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- 東欧通貨安傾向の中で、利上げ停止の気配
東欧の主要国であるハンガリーと、ポーランドの通貨は足元まで概ね下落傾向です。世界的なインフレ傾向がウクライナ危機によるエネルギー供給問題で悪化したことが通貨安の主な背景です。両国とも利上げを実施してきましたが、景気への配慮から据え置きの可能性を示唆しています。政治に問題が残る中、市場との対話がより重要になると思われます。
ハンガリー、ポーランド:東欧の主要中央銀行が利上げの停止を示唆
ハンガリー国立銀行(中央銀行)は2022年9月28日の金融理事会で、主要な政策金利である基準金利を1.25%引き上げ、年13.00%とすることを決定しました。市場では1%の引き上げが予想されていました。一方、ハンガリー中銀は声明文で利上げの停止を示唆しました。
ポーランド国立銀行(中央銀行)は10月5日の決定会合で市場予想の0.25%の利上げに対し、政策金利を6.75%で据え置きました。市場では、今利上げ局面で最後の引き上げを予想していましたが、前倒しとなった可能性があります。
どこに注目すべきか:東欧、通貨安、ウクライナ危機、欧州復興基金
東欧の主要国であるハンガリーやポーランドの通貨の下落傾向が続いています(図表1、2参照)。年初来、ポーランドの通貨ズロチとハンガリーの通貨フォリントは、対ドルでズロチが約17%、フォリントは24%弱下落しています。
これら東欧通貨の下落要因として影響が大きいのはロシアのウクライナに対する軍事侵攻によるエネルギーの供給問題と見られます。例えば、国際通貨基金(IMF)が夏に発表したワーキングペーパーなどによると、仮にロシアがガス供給を停止した場合、ハンガリーのGDP(国内総生産)成長率は最大で6%程度低下する可能性が指摘されています。
ハンガリーやポーランドは消費者物価指数(CPI)が共に前年同月比で15%を上回るなど高水準です(図表3参照)。インフレや通貨安はウクライナ危機前から、各国固有の政治問題などを受けて深刻となっていました。対応として、ハンガリーは21年6月から、ポーランドは21年10月から利上げを開始していました。しかし結果を見るとインフレや通貨安に利上げの効果は不十分ですが、景気への配慮から両国とも利上げを停止する公算が高まっています。もっともハンガリー中銀は高水準の政策金利の維持を示唆するなど、インフレや通貨安への配慮は維持していますが、市場の反応は未知数です。
通貨の下落要因として各国の政治の影響も見逃せません。ハンガリーやポーランドは共に欧州連合(EU)に加盟しています。EUは加盟国のコロナ禍からの経済再建を目的として総額7500億ユーロの欧州復興基金を設定しています。この基金から分配を受けるにあたり、EUの求める政治基準に準拠する必要がありますが、両国とも問題がありました。ポーランドは権力の乱用を法で縛る「法の支配」を求めるEUに対し、国内法がEU法に優先する場合があるとの判断を下したことで分配を見送られていました。しかし、ウクライナ問題での同国の活躍もあり、ようやく分配が開始されました。ただし、それでも政治問題の根は残っていると見られます。
ハンガリーはEUによるロシア産原油の全面禁輸に反対するなど、関係もぎくしゃくしており、基金からの分配は遅れています。EUが求める汚職防止法に反対姿勢だったこと等も分配の遅れの原因と見られます。もっとも今週汚職防止の法制化に進展もあり、今後の展開を待つことになりそうです。
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