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ブレイナード発言で注目度が高まったFOMC議事要旨
梅澤 利文
2022/04/07

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概要

米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事が4月5日にイベントで、量的引き締め(QT、FRBの保有資産の縮小)を早期に開始することの必要性を訴えたことで注目された今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨ですが、概ね市場予想に沿った内容でした。利上げを含め現局面の金融引締めは過去に比べ速いペースとなる可能性が高まっています。



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FOMC議事要旨:FRBの金融引き締め策の内容がより明らかとなった

米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年4月6日に米連邦公開市場委員会(FOMC、3月15~16日開催)の議事要旨を公表しました。FRBのバランスシートに保有する大規模な資産を月額最大950億ドル(約11兆7600億円)のペースで縮小することが示唆されました。

政策金利について、議事要旨では物価上昇圧力が和らがない場合には多くの参加者が今後0.5%の利上げが1回以上適切になり得るとの認識を示しました。なお、3月の会合では0.25%の利上げが決定されましたが、ロシアのウクライナ侵攻がなければ多くの参加者は0.5%の利上げが支持されていたであろうことが示されました。

どこに注目すべきか:ブレイナード理事、議事要旨、QT、FF金利

ブレイナードFRB理事の5日の発言と3月のFOMC議事要旨の公表を受け米国債市場で見られたのは、長期国債利回りが短期国債と比較してより上昇したことです(図表1参照)。反対に昨年後半から、足元までは政策金利引き上げ期待を反映して短期国債利回りが長期国債利回りより上昇したため長短利回り格差は縮小から一時は逆転するにまで進行しました。

ブレイナード理事発言では量的引き締め(QT)を5月にも開始する可能性が示されました。QT開始となれば長期国債の需給悪化が懸念されるため長期国債利回りの上昇(価格は下落)が見られました。逆に言えば、市場はQT開始そのものはあるとしても、5月のFOMCでの開始を完全には織り込んでいなかったものと推察されます。FRBのパウエル議長は1月の米上院委員会の公聴会でQT開始は年後半を示唆していました。利上げに比べQTは開始時期に関連する当局の発言が少ない中、市場もそれなりに前倒しは想定していたものの、5月開始の可能性はやや織り込み方が少なかったようです。議事要旨では早ければ5月のFOMC後に縮小を開始すると記されています。

なお、QTは毎月の圧縮上限を国債600億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を350億ドルでほぼ合意したようです。これは前回(17年~19年)のQTの上限のほぼ倍にあたるペースでの縮小となります。ただ、市場の圧縮上限の予想とはほぼ一致しているため影響は限定的でした。ただ、MBSの残高圧縮が長期化する可能性があるため、MBSは将来的には、償還による自然減だけでなく売却も検討されそうです

次に政策金利について議事要旨では今後のFOMCで、インフレの状況により、1回かそれ以上、0.5%の利上げ実施を多くのFOMC参加者が支持していたことが確認されました。

政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利先物から想定される22年年末の政策金利の水準で市場の利上げの織り込みを振り返ります(図表2参照)。1月FOMCの頃は年4回の利上げ(1回0.25%引き上げ)が想定されていましたが、3月のFOMCの頃には年7回分となりました。足元では1回から数回は1回の利上げ幅が0.5%となることを見込んだ水準にまで市場予想が上昇しています。もっとも、議事要旨と市場予想の間に大きな相違は無く、議事要旨公表後の国債市場は落ち着きを取り戻しています。当面はFOMC参加者が政策金利の長期的な水準とする2.5%程度をベースに、米国債の取引が展開されるものと思われます。

なお、3月の利上げ幅を0.25%としたのはロシアの軍事侵攻後であったからで、そうでなければ0.5%により支持が集まっていたと議事要旨が指摘していることから、5月のFOMCで利上げ幅が0.50%となる可能性が高くなったと見られます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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