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豪中銀、市場予想通りの利上げと意外な文言
梅澤 利文
2023/11/08

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概要

豪中銀は5会合ぶりに利上げを決定しました。7-9月期のインフレ指標の再上昇の兆しが見られたことなどが背景です。インフレ見通しについて、詳細なデータは今後を確認する必要はありますが、豪中銀は今回上方修正しました。しかし、今後の金融政策の方針については、グローバルな景気回復に不確実性が高いとして、むしろ自由度を高める表現となっており、難しい判断が求められそうです。




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豪中銀はインフレ懸念を指摘し、市場予想通り0.25%の利上げを決定した

オーストラリア(豪)準備銀行(中央銀行)は2023年11月7日の理事会で、市場予想通りに政策金利を0.25%引き上げ、4.35%にすることを決定しました(図表1参照)。豪中銀は声明文で物価が上昇傾向に戻りつつあることや、インフレ長期化のリスクが高まっていることなどを利上げを決定した理由としています。利上げは5会合ぶりです。

もっとも、声明文では中国経済に不透明感が高いことなどを懸念材料と指摘しています。また今後の金融政策の方針については、金融引き締めが必要かどうかは、データやリスクを巡る評価に左右されるとしています。市場では追加利上げの可能性は高くないとの見方から、豪国債利回りは低下し、為替市場では豪ドル安がみられました。 

豪のインフレ率は7-9月期に高水準で推移、物価上昇懸念が残る

豪中銀が利上げを決定した豪のインフレ率は足元で低下ペースが鈍る兆しも見られます。豪中銀の経済見通しも利上げと整合的な内容です。しかし、中国経済の動向などに懸念を表明していることや、今後の金融政策の方針も定まっていないことから、追加利上げの可能性は低いように思われます。

まず、豪消費者物価指数CPIを振り返ると、今回の理事会前の10月5日に発表された7-9月期のCPIは前年同期比で5.4%上昇と、市場予想(5.3%上昇)を上回りました。前期比は1.2%上昇と市場予想(1.1%上昇)、前期(0.8%上昇)を上回りました(図表2参照)。豪中銀が重視するトリム平均(変動の大きい項目を除いて算出)も同様の傾向となりました。サービス価格が押し上げ要因ですが他の部門の物価も比較的高水準です。

声明文に示されている豪中銀の経済見通しによると、インフレ率は24年末時点で3.5%と、従来(8月理事会の声明文)の見通しである3.25%から上方修正しました。インフレ見通しは利上げと整合的な修正となっています。

なお、豪統計局は月次でもCPIを発表しています。豪中銀は伝統的に四半期毎のCPIを重視しますが、最近は、方向性を見るうえで月次CPIも重要視しています。月次CPIの動きをみると、7月を底として8月、9月と再上昇しており、四半期毎のCPIと同様の傾向を示しています。商品価格の上昇や、豪国内要因として賃金の高止まりなどがこの時期の物価上昇圧力になっていたとみています。

他の経済指標では、豪中銀は失業率の見通しを下方修正(雇用は改善)しています。4-6月期のCPIを発表した直後の理事会で示した失業率見通しは24年後半4.5%を見込んでいましたが、これを4.25%に下方修正しました。雇用市場の底堅さを見込んでいることがうかがえます。

豪経済の先行きには懸念要因もあり、追加利上げに慎重さが見られる

インフレ懸念と、一般に遅行指標とされる雇用市場の底堅さなどを背景に豪中銀は利上げを決定しましたが、声明文の中にはハト派(金融緩和を選好)的な文言もあり、追加利上げの可能性は高くないように思われます。景気動向について懸念を指摘しているからです。金融引き締めによる家計消費への影響を示唆しています。世界的な景気動向の不確実性の高まりを指摘し、特に豪の主要貿易相手国である中国景気に懸念を示しています。

中国の豪からの輸入額は伸び悩み、23年10月は約120億ドルと、前月の122億ドルを下回りました(図表3参照)。中国の景気回復が鈍いことと、豪と中国の関係が悪化していたことから特定の商品、例えば豪州産の牛肉やロブスターに高関税がかけられていることが貿易を抑制している可能性があります。石炭や大麦、原木への輸入制限は23年に解除されていますが、図表3にあるように、過去には深刻な影響がみられました。

11月6日に豪のアルバニージー首相と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は北京で会談しました。中国による豪州への貿易制限の緩和と正常化を確認する会談内容であったことが報道されています。中豪関係は豪のモリソン前政権が中国に新型コロナウイルスの起源を巡る調査を要求したことで悪化しました。しかし22年5月に発足したアルバニージー政権は中国寄りの姿勢で、同年11月には豪首相として6年ぶりとなる習氏との対面会談を実現しています。中国は米国が主導する対中包囲網の一角である豪との関係改善を重視する一方で、豪は中国との経済関係の改善を重視しているように見られます。豪の景気回復に中国は必要性が高いようです。

豪中銀の声明文ではやや意外なことに、今後の金融政策でさらなる引き締めが必要かどうかは、足元の経済指標とリスク動向次第と指摘しています。今回利上げの原因となったインフレを徹底的に抑制するというよりは、中国景気の動向等も含め様々な要因を勘案する自由度の高い方針となっています。利上を再開したものの、追加利上げに慎重なのかもしれません。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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