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- スリランカの格下げに見る苦境の背景
インドの南、インド洋に浮かぶ島国スリランカが深刻な債務問題に直面しています。スリランカの債務問題は短期的には地政学リスクによるエネルギー価格の上昇が背景と見られます。しかし、別の側面として、スリランカが海上輸送路の要所であることが同国の債務問題を複雑にしている可能性も考えられそうです。
スリランカ:外貨建て債券の利払いが滞り、S&Pは外貨建て債券を選択的デフォルトに
格付け会社のS&Pグローバル・レーティング(S&P)はスリランカの外貨建て長期債格付けを2022年4月25日にCCからSD(選択的デフォルト)に格下げしました。なお、自国通貨建て長期債格付けはCCC-に据置いています。
S&Pがスリランカを格下げした主な背景は、スリランカ政府が2023年償還と2028年償還の国際ソブリン債券(発行額12.5億ドル)の利払いを期日である22年4月18日に行わなかったためです。なお、S&Pの見解ではスリランカ政府が30日間の支払猶予期間内に利払いを行う可能性は低いと判断した模様です。
どこに注目すべきか:選択的デフォルト、外貨準備高、債務のワナ
スリランカが選択的デフォルトとなった直接的な背景は債券の利払いが滞ったことです。では、なぜスリランカの債務が悪化したのかを経済指標と、政治的な観点から振り返りると、現在世界で起きている地政学リスクの反映であることが浮かび上がります。
まず、スリランカの経済状況を見ると足元急速に悪化しています。例えばスリランカ中央銀行は3月にルピーのドルペッグを緩和し(図表1参照)、政策金利も引き上げました。スリランカの消費者物価指数(CPI)が、エネルギーや食料品価格の上昇などを背景に急上昇したためドルペッグを維持することが困難となったためです。
深刻なのは燃料輸入が滞り、エネルギー不足から計画停電が導入され、社会生活への不満が高まっていることです。スリランカの外貨準備高は20億ドル程度と見られ(図表3参照)、輸入1ヵ月分程度に落ち込んでいます。昨年末に報道されたスリランカがイランなどに石油代金を紅茶で支払う、というのは誇張された話ではないほどに追い込まれています。ロシアのウクライナに対する軍事侵攻によるエネルギーや小麦など食料品価格の上昇はスリランカを更に追い詰めた可能性がありそうです。
次に、政治的な観点からスリランカの債務を振り返ると中国のスリランカに対する「債務のワナ」の可能性が浮かび上がります。スリランカの位置を地図で確認すると、インドの南の島国です。この海域の船舶の航行を海洋航行サイトなどで検索すると海上輸送路の要所であることがわかります。中東やアフリカからアジアに向かう船の通路だからです。スリランカ政府は、中国の援助で建設した南部ハンバントタ港を17年7月より99年間にわたり中国国有企業にリースすることとなっています。借金のカタに港が取られた格好であることから債務のワナと表現されることもあります。中国は同港を軍事利用するのか今後も展開を見守る必要がありそうです。
スリランカの債務問題が国際経済に与える影響は限定的かもしれません。しかし、スリランカの債務問題が深刻になった背景には、しっかり目を向けるべきと思われます。
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