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据え置きに転じたメキシコ中銀、その一歩先
梅澤 利文
2023/05/19

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概要

メキシコ中銀は過去15会合連続の利上げに終止符を打ち、今回の金融政策決定会合では据え置きを決定しました。インフレ動向にピークアウト感が見られたことが背景です。メキシコ中銀の今後の金融政策運営を占うと、インフレの動向次第という側面が強い一方で、経済的にも地理的にも近い米国の金融政策を意識することも想定され、メキシコ中銀は年内、政策金利を据え置くことを見込んでいます。




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メキシコ中銀、前回は利上げ幅を縮小し、今回は政策金利を据え置き

メキシコ銀行(中央銀行)は2023年5月18日に金融政策決定会合(会合)を開催し、市場予想通り政策金利を11.25%に据え置くことを発表しました(図表1参照)。メキシコ中銀は21年6月から23年3月まで15会合連続の利上げにより政策金利を合計で7.25%引き上げました。なお、今回の据え置きの決定に5人の委員全員が賛成しました。

メキシコ中銀は声明で、据え置きを決定した理由として、前回(3月)の会合時に比べインフレ率が下がり、特に食糧やエネルギーなど変動項目を除いたコアのインフレ率が想定以上に低下したためと説明しています。また、期待インフレ率も短期については低下が見られ、長期については安定していると指摘しています。

メキシコのインフレ率は依然高水準ながら、減速傾向は見られる

当レポートは先月、メキシコ中銀の前回(3月)会合で今回の利上げを示唆しなかったこと、メキシコ中銀のロドリゲス総裁が先月、今回(5月)会合での据え置きを示唆したことなどから、今回は据え置きの可能性があると指摘しました。

声明では今回の据え置きの理由をインフレ動向の落ち着きとしています。そこで、メキシコの消費者物価指数(CPI)の動向を確認すると、4月のCPIは前年同月比6.25%上昇と前月の6.85%上昇を下回り、コアCPIも7.67%上昇と前月の8.09%上昇を下回りました(図表2参照)。メキシコ中銀の物価目標(3%±1%)を超える水準ですが、ピークアウト感は見られます。また、内容を見ても昨年後半の上昇のけん引役の一つである財価格は減速傾向です。

コアCPIの別の構成指数であるサービス価格CPIにおいても4月の上昇率は3月を下回り、頭打ちの兆しが見られました。

もっとも、メキシコの労働市場は堅調です。例えば3月の失業率は約2.4%と、先月の約2.7%、コロナ禍前の20年2月の3.5%を下回っています。賃金も高水準での推移が続いており、サービス価格が低下基調となるには時間もかかりそうです。

メキシコ中銀は、インフレ率が物価目標に近づくのは来年10-12月期と指摘

メキシコ中銀の今後の展開を占うため、メキシコ中銀によるインフレ予測を確認します(図表3参照)。点線で囲ったコアCPIに注目すると、23年4-6月期のインフレ率は7.4%上昇(年率)と、前回会合時の予測値である7.5%から小幅下方修正しています。しかし他の期間の予測は据え置いています。声明でも、今後のインフレは上下両方向の可能性があるが、どちらかといえば上方向へのリスクを懸念していると指摘しています。

また、声明で物価目標の中心値である3%に近づくのは24年10-12月期と述べています。物価安定の目標が達成できるのはまだ先の話と思われます。メキシコの名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は大幅なプラスで、景気押し下げ、物価抑制に寄与すると見られ、さらなる利上げの可能性は低いと考えます。メキシコ中銀は、当面据え置きを続けると考えます。

最後に、据え置きの期間を想定するうえで、声明などでは明確に述べられていませんが、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策との整合性も考慮する必要がありそうです。FRBが6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で据え置きに転じるのか、利上げを続けるのか不確定な面はありますが、FRBは利上げの最終局面に近づいている公算が高いと思われます。一方で米国のインフレ率も物価目標を大幅に上回っていることから、仮に夏ごろに利上げを停止しても、年内は据え置く可能性があります。市場の利下げ期待は前のめり過ぎると思われます。

メキシコ中銀は国内のインフレ状況と、FRBの金融政策を見定めながら、年内は据え置きを続ける可能性が高いと筆者は見込んでいます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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