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米6月CPI、40年半ぶりの高水準に沸き立つ
梅澤 利文
2022/07/14

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概要

6月の米消費者物価指数(CPI)は物価のピークアウトが先であることが示されました。6月CPI公表前、米金融当局者の数名は7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%か0.50%の利上げを検討すべきとの考えを示していましたが、0.75%を下回る利上げが検討される必要性は低下したように思われます。ただ、積極的な利上げにも慎重な検討は必要と思われます。



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米消費者物価指数(CPI):6月も総合CPIは先月に引き続き市場予想を上回る

米労働省が2022年7月13日に発表した6月の消費者物価指数(CPI)は40年半(1981年11月)ぶりの高水準となり、前年同月比で9.1%の上昇と、市場予想の8.8%上昇、前月の8.6%上昇を上回りました(図表1参照)。

変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前年同月比5.9%上昇と、市場予想の5.7%上昇を上回りましたが、先月の6.0%上昇は下回りました。

どこに注目すべきか:米CPI、市場予想、ガソリン価格、住居費

今回の米CPIは、先月発表された5月のCPI同様、市場予想を上回りました。このような数字を見る限り物価のピークアウトは確認されず、市場では2週間ほど後に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC、7月26-27日)において、従来想定されていた0.75%ではなく、1.00%の幅で政策金利を引き上げるとの予想がある程度織り込まれる展開となりました。

確かに前月のパターン、つまり当初6月FOMCでは0.50%の利上げが見込まれていたが5月のCPIが市場予想を上回ったことを受け0.75%に利上げとなった、を当てはめれば、次回のFOMCでは想定されていた0.75%でなく、1.00%の利上げという解釈も生まれそうです。少なくとも、7月のFOMCにおいて0.75%を下回る利上げが検討される可能性は低下したように思われます。しかし、6月のCPIだけでポンと利上げ幅が引き上げられるかには多少疑問も残ります。

今回のCPIを受け、FOMC参加者である米クリーブランド連銀のメスター総裁はインタビューで「これから会合が予定されており、適切な政策の道筋について議論することになる。今日決めなければならないわけではない」と述べ、これから公表される他の経済指標も参照すべきと指摘しています。メスター総裁も1.00%の利上げを否定しているわけではなく、可能性は残しつつ幅広く経済データを検討する構えです。

6月の米CPIは確かに懸念すべき高水準でした。ガソリン価格は前月比11.2%上昇し、食料品も前月比で1.0%上昇しています。中古車価格は前月比1.6%、新車は0.7%それぞれ上昇しています(図表2参照)。航空運賃のように前月比で低下した項目もありますが、これまでの主なCPI上昇のけん引役は概ね勢いを維持しています。もっとも、ガソリン価格は先月末頃から下落に転じています。また中古車も足元で価格の伸びに鈍化が見られます。来月発表される7月のCPIではこれらの項目がCPIの上昇を鈍らせる可能性も考えられそうです。

家賃は上昇傾向が続いています(図表3参照)。これに帰属家賃(持ち家に家賃を支払っているとした家賃)を含めた住居費はCPIの構成比で約3分の1を占め、その変動の影響が大きい項目です。米住宅市場が冷え込み始めていることから今後は住居費の低下も見込まれますが、反映には時間が必要で、当面はCPIの低下を抑制する要因と見ています。それでも将来の低下が想定される中で大幅利上げを支持するには慎重な見当も求められそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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