Article Title
豪中銀、追加利上げも辞さない、と言うけれど
梅澤 利文
2024/02/07

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

豪中銀は24年から金融政策決定会合をこれまでのほぼ毎月(11回)開催から年8回開催としました。24年最初の会合で、豪中銀は市場予想通り政策金利を据え置きましたが、足もとの豪インフレ率は物価目標を上回ることなどから追加利上げの可能性を否定しませんでした。しかし、豪経済指標を見ると一部に鈍化の兆しもあり、当面は政策金利を据え置き、その次は利下げに転じるものと見ています。




Article Body Text

豪中銀、金融政策決定会合で市場予想通り政策金利を据え置き

オーストラリア(豪)準備銀行(中央銀行)は24年2月6日、市場予想通り政策金利を4.35%で据え置くことを発表しました(図表1参照)。据え置きは23年12月会合から2会合連続となります。豪中銀は22年5月に利上げを開始し、同年4月に0.1%だった政策金利を1年あまりで13回引き上げて、合計で4.25%の利上げを行っています。

豪中銀は声明文などで、インフレの鈍化傾向を認識しつつも、インフレ率の水準は依然高く、不確実性も残るとして追加利上げの可能性を否定することはできないと説明しています。しかし、豪経済には軟化の兆しもあり、豪ドルは会合の発表を受けて方向感が定まりにくい展開となっています。

豪のインフレ率に低下傾向は見られるが、依然物価目標を上回る

24年最初の会合を前に発表された豪経済指標は、豪中銀の発表内容と同様に、方向感を定めにくい結果となっています。しかしながら、インフレの水準は高いものの、減速感は明確となりつつあると筆者は見ています(図表2参照)。利上げは終了段階である一方、次の一手は年内利下げを見込んでいます。

豪の主な経済指標を振り返ります。まず、24年1月末に発表された23年10-12月期の消費者物価指数(CPI)は前年同期比で4.1%上昇と、市場予想の4.3%上昇、前期の5.4%上昇を下回りました。豪中銀が重視する変動が大きい品目を除いて算出したトリム平均も4.2%上昇と、前期の5.1%上昇を下回りました。豪中銀が指摘したように、インフレには減速感が見られます。

しかし、豪中銀は主に次の点を懸念しています。

まず、CPI、トリム平均ともに豪中銀の物価目標である2%~3%を上回っていることです。豪中銀は声明文で世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱の収束、国内の財に対する需要緩和などがインフレ率を押し下げていると説明していますが、物価水準はまだ高いと認識しています。

次に、より懸念されるのがサービス価格の水準です。CPIの構成指数であるサービス価格は23年10-12月期が4.6%上昇とCPI全体の伸び(4.1%)を上回っています。声明文でもサービス価格の水準について懸念が示されています。また、他国でも見られるようにサービス価格はほかの価格に比べて低下のスピードが緩やかという傾向が見られます。豪中銀もサービス価格の低下ペースの鈍さを懸念していると見られます。23年10-12月期の豪CPIは4.1%上昇と、前期から1.3%の幅で低下しました。仮にこのペースでCPIが低下するならば、年前半に物価目標上限の3%を下回ることが想定されます。しかし、豪中銀のCPI予想を見ると24年末では3.2%上昇を見込み、3%を下回るのは25年後半が想定されています(25年末の予想値は2.8%上昇)。豪CPIの今後の動向は、サービス価格に左右されそうです。そして、サービス価格の動きの主要な説明要因である賃金もしくは労働市場が豪CPIの今後を占ううえで重要です。

豪労働統計に緩和の兆しも見られるが、程度は不十分

豪労働市場を雇用者数と失業率から振り返ると、足元に雇用環境の緩和も見られますが水準は高く、一段の緩和が求められそうです(図表3参照)。

最初に雇用者数の伸びを前月比で見ると、23年12月は前月比6.5万人減と、雇用に緩和の兆しが見られます。しかしながら、雇用者数の伸びの単純平均をコロナ禍前(18年1月~19年12月)と最近2年間(22年1月~23年12月)で比較すると、コロナ禍前の平均は21.5万人増であったのに比べ、最近2年間の平均は37.9万人増と大幅に上回ります。足もとの6.5万人減は労働市場の緩和の兆しのように見られますが、一過性の可能性もあり豪中銀も判断に時間が必要と思われます。

次に失業率を見ると、23年12月は3.9%と、22年10月に記録した過去最低水準の3.4%は上回っています。失業率が足もとで上昇した背景として求職者の減少が指摘されています。また、図表3でも確認できるように、失業率は緩やかながら上昇傾向で、失業率の面からも豪労働市場の緩和の兆しが見られます。しかしながら、豪失業率はコロナ禍前には5%前後で推移していたことに比べれば、失業率はまだ低いようにも思われます。豪中銀が声明文で失業率などがもう一段悪化する必要があることを示唆しているのは労働市場の緩和ペースの鈍さを踏まえてのことと思われます。

豪経済は中国との結びつきも強く、景気の先行きは楽観しにくいと思われます。中国では株価対策が発表されていますが、これらの対策が中国景気を押し上げるかは未知数です。豪中銀は当面はインフレ動向に配慮しつつ、インフレに鈍化の兆しがより明確となれば、利下げに舵を切る構えと見ています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米5月のCPI、インフレ鈍化へ流れを引き戻したが

インド総選挙を終えた後のインド中銀の出方

5月の米雇用統計の強さと今後のポイント

ECB:市場予想通りの利下げ、注目は次の一手

メキシコ:選挙結果で市場は大荒れ、その背景は

フランスの格下げは何が理由だったのか