Article Title
メキシコのインフレ率、依然高水準ながら低下傾向
梅澤 利文
2023/04/28

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

メキシコ中銀は現利上げ局面で、米国に先んじて21年6月に政策金利の引き上げを開始しました。利上げの効果もあり、メキシコのインフレ率は昨年後半にはピークアウトしたと見られます。サービス価格などにインフレ懸念は残るものの、前回の会合では全会一致で利上げを決定したメキシコ中銀は、今後利上げ停止に向けた議論を開始するものと思われます。




Article Body Text

足元のメキシコのインフレ率、減速傾向が明確に

メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が2023年4月24日に発表した隔週で発表される4月の消費者物価指数(CPI)は前年同期比6.24%上昇と、市場予想の6.25%上昇、前月の6.58%上昇を下回りました(図表1参照)。

INEGIが4月5日発表した3月のCPIは、前年同月で6.85%上昇と、前月の7.62%上昇を大幅に下回りました。なお、農畜産物とエネルギー価格を除くコアCPIは8.09%上昇しました。CPIの内訳を見ると、農畜産物を除いた食料品と飲み物などが前年同月比で12.95%上昇しました。一方で、政府の補助金を受けているエネルギーはマイナス2.26%と低下しました。

メキシコも先進国同様に、サービスセクターに物価上昇が見られる

メキシコは月次のCPIに加え、隔週でもCPIを発表しています。基本同様の動きですが、昨年8~9月にピークを付けた後、足元6%台に低下しています。興味深いのは、先進国同様、エネルギー価格の低下がインフレ押し下げ要因となる一方で、サービス価格は上昇(図表2参照)するという組み合わせとなっていることです。

インフレ率の推移を衣類や家具などの財、サービス、食料品、エネルギーの4つのセクターに分類して推移を見ると(図表2参照)、エネルギー価格は昨年から押し下げ要因となっています。食料品も昨年後半からCPIの押し下げ要因となっています。例えば、(コアインフレ率に含まれない)果物と野菜は前年同月比で5.82%上昇と一時に比べ低下しています。また、肉や魚などの価格も落ち着きを取り戻しています。

財価格は3月が前年同月比10.1%上昇と、前月の10.6%上昇から低下し4か月連続の低下となりました。エネルギーや食料品に比べ低下の時期が遅かったものの、低下傾向が表れ始めました。

一方、サービスセクターは5.71%上昇と前月を小幅ながら上回り、上昇傾向が続いています。ヘルスケア関連や、通信、教育など幅広い分野で、小幅ながら物価上昇が見られました。

メキシコ中銀、米国に先んじて政策金利を据え置きか?

メキシコのエネルギー価格の低下の背景には、エネルギー価格の下落に加え、メキシコ政府の補助金による押し下げ効果が含まることや、サービスセクターの価格指数は上昇懸念が残ります。

しかしながら、メキシコ景気に過熱感がないこと、補助金がなくてもエネルギー価格自体が低下していること、ペソ高、並びにメキシコの長期の期待インフレ率が安定していることから、市場予想でもメキシコのインフレ率は低下が見込まれています。

4月13日に発表された前回(3月30日)の金融政策決定会合の議事要旨でメキシコ中央銀行はインフレ率について、上昇要因はあるものの、来年末には物価目標に収れんすると見込んでいます。

そうした中、メキシコ中銀のロドリゲス総裁は4月25日に議員らとの会合で次の金融政策決定会合(5月18日)で、利上げ停止を検討する可能性を示唆しました。

メキシコ中銀は3月の会合を含め15会合連続で利上げを行ってきました(図表3参照)。政策金利の水準は11.25%と、インフレ率に比べ高水準です。3月の会合ではロドリゲス総裁を含め全会一致で0.25%の利上げが支持されました。ただし、先行きについては明確な利上げの継続は示されませんでした。メキシコの金融政策は米国の影響を受けやすい傾向があります。そのため、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)の内容にもよりますが、場合によってはメキシコ中銀が米国より一足先に政策金利の据え置きに転じる可能性も考えられそうです・


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


インドネシア中銀、サプライズ利上げの理由と今後

4月のユーロ圏PMIの改善とECBの金融政策

米国経済成長の背景に移民流入、その相互関係

IMF世界経済見通し:短期的底堅さを喜べない訳

ベージュブックと最近のタカ派発言

中国1-3月期GDP、市場予想は上回ったが