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ブラジルのインフレ率の減速、まだ喜べない
梅澤 利文
2023/05/15

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概要

ブラジルのインフレ率は概ね減速傾向で、物価目標の上限を下回る水準となっています。しかしながら、サービス価格の高止まりなどもあり、コアインフレ率は上限を上回る水準です。名目金利をインフレ率で調整した実質金利は景気の変動に影響しますが、ブラジルの実質金利は高水準です。ブラジル中銀は政治から利下げ圧力を受けつつも、利下げに慎重な姿勢をもうしばらく維持する可能性がありそうです。




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ブラジル、4月のインフレ率は減速傾向を維持するも市場予想を上回る

ブラジル地理統計院が2023年5月12日に発表した4月の消費者物価指数(IPCA)は、前年同月比で4.18%上昇し、市場予想の4.12%上昇は上回ったものの、前月の4.65%上昇を下回りました(図表1参照)。また、前月比は0.61%上昇と、市場予想の0.55%上昇を上回るも、前月の0.71%上昇は下回りました。

ブラジル中央銀行は5月3日に開催した金融政策決定会合(会合)で政策金利を13.75%に据え置きました。据え置きは市場予想通りで、6会合連続です。国内経済減速のさなかでもインフレ抑制を最優先し、現行の金利水準を維持しました。ただし、ブラジル中銀は今回の声明文から、これまで利上げ再開の可能性について言及してきた文言を「より可能性の低いシナリオ」と修正しました。

ブラジルのインフレ率は減速傾向だがサービス価格は高水準が続く

ブラジル中銀は前回(3月)の会合では、物価減速が想定通りでないなら利上げ再開も辞さない構えでした。しかし今回は利上げ再開を可能性の低いシナリオとしたことで、早期に利下げに転じるとの観測も見られます。しかし、今回の物価統計を見る限り、利下げ期待はやや後退した印象です。

ブラジルのインフレ率をIPCAの前年同月比で見ると減速傾向は明らかです。ブラジル中銀の物価目標(3.25%±1.5%)の上限4.75%を4月の数字は下回っています(前年同月比4.18%上昇)。しかしながら、懸念が残る内容となっています。

まず、短期的な動向を示す前月比は市場予想ほどには低下せず、また仮に同水準が続けば物価目標の達成に疑問も残ります。

次に、IPCAの動向を、サービスや食料品等など主な構成指数で振り返ると(図表2参照) 、サービス指数は4月が前年同月比で約7.5%上昇と前月から小幅な低下にとどまり依然高水準で推移しています。干ばつなどの影響もあり上昇していた食料品等が低下傾向に転じているなど改善がみられる一方で、連邦政府もしくは品目によっては地方政府が価格をコントロールする規制価格にはガソリンや電力価格などが含まれます。世界的な商品価格の落ち着きが規制価格を押し下げ、IPCAを低下させた面もありますが、ボルソナロ前政権による強引なガソリン価格抑制策なども押し下げ要因に含まれていると見られます。世界的な商品価格の落ち着きは規制価格で主な構成品目であるガソリンや電力価格の押し下げ要因となる可能性は残るものの、過剰な押し下げ介入から、必要に応じた適切な価格抑制姿勢に戻ると思われます。

物価の下落傾向は確認されるがブラジル中銀は利下げに慎重の可能性

なお、ブラジルは左派のルラ新政権がすでに発足しています。物価対策は前政権同様、燃料税の免税などで対応しており財政悪化は気になるところです。しかし、意外と言っては失礼ですが、24年度予算ではプライマリーバランスの均衡を目指すなど財政への配慮を見せています。ブラジルの株式市場や通貨レアルが年初来で比較的堅調なことの背景と思われます。

最後に、IPCAの構成品目で足元の物価動向を確認します(図表3参照)。4月の上昇要因となった品目はヘルスケアが挙げられます。これは薬価の年次改定を反映したものと見られます。なお、ヘルスケア関連は規制価格に含まれます。ここでも強引な引き下げとはなっていないようです。

4月は食料品が上昇しています。変動が大きい品目なので単月の動きに一喜一憂する必要はありませんが、一貫した減速ではないようです。

品目別では月次の動きが大きいものも見られますが、先の構成指数で確認したように、サービス指数の上昇率は高水準が続いています。ブラジル中銀の声明文でもサービス価格に対する懸念が示されています。また、やや古いのですが3月のインフレ報告書で産業別の動向を見ると、ブラジルは製造業などは軟調ですが、サービス産業は回復を続けています。サービス価格の上昇は、単に物価が上がっているだけではない点に注意が必要で、次回のインフレ報告書で確認したい内容です。

ブラジルのインフレ率が減速傾向であることはIPCAからうかがえます。ただし、サービス価格の動向など、まだ確認したい点も残されています。ブラジル中銀はこれまでも物価には上下それぞれリスクがあると説明してきました。今回、利上げに対してはこれまでと異なるメッセージを出しましたが、それが利下げのサインなのかについては慎重な判断が求められそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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