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今週発表された各国の金融政策が与えてくれたヒント
梅澤 利文
2022/12/08

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概要

米国とユーロ圏の金融政策は他国の金融政策に大なり小なり影響を及ぼす傾向があります。来週の米国やユーロ圏の金融政策会合を前に、複数の国が金融政策を発表しました。それぞれの国に固有の事情はありますが、概してインフレ抑制最優先の姿勢から、今後のデータ次第ながら、景気に配慮する姿勢にシフトする動きが見られます。




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金融政策決定会合:FRBやECBの会合前後に、多くの国が会合の開催を予定

米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は2022年12月第3週に金融政策を決定する会合を開催します。この会合前後に多くの国が会合を設定しています。

今週、金融政策会合を決定した主な国はオーストラリア(豪)、カナダ、インド、ポーランド、ブラジルなどです(図表1参照)。一方、来週にはメキシコやフィリピン、再来週には日本、ハンガリー、インドネシアなどが金融政策決定会合の開催を予定しています。

どこに注目すべきか:FRB、金融政策、ラグ、累積効果、インフレ率

今週(12月第2週)金融政策決定会合を開催した主な国(チリなど含めていない国もある)の結果を振り返ると、据え置きを選択したのはブラジル、ポーランドです。一方、カナダ、豪、インドは政策金利を引き上げました(図表1参照)。政策金利の水準が相対的に低く、利上げ開始時期が遅い国が利上げを選択する傾向が見られます。なお、ブラジルは21年3月、ポーランドは21年10月に現局面の利上げを開始しています。

政策金利の水準が低く、期間が短い国が利上げを決定したように見えますが、今週実施された、たかだか5ヵ国の会合結果だけを過大に取り上げるべきではありませんが、6日に公表されたECBチーフエコノミストであるレーン理事の金融政策の考え方には一部、これに通じるものがあったと思われます。

レーン理事は利上げ幅を考えるうえで、利上げ時点の水準と過去の利上げによる累積効果の評価の重要性を指摘しています。インフレ抑制を目的に利上げをする場合、利上げ局面の初期段階では一般に政策金利は低く、大幅な利上げ幅が選択肢となります。しかし利上げが進行し、政策金利水準が上昇すると利上げ幅は抑えられる傾向があります。

また、利上げ効果は時間差(ラグ)を伴う傾向があり、利上げ開始からの期間が長くなるにつれ(例外はありますが)、引き締め度合いが抑えられる傾向が見られると指摘しています。

もっとも、利上げ幅や利上げの期間は単純なルールや数字で示されることは稀でしょう。また、各国固有の事情が金融政策に影響することもあります。

そこで、先の国々について簡単に各国事情を振り返ります。まず、政策金利が13.75%と高水準なブラジルはインフレ率が一時2桁となり、政策金利を引き上げてきましたが、足元インフレ率は6%台にまで低下、最近は政策金利を据え置いています。利下げに転じても不思議ではないインフレ水準ですが、ブラジル中銀は同国固有の問題ともいえる財政政策の拡大を利下げ前の確認ポイントとしている模様です。

インドは今年5月から利上げ開始と遅めのスタートです。それまでは景気下支えを優先していましたが、インフレ率の上昇に伴い5月から引き締めに転じました。インド中銀は今回の利上げ幅を前回の0.5%から0.35%に縮小させ徐々に出口に向かう姿勢を示しました。しかしながら、インドのインフレ率は7%前後で推移しており、インフレ目標(2~6%)を超えています。また、インド中銀は今回の会合で高水準のインフレ見通しを維持しており、景気に目配せしつつインフレ対応も重視する姿勢をとるものと見ています。


カナダ中銀は今回0.5%の利上げと、引き締め的な利上げながら、政策の先行きを示唆するフォワードガイダンスを、従来の「政策金利は一段の引き上げが必要」から、「政策金利の一段の引き上げの必要性を検討」と緩和方向を匂わし、利上げ打ち止めが近いことを示唆しています。

豪中銀は今回の声明で豪労働市場が強いことから、金融引き締め姿勢の維持を示唆しています。しかしながら金融政策運営について声明で過去の利上げ効果が表れるまでラグに注意するとしています。また、利上げペースの変更前に使われる文言である「今後の政策金利はデータ次第」も強調しており、利上げのピークが近いことも想定されます。

各国の金融政策に影響を与える傾向があるFRBやECBの金融政策決定は来週ですが、それを前にした中央銀行の決定内容では、少なくとも利上げペースの減速が近いことを示唆する国が増えつつある印象です。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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