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豪中銀のインフレ抑制姿勢と利下げ開始見通し
梅澤 利文
2024/05/08

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概要

オーストラリア中央銀行は政策金利を高水準に維持し、インフレ抑制姿勢を鮮明にしました。インフレ率が物価目標を上回る期間が長期化する中、物価上昇が消費者心理を悪化させていることに警戒感を示しました。一方、豪経済は伸び悩んでおり、インフレ抑制と景気のバランスが課題となっています。こうした中、市場の利下げ開始見通しは後ずれしていますが、年内開始の可能性もゼロではなさそうです。




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豪中銀、インフレ抑制を最優先し、政策金利の据え置きを決定

オーストラリア(豪)準備銀行(中央銀行)は政策理事会を5月7日に開催し、市場予想通り政策金利を4.35%で据え置きました(図表1参照)。据え置きは23年12月の会合以来、4会合連続で、高水準の政策金利を維持する意向を表明しました。

豪中銀は声明文でインフレについて「鈍化を続けている」と前回と同じ表現を使用したものの、鈍化のペースは「想定より緩慢」と述べるなどインフレへの警戒感を示しました。ブロック総裁は同日の記者会見で、物価上昇が消費者心理を悪化させている点などを指摘したうえで、「インフレ抑制は、すべてのオーストラリア国民に有益」と述べるなどインフレ抑制姿勢を示唆しました。

豪1-3月期のCPIはサービス価格などを中心に上振れた

今回の理事会で豪中銀がタカ派(金融引き締めを選好)姿勢だったのは、1-3月期のインフレ指標が市場予想を上回った時点で約束されていたようなものと筆者は見ています(図表2参照)。豪インフレ率は過去2年以上豪中銀の物価目標を上回っているうえ、1-3月期のインフレ率は市場予想を上回っていたからです。

もっとも、豪政策金利は約12年ぶりの高水準で、景気への影響から追加利上げのハードルは高いようにも思われます。理事会後、小幅ながら豪ドル安(対米ドル)となったのは、想定の範囲内のタカ派化という安心感であったと思われます。当面は豪中銀による高金利維持政策が想定されます。

豪1-3月期のCPIを振り返ると、CPIは前年同期比で3.6%上昇と、市場予想の3.5%上昇を上回りました。変動の大きい一部品目を除いて算出することから、コアインフレ率として豪中銀が注目するトリム平均は前年同期比で4.0%上昇と市場予想の3.8%上昇を上回りました。これらの指標は図表2に示した通り前期を下回っており、物価の伸びは減速傾向です。しかし、市場予想を上回ったことから1-3月期の鈍化のペースは緩やかでした。

1-3月期のCPIが市場予想を上回った背景をみると、主な要因としてサービス価格の上昇が挙げられます。1-3月期のサービス価格は前年同期比で4.3%上昇と前期の4.6%上昇を下回りましたが、前期比では1.4%上昇と、前期の1.0%上昇を上回りました。サービス価格は賃金上昇などを反映しやすく、他国でも物価項目の中で下がりにくい項目となるなどインフレ鈍化を妨げそうです。

物価項目を詳細にみると、「保険、金融サービス」が前年同期比で8.2%上昇し、「教育」が5.2%上昇、「住居」も4.9%上昇するなど、サービスに関連する項目が上位に並んでいます。

豪労働市場は経済活動の正常化による雇用回復などもあり堅調で、3月の失業率は3.8%と、コロナ禍前の水準(19年12月が5.0%)を下回っています。一方でコロナ禍後の急速な移民受け入れへの反省から見直しが進み、労働需給はタイトで、賃金コストは高止まりしています(図表3参照)。

豪中銀はインフレ率が物価目標に収まるのは来年後半を想定

一方で、豪経済の成長率をGDP(国内総生産)でみると、23年10-12月期が前年同期比1.5%増と伸び悩んでいます。移民流入による景気押し上げ効果が一巡したという向かい風がある一方で、住宅投資など金利感応度の高いセクターに足元の政策金利は向かい風となっています。個人消費も前期比の伸びが0.1%増にとどまり、1-3月期のGDPの伸びである前期比0.2%増を下回りました。豪中銀が指摘したように、インフレが消費者心理を押し下げていることが考えられます。

豪中銀はインフレ抑制が最優先ながら、追加利上げで景気を冷やさないことも求められるという難しい政策運営となっているのは、現在の豪経済の置かれた状況を反映してのことと見られます。

こうした中ブロック総裁の会見などから判断して、豪中銀は現在の政策金利を当面維持してインフを抑制し、物価目標まで押し下げることを最優先する構えと見られます。

豪中銀のインフレ見通しによると、インフレ率が物価目標の範囲(上限3%を下回る)に収まるのは来年後半を見込んでいます。インフレ率が物価目標に達する確度が高まれば豪中銀は利下げを開始すると思われます。市場でもコンセンサスを見ると今年10-12月期、もしくは来年1-3月期に利下げ開始を見込んでいるようですが、年内据え置きがやや優勢となっているようです。

ただし、豪中銀は理事会を年内5回残しており、今後のデータ次第ながら、インフレ鈍化の兆しが明確となれば年内利下げ開始の可能性も残されているように思われます。判断のカギと見られるサービス価格や賃金動向に注意を払う必要がありそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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