Article Title
米4月のCPI、今後の据え置きは支持できそうだが
梅澤 利文
2023/05/11

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

5月月初に発表された米雇用統計が堅調であったことからも注目された4月の消費者物価指数は概ね市場予想通りでした。また、住居費の減速など今後のインフレ動向の落ち着きを期待させる数字も見られ、国債市場には小幅ながら安堵感が見られました。しかしながら、住居費を除いたコアサービス価格の高止まり感は根強い可能性もあり、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げには慎重と思われます。




Article Body Text

米4月のCPIは10ヵ月連続で減速し、依然高水準ながら低下傾向は鮮明

米労働省が2023年5月10日に発表した4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で4.9%上昇し、市場予想、前月(ともに5.0%上昇)を下回り、10ヵ月連続で物価が減速しました。

しかし、前月比は0.4%上昇と、前月の0.1%上昇を上回りました(図表1参照)。エネルギーと食品を除いたコアCPIは4月が前年同月比で5.5%上昇と、市場予想に一致し、前月の5.6%上昇からの低下は小幅にとどまり、依然高水準での推移となっています。

もっとも、CPIの構成項目の一つであるサービス価格は主に住居費価格の低下を背景に4月が前月比0.2%上昇と、前月の0.3%上昇を下回り減速傾向となっています。

寄与度で見ると、エネルギーと財価格はプラスの押し上げ要因だが

米4月のCPIを受け米国債市場では幅広い年限で利回りが低下し、インフレ圧力の低下と受け止められたようです。前月比で0.4%上昇という数字だけを見ると、インフレ懸念が高まってもおかしくない上昇率です。しかし次の点が数字の高さを打ち消したと思われます。

4月の前月比の伸びを図表1の寄与度で見ると、エネルギー価格がプラス寄与に転じたこと、財価格のプラス寄与が拡大したことがわかります。

エネルギー価格を左右するガソリン価格(全タイプ)は4月が前月比で3.0%上昇と、前月のマイナス4.6%下落から回復しています。ただし、実際のガソリン販売価格を見ると4月半ばまでは上昇傾向でしたが、足元低下しています(図表2参照)。また、米エネルギー情報局(EIA)によるとガソリン需要は、通常、行楽シーズンを前に増加する傾向がありますが、今年は盛り上がりにかけるようです。エネルギー項目のプラス寄与は今後縮小することも考えられます。

財価格は衣類や家具など幅広い品目を含み傾向が把握しづらいですが、構成割合が2.57%と比較的高い中古車価格CPIは4月が前月比4.4%上昇と、前月までのマイナス傾向から急回復しました。4月の財価格を押し上げた要因と見られます。しかしながら、先行する傾向があるマンハイム中古車価格指数は既に頭打ちとも見られ、財価格の持続的な上昇に寄与する可能性は高くないように思われます。

住居費を除いたコアサービス価格は減速するも依然高水準

次に、米国の物価動向で注目されているサービス価格ですが4月は前月比0.2%上昇と、前月の0.3%上昇から減速しています。まず、サービス価格を住居費(主に賃料と持ち家を賃料換算した帰属家賃で構成)とそれ以外に分けると、4月の住居費は前月比0.4%上昇と、3月の0.6%上昇、2月の0.8%上昇と比べ減速傾向が鮮明となっています。住居費は住宅価格の下落に遅れる傾向がありますが、ようやく軟調な住宅市場の動向が住居費(なお住居費のうち賃料は4月小幅に上昇)に反映したと見られます。ただし、市場でも住居費の低下は時間の問題とみなされているようです。

最も注目されるのが住居費を除いたコアサービス価格の動向です(図表3参照)。4月は前年同月比で5.1%上昇、前月比では0.1%上昇程度と算出されます。前年同月比の動きをみると、ピークアウト感は見られますが依然高水準です。コアサービス価格は賃金動向との関連が高く、いまだ堅調な米国の労働市場とともに注目されています。先日発表された4月の雇用統計や、その他の賃金データも同様にピークアウト感はあるものの依然底堅さを示しています。粘着性という物価動向としては聞きなれない表現が使われる米国のインフレ率ですが、物価がなかなか一気に下がらないことを意味するのであれば、コアサービス価格はまさに粘着性の背景と見られそうです。

4月のCPIが金融政策に与える影響を考えると、全体的な減速感から6月の利上げ停止を支持する内容であったと見ています。一方で、コアサービス価格にピークアウト感はあるものの、依然高水準であることから、年内利下げのハードルを押し下げるには、4月のCPIだけでは力不足と見ています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


ブラジル中銀、利下げ路線から据え置き路線へ

中国主要経済指標から浮き彫りとなった問題点

フランス混乱、マクロン大統領の賭けはどうでるか

日銀、方針を決定しただけでも、円安加速は回避

6月のFOMC、タカの背後にハトが見え隠れ

米5月のCPI、インフレ鈍化へ流れを引き戻したが