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5月の米雇用統計の強さと今後のポイント
梅澤 利文
2024/06/10

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概要

5月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数の伸びと平均時給に雇用市場の強さが示され、米国経済の底堅さが改めて示されました。当面はその強さが市場のテーマになるように思われます。ただし、米雇用統計以外の労働市場関連データの中には、米労働市場の過熱感は和らいでいることも示唆されており、労働市場の動向は様々なデータを参照して総合的に判断することが重要であると考えます。




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5月の米雇用統計で非農業部門就業者数は市場予想を大幅に上回った

米労働省が6月7日に発表した5月の雇用統計で、非農業部門の就業者数は前月から27.2万人増と、市場予想の18万人増、前月16.5万人増を大幅に上回りました。就業者数の伸びを部門別に見ると、娯楽・宿泊、建設、政府など4月に伸びが縮小した部門において、5月に伸びの再拡大がみられました(図表1参照)。

平均時給は前月比で0.4%上昇と、市場予想の0.3%上昇、前月の0.2%上昇を上回りました。前年同月比では4.1%上昇し、4月の4.0%上昇(速報値の3.9%上昇から上方修正)を上回りました。

失業率は22年1月以来となる4.0%となり、市場予想、4月(共に3.9%)を上回りました。  

5月の米雇用統計は就業者数と平均時給の伸びに強さが見られる

5月の米雇用統計は市場にとっても意外なほど強い数字であったのは指標発表日の米国債市場で利回りが急上昇したことなどから明らかであると思われます。今回の雇用統計の強さを印象付けたのは主に次の2点と見ています。

1点目は非農業部門の就業者数の前月からの伸びです。2点目は平均時給の伸びです。特に平均時給を部門別に見ると、特定の部門に偏っての上昇というより、幅広い部門に伸びが見られ、力強さがうかがえます(図表2参照)。

非農業部門の就業者数の伸びは生産に関連する部門としてはコロナ禍からの回復途中の建設業がけん引する格好となりました。民間サービス部門は5月が20.4万人増と、4月の15.8万人増を上回りました。民間サービス部門で5月の伸びが大きかったのは、教育・医療、娯楽・宿泊、会計士などを含む専門職などの各部門です。政府部門の就業者の前月からの伸びが5月に再拡大したことも含め、幅広い部門に強さが見られました。

平均時給は伸びが拡大し、就業者数も増え、週平均労働時間も34.3時間と平均的な長さであったことから総雇用者所得は回復しました。このことは消費の下支え要因となることも想定されます。

5月の米雇用統計は強い面もあるが、幅広く指標をみる必要もあろう

ただし、5月の米雇用統計の強さには注意点もあります。まず、失業率は4.0%と、4月の3.9%を上回っています。失業率の上昇は景気悪化を示唆するサインとなる傾向があるだけに、今後の推移に注意が必要です。なお、失業率から算出され景気後退入りの可能性を示唆する「サーム・ルール」は5月時点で0.37に上昇しましたが、景気後退入りには距離があり、黄色信号の点滅段階と思われます。

なお、米雇用統計では就業者数について事業所調査と家計調査の2通りで算出しています。同じ就業者数でも事業所調査と家計調査では調査対象が異なるためデータは異なります(図表3参照)。雇用統計の報道で目にする非農業部門の就業者数は事業所調査のデータです。一方、失業率の算出には家計調査の就業者数が分母の一部に使われます。5月は2つの調査の差が目立ち、家計調査の就業者数は前月比40.8万人減となった一方、事業所調査は27.2万人増でした。複数の職場で働いている人や、家族経営の就業者の数え方などに違いがあり、両調査対象の違いが表れたに過ぎないという面はありますが、どちらが実態に近いのかという議論は、失業率などにも影響することから、今後も続けられそうです。

5月の米雇用統計は平均時給の伸びが前月を上回った点などから強いとしても、6月月初に発表された他の米労働市場関連の統計と方向性が違う点には注意が必要です。例えば、米民間雇用サービス会社ADPが6月5日に発表した5月の全米雇用報告で、転職した人の賃金は前年同月比7.8%上昇と、2ヵ月連続で伸びが鈍化し、同じ職にとどまった人の賃金は5.0%上昇と、21年以来の低い伸びに並びました(図表4参照)。また、米労働省が4日発表した4月の雇用動態調査(JOLTS)では、非農業部門の求人件数(速報値)が805.9万件と、前月を大幅に下回り、労働市場の過熱感が和らいでいることが示されました。

米雇用統計は注目度が高いことから、5月の数字の強さに市場は反応しました。当面はこの強さに市場は縛られるかもしれません。しかし、労働市場には様々なシグナルがあり、均してみると労働市場は緩やかな鈍化傾向なのかもしれません。

 


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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