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タカ派的な3月FOMCの注意点
梅澤 利文
2022/03/17

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概要

今回のFOMCにおける0.25%の利上げは想定通りです。一方ロシアの軍事侵攻を受けエネルギー価格が上昇する中、ドットチャートで年内利上げ回数を7回としたことや、インフレ見通しを引き上げた点で、FOMCのトーンはタカ派(金融引締めを選好)的であったと見られます。ただ、成長見通しの引き下げを迫られるなど、この先の政策運営に難しさがうかがえます。



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3月FOMC:予告通りの利上げと、インフレ見通しの引き上げでタカ派的なトーン

米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年3月15日から16日まで米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催しました。パウエル議長が月初の議会証言で予告した通り、政策金利を0.25%引き上げました。政策金利の見通しを示唆するドットチャートでは年内7回(今回の利上げを含む)の利上げが示されました(図表1参照)。

市場では、FOMC声明文や経済予測(図表2参照)を背景に、今回のFOMCはタカ派(金融引締めを選好)との反応が見られました。しかしパウエル議長の会見などを受け、若干タカ派色が修正される展開となりました。

どこに注目すべきか:FOMC、経済予測、PCE、ドットチャート

市場が当初、今回のFOMCをタカ派的と見たのは主に次の点が背景と見ています。

まず、年内の利上げ想定回数が7回となったことです。ドットチャートで確認すると、利上げ回数は22年が7回、23年が3.5回、24年がゼロ回と見られます。FOMC前に先物市場では年内7回の利上げは織り込んではいました。しかしFOMC参加者はそこまで利上げを見込まず、6回程度にとどまるとの見方が市場にあっただけにやや意外でした。

次に、FOMC参加者による経済予測で、PCE(個人消費支出)デフレーターで示されるインフレ率が大幅に上方修正された点もタカ派的でした(図表2参照)。22年のインフレ率はコアで見ても4%台が予測されています。市場では年後半のインフレ率の低下を想定して、FOMC予測は3%台になるとの見方もあっただけに、FOMC参加者はインフレの一段の長期化を見込んでいると見られます。また、インフレ予測は23年、24年も小幅ながら上方修正されている点からも、物価上昇の長期化を想定していることがうかがえます。

さらに、雇用市場について従来の見解の繰り返しにはなりますが、パウエル議長は労働供給が不足するほど好調な状況であると指摘し、年末には失業率が3.5%程度にまで低下するとの見通しを示しています。今回、22年の実質GDP(国内総生産)成長率予測については2.8%と引き下げた一方で、労働市場は回復基調との見方を維持しています。

なお、FRBのバランスシートの縮小(QT)については詳細は示されませんでした。ただ、4月6日に公表予定の議事要旨に内容を明らかにすると述べており、着々と準備は進んでいる事が示され、年前半の開始も視野に入りそうです。

ただ、発表内容は、一見すると確かにタカ派的なのですが、時間が経過すると、タカ派的なトーンが若干見直されました。その背景は明確ではありませんが、政策金利の予測は前倒しされてはいますが、24年には利上げ回数がゼロなど先々で引き締めが弱まると見られます。市場ではフォワードカーブなどで既に示されていることですが、引締め前倒しが進むにつれ、引き締めすぎによる利上げの小休止も意識され始めている可能性が考えられます。また、利上げの回数でなく幅に注目すると、市場ではどこかの時点で0.5%の大幅利上げをすると見込んでいます。パウエル議長も状況次第で0.5%の利上げを行う可能性を示唆しています。しかし、その同じ会合で、反対票(0.5%を支持)はセントルイス連銀のブラード総裁1人だけでした。これほどのエネルギー価格上昇を目にしても、利上げ幅の引き上げのハードルはやや高いのかもしれません。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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