Article Title
7月米CPIと金融政策の今後の展開
梅澤 利文
2022/08/15

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

7月の米CPIは、インフレのピークアウトを感じさせる内容でした。ただ、ガソリン価格や航空運賃など変動が大きい項目が下落をけん引したことや、影響力が大きい家賃は過去と比べて依然高水準など注意する点は残ります。金融当局の反応は6月FOMCのシナリオをベースに利上げ継続で市場をけん制していることから、9月のFOMCの内容に注目が集まることも想定されます。




Article Body Text

米消費者物価指数:7月は市場予想、前月を下回りインフレ懸念に一服感

米労働省が2022年8月10日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%上昇と、市場予想の8.7%上昇、前月の9.1%上昇を下回りました(図表1参照)。前月比では0.0%と前月の1.3%上昇を大幅に下回りました。

エネルギーと食品を除いたコアCPIの上昇率は前年同月比で5.9%で前月から横ばいで、市場予想の6.1%上昇を下回りました。コアCPIは前月比では0.3%上昇し、市場予想の0.5%上昇、前月の0.7%上昇を下回りました。

どこに注目すべきか:7月米CPI、ガソリン価格、航空運賃、家賃

7月の米CPIはインフレ率が依然高水準であることを示す数字ながら、上昇の勢いに落ち着きが見られました。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ幅を0.75%とする可能性を若干押し下げ、0.5%の可能性を押し上げたと見られます。もっとも、9月のFOMC前に8月のCPIや、他の重要な経済指標の公表も控えており、今後のデータ次第で最終的に次回FOMCの内容が決定される展開を見込んでいます。

まず、7月の米CPI品目のうち、低下した主な品目はガソリン(前月比マイナス7.7%)、航空運賃(マイナス7.8%)などが挙げられます(図表2参照)。これらの品目は前月のCPIを予想外に押し上げましたが、下落に転じています。なお航空運賃以外にも宿泊費、中古車価格も下落しており、コロナ関連品目に下落が見られました。この背景には、コロナで控えられていた旅行需要などが、コロナ収束により、急回復し、航空運賃など関連品目の値段を4-6月期頃は押し上げたと見ています。しかし7月のCPIを見る限り、落ち着きが戻った模様です。

米国は、通常夏にガソリン需要が増加する傾向がありますが、今年は恐らく、これまでのガソリン価格の水準が嫌気され需要が伸び悩み、ガソリン価格の頭打ちが見られました。

やや判断に迷うのが家賃です。家賃の主な構成品目は借家の賃料と持ち家に家賃を支払っていることにする帰属家賃です。家賃はCPI全体に占める割合が約32%と高く、影響力が大きい品目です。7月は賃料も帰属家賃も前月比で下落しました。家賃と連動する傾向がある住宅市場の動向が軟調であることから家賃への下押し圧力は想定されますが、7月については「早い」印象もあります。また、水準そのものは高いことから、インフレ要因となることが想定され、今後の動向には注意が必要と見ています。

なお、先週はCPI以外にも卸売物価指数(PPI、図表3参照)や、ニューヨーク連銀調査で期待インフレ率の低下が確認されました。インフレは依然高水準ながら、インフレ圧力の低下を示唆するデータが増えつつあるようにも思えます。

CPIを受けた米金融当局の反応は(数は限られますが)概して6月のFOMCで示された政策金利の水準を意識した発言となっています。つまり、インフレの水準は高く利上げ継続を示唆しています。ただ、年内残る3回のFOMCで利上げペースは減速が想定されます。こうした中、先読みする市場を金融当局がけん制する展開を当面は想定しています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米5月のCPI、インフレ鈍化へ流れを引き戻したが

インド総選挙を終えた後のインド中銀の出方

5月の米雇用統計の強さと今後のポイント

ECB:市場予想通りの利下げ、注目は次の一手

メキシコ:選挙結果で市場は大荒れ、その背景は

フランスの格下げは何が理由だったのか