Article Title
米3月CPIのメッセージ
梅澤 利文
2022/04/13

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

昨年春から、米消費者物価指数(CPI)の発表を受け、米国債市場で利回りが上昇するケースが見られました。しかし今回のCPIの発表を受け米国債利回りは低下しました。コアCPIが前月比で市場予想を下回ったことなどが背景と見られます。米連邦準備制度理事会(FRB)の引締め政策に影響があるとは見ていませんが、インフレに変化の兆し程度は見られます。



Article Body Text

米3月CPI:インフレ率は前年比では高水準だが前月比に頭打ちの兆し

 米労働省が2022年4月12日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.5%上昇と、約40年ぶりの水準となり、市場予想の同8.4%上昇、前月の同7.9%上昇を上回りました(図表1参照)。

一方、足元の変動を反映する傾向がある前月比で見ると3月の総合CPIは前月比1.2%上昇と、前月の0.8%上昇を上回りました(図表2参照)。しかしエネルギーや食料品を除いたコアCPIは前月比で0.3%上昇と、市場予想や前月の同0.5%上昇を下回りました。

どこに注目すべきか:CPI、寄与度、エネルギー価格、中古車価格

まず、3月の米CPIを振り返ると、前年比ベースでは総合、コア共に歴史的な高水準で推移しています(図表1、実線)。しかし前月比ベースで見ると、総合は引き続き上昇傾向ですが、コアは減速となりました(図表1、点線)。

前月比ベースのCPIについて構成項目別に寄与度分析すると、総合CPIは3月に1.2%上昇しましたが、そのうちエネルギー項目の寄与は約0.81%で、ほぼ7割を占めています。ガソリン価格などの上昇が反映した結果と見られます。なお、3月の食料品の寄与度は2月と同程度です。

次にコアCPIを構成する財価格とサービス価格の寄与度を見ると、サービス価格(除くエネルギーサービス)は前月比で0.6%上昇となり、寄与度は先月より高まっています。米国は新型コロナウイルスの収束もしくは共生の動きに伴いサービス産業は価格上昇を伴った回復が見られます。特に目立ったのは航空運賃で、前月比で10.7%と大幅な上昇となっています。

さらにサービス価格で足元上昇傾向なのが住居費です(図表3参照)。住居費は住居を借りる場合の賃料と、自宅保有者が賃料を支払ったとみなす帰属家賃で構成されていますが、CPI全体の3割以上を占めるため、変動が大きいと全体に与える影響も大きいと見られます。足元の上昇は、これまでの米国住宅市場の活況を反映した動きと見られます。最近の金利上昇などを受け住宅市場が落ち着きを見せるまで住居費の動向には注意が必要です。

対照的に財価格の寄与度は3月マイナスとなりました。主な背景は中古車価格の下落に代表されるように(図表3参照)、コロナ禍で高まった財への需要に落ち着きが戻ったためと見られます。

なお、来月以降のCPIは昨年の水準が高かったことから前年比ベースではCPIの数字が抑えられる可能性はありますが、FRBが金融引締め姿勢を簡単に変えることは考えにくいと思います。エネルギー価格の動向は予測しづらく、サービス価格などに上昇の余地もある中で、水準は高いままだからです。3月の米国CPIの位置づけは、後で振り返ればインフレ率のピークに近いことを示唆したに過ぎないのかもしれません。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


ニュージーランド、利上げは続くが

7月の中国主要経済指標の気がかりな点

7月米CPIと金融政策の今後の展開

ブラジル、インフレ率低下の明暗

インド中銀、タカ派姿勢を示す

強かった7月米雇用統計の解釈