのか疑問が残ります。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


インド中銀、タカ派姿勢を示す

強かった7月米雇用統計の解釈

OPECプラス、やはり小幅増産にとどまる

豪中銀の政策金利は定められた軌道を巡るわけではない、とは

それでも明るくなれないユーロ圏の経済指標