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中銀ウィーク、世界の主な金融政策のポイント
梅澤 利文
2022/09/21

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概要

今週は中銀ウィークなどと呼ばれ、多くの国で金融政策決定会合が開催されます。インフレ懸念が比較的低い中国や日本を除き、概ねインフレ対応を優先する金融政策の実施が想定されています。もっとも政策の方向性に対し影響が大きいのが米国の金融政策で、米連邦公開市場委員会(FOMC)は最も注目されるイベントです。市場は固唾をのんで見守っています。




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スウェーデン中央銀行:インフレ懸念を背景に市場予想を上回る利上げを決定

スウェーデンのリクスバンク(中央銀行)は2022年9月20日、政策金利を従来の0.75%から1%引き上げ、1.75%としました(図表1参照)。市場では0.75%の引き上げが予想されていただけにサプライズとなりました。リクスバンクは声明文で「インフレ率は高すぎる」から始めるなど物価上昇懸念を強調しています。なお、スウェーデンの足元の消費者物価指数(CPI)は前年比で9.8%の上昇となっています。

どこに注目すべきか:中銀ウィーク、市場予想、マイナス金利、日銀

今週、日本では連休に挟まれていますが、米連邦公開市場委員会(FOMC)をはじめ、日本を含め多くの金融政策決定会合が予定される「中銀ウィーク」となっています。

図表1に今週の主な会合や政策金利の公表予定をまとめました。なお、作成時点(9月21日)でスウェーデンと中国は公表済みです。また、月日は現地時間をベースとしているため、ブラジルや米国の会合結果は日本時間では22日に公表される運びです。

次に、図表1に示した国の中で主な注目点を述べると、すでに公表されているスウェーデンは利上げ幅が1%と市場予想を大幅に上回り、インフレに対する当局の強い姿勢が改めて示されました。北欧の国の金融政策は普段、注目されませんが、昨日の動きはユーロ圏の利回り上昇に多少なりとも影響があったと思われます。

中国は先日、中期貸出制度(MLF)を据え置いたことに準じてLPRも据え置きました。中国は景気の回復が鈍く金融緩和を進めたいところですが、足元人民元安が急速に進行しているため中国人民銀行(中央銀行)は慎重姿勢と見られます。

これから発表される国では、ブラジルは据え置きが見込まれています。インフレ率が8%台に低下するなか、13.75%という政策金利は十分高いとみられるからです。同じような政策金利の水準であるトルコも据え置きが見込まれています。しかし、大きな違いはトルコのインフレ率が8月に前年比80.2%と極端に高水準なことです。トルコは独自路線と見られそうです。

スイスの金融政策も注目されています。スイス国立銀行(中央銀行)は6月に0.5%の引き上げ幅で利上げを始め、今回は0.75%の利上げが見込まれています。結果として、15年1月に開始したマイナス金利政策は解除される公算で、世界を見渡してマイナス金利政策を続けるのは日銀だけとなる可能性があります。ご参考までに、スイスの8月のCPIは前年比で3.5%上昇と、先日発表された日本のCPIの3.0%上昇と比べて極端な違いはないようにも見受けられます。

日銀も21~22日に金融政策決定会合を開催します。今回の会合では9月末に期限を迎える、中小企業向けの新型コロナ対応金融支援特別オペの終了が見込まれています(大企業や個人向けは22年3月に終了)。仮に終了となれば、この点では資金供給量の減少が見込まれます。しかしながら、市場は、今回の会合においても現行の大規模な金融緩和策が維持されると見込んでいます。相対的に低いインフレ率からすれば、日銀の利上げは論外ですが、その前段階として、短期政策金利と長期金利の誘導目標を定めてイールドカーブをコントロールするYCC政策も、見直しを求める声を横に、概ね温存が見込まれています。

もっとも、中銀ウィーク最大の注目は米FOMCです。市場では0.75%以上の利上げが筆者も含め、予想されています。また、今回のFOMCでは、ドットチャートなどを通じて、将来の政策金利の動向について、当局の見解が示唆されます。最近のインフレ指標の改善の鈍さから、従来よりも高水準で、金融引き締め的な政策金利の今後の動向が示されるものと見ています。このFOMCの見解が筆者の最大の関心事ですが、日銀の反応にも注意は必要と思われます。



梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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