Article Title
ロシア軍事侵攻と市場の反応の何故
梅澤 利文
2022/02/25

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻と、それに対する主要国のロシアに対する経済制裁が強化されました。市場はこれらのニュースに振り回される展開が続いています。ロシアの行動は予測不能で、市場は不安定な動きが続くことが想定されます。なお、来週は市場にとって重要となりそうなイベントを控えており注目が必要です。



Article Body Text

ウクライナ情勢:ロシアの軍事侵攻を受け主要国は経済制裁を強化

ロシアのプーチン大統領は2022年2月24日にウクライナ東部で特別軍事作戦を行うことを決めたと発表しました。これを受けロシア軍は同日、ウクライナの軍事施設へのミサイル攻撃を開始しました。米国防総省高官は同日、ロシア軍がウクライナ侵攻で少なくとも160発のミサイルや75機の爆撃機を使ったとの分析を明らかにしています。

ロシアの軍事侵攻を受け、主要7カ国(G7)はロシア向けの経済制裁の強化を発表しました。ロシアの主要銀行の外貨決済を禁じるほか、半導体などハイテク製品の輸出を制限するとしています。米国は今回の制裁では前回含めなかったロシアの最大手銀行、ズベルバンクや2位のVTBバンクを含む大手金融機関を制裁対象に加えると表明しました。

どこに注目すべきか:軍事侵攻、ウクライナ、経済制裁、SWIFT

ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、シナリオの1つとして想定されてはいましたが、それでもサプライズであったと見られます。直後の欧州株式市場の急落が(特に欧州にとって)事態の深刻さを物語ります。

ロシアの軍事侵攻を受け主要国が追加制裁を相次いで発表しました。ロシアの主要銀行への制裁など、当初の経済制裁を上回っていると見られます。そのため対立の深刻化が懸念されそうですが、24日の米株式市場は、乱高下はありましたが主要指数はプラスに転じました。米国債市場でも、リスクオフを受け、利回りが大幅(0.15%)程度低下(価格は上昇)する局面もありましたが、結局は小幅な低下に留まりました(図表1参照)。

市場が結局安定を保った理由は3点ほど考えられます。1点目はロシアに対する国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済システムへのアクセス遮断が見送られたことです。バイデン大統領は、欧州の反対があり導入には至らなかったと説明しています。ロシアもクリミア侵攻後の経済制裁の経験から、独自の決済システムを導入していますが拡大はしておらず、SWIFTから排除されれば事実上取引が滞るとみられます。もっとも欧米諸国などへの副作用も甚大でこれが回避されたことが安心(?)要因と見られます。

2点目は欧州へのガスなどの供給については、既存のものが概ね維持されたためです。

3点目は北大西洋条約機構(NATO)にしても、米軍にしてもウクライナへの派兵は見送られていることです。軍事侵攻はあっても、軍事衝突は今のところ、そして恐らく今後も回避されるとの見方が、市場の落ち着きの背景と見ています。

市場動向は当面ウクライナ情勢に左右されそうですが、来週は注目したいイベントが目白押しです(図表2参照)。

主なポイントを述べると、原油価格については石油輸出国機構(OPEC)プラス閣僚協議が注目されます。毎月日量40万バレルの供給拡大ペース維持が見込まれますが、現状分析などにも注目しています。米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長の議会証言も注目です。足元市場が不安定なのはウクライナ情勢とFRBの引き締めが重なったという背景があるからです。足元の市場予想は相当トーンダウンしましたが、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.5%の利上げまで想定されました。今回の証言は3月FOMC前の恐らく最後の公での発言と思われ注目が必要です。また、利上げに関連して、米2月雇用統計では賃金動向に注意が必要です。最後に中国の姿勢です。中国はロシアに一定の理解を示しているようです。全人代でこれらの点に言及することは無いと思われますが、中国の姿勢の確認は重要と考えています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


ニュージーランド、利上げは続くが

7月の中国主要経済指標の気がかりな点

7月米CPIと金融政策の今後の展開

ブラジル、インフレ率低下の明暗

インド中銀、タカ派姿勢を示す

強かった7月米雇用統計の解釈