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7月のECB理事会の関心事、9月利下げのヒントは?
梅澤 利文
2024/07/19

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概要

欧州中央銀行(ECB)は7月18日に政策理事会の結果を発表し、市場予想通り政策金利の据え置きを決定しました。サービス価格の上昇によるインフレ率の押し上げに対し警戒感が示されました。一方でECBはユーロ圏の景気減速も認識しており、追加利下げの時期を模索しています。利下げの判断で重視するのはサービス価格で、ECBは幅広いデータに目を配り次の一手を探る展開を想定しています。




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ECBは7月の政策理事会で市場予想通り政策金利を据え置き

欧州中央銀行(ECB)は7月18日に政策理事会の結果を公表し、市場予想通り政策金利を据え置くことを決定しました(図表1参照)。ECBは前回6月の理事会で利下げを開始したものの、今回は連続の利下げを見送ることが適切と判断しました。

声明文に示された今後の金融政策の方針(フォワードガイダンス)は、「データ次第、会合ごとに政策を決定する」と、従来の方針が維持されました。今後の利下げについて「特定の道筋を確約しない」という方針も前回から変更がありませんでした。

なお、経済情勢判断のテキストに、「サービス価格の上昇を押し上げ要因として総合インフレ率が25年も目標を上回って推移する可能性がある」という内容の文言が新たに書き加えられました。

ユーロ圏のインフレ動向を左右するサービス価格は6月高止まり

ECBは経済情勢判断について、ユーロ圏のインフレ率や賃金は6月に公表した見通しに沿う動きだったと評価しています。一方、サービス価格の高止まりについては声明文や、ラガルド総裁の会見で懸念が表明されました。このことは、ユーロ圏の消費者物価指数(CPI、欧州連合(EU)基準、HICPとも呼ばれる)に示されています(図表2参照)。ユーロ圏CPIを4つの構成指数に分類(エネルギー、食品、財、サービス)すると、サービスを除いた他の3指数は6月のユーロ圏CPI全体の伸びである前年同月比2.5%を下回りました。また、それら3指数の前年同月比の伸びは、5月の伸びを下回り鈍化がみられます。一方、サービス指数の伸びは6月が4.1%と全体の伸びを上回ったうえ、5月と伸びは変わらず高止まりとなっています。6月の利下げ開始にはECB内部で慎重論が残る中での利下げでしたが、サービス価格を見ると、7月の据え置きは当然の決定のようにも思われます。

もっとも、ラガルド総裁は会見でユーロ圏の景気悪化が懸念されることを示唆しています。一部のユーロ圏景況感指標は前月を下回るなど、足元の景気悪化が懸念されます。したがって、次の一手は利下げである可能性は高いとみられます。市場の関心事はそれがいつなのかです。

インフレ指標は過去だけでなく先行きのデータも幅広く見る必要がある

記者会見でラガルド総裁に対し、9月利下げの可能性に関連する質問が多く出されました。ラガルド総裁は「特定の道筋を確約しない」というフォワードガイダンス通りの受け答えに終始し、9月の利下げの可能性は「幅広く開かれている」としてヒントを与えませんでした。

また、インフレ動向を把握するうえで、どのデータに注目すべきかの特定も困難でした。ラガルド総裁は幅広くデータをカバーしているからです。しかし今回の据え置きがサービス価格の高止まりが一因であったことからサービス価格そのものや、サービス価格を左右する賃金指標が重要とみられます。ユーロ圏の賃金データとしては妥結賃金などが重要ですし、図表2のサービス価格は今後も注目が必要です。ただし、これらのデータは過去の動きであり、今後の動きにも目を向ける必要があります。ラガルド総裁は会見の中で、賃金の先行きに賃金トラッカー(求人会社のデータを使用したものなど)を活用していることを示唆しています。

別のデータとして企業への聞き取り調査(SAFE)で今後の価格設定(図表3参照)や賃金(図表4参照)の見通しを把握しているようです。先日発表されたSAFEで企業の価格設定見通しを「サービス企業」と「その他企業」の2つのグループに分けて見ると、次の点が明らかです。

まず、価格設定見通しは緩やかに低下傾向です。23年3月時点では1年後の価格設定をどちらの企業グループも6%前後としていましたが足元に近づくにつれ見通しを引き下げているからです。

次に、24年6月時点での価格設定見通しをグループ別にみると、サービス企業がその他企業を上回っており、見通しの点でもサービス企業の価格上昇圧力が他の企業を上回っています。

図表4にあるように、賃金についても同様の傾向がみられます。賃金など国内物価圧力は鈍化傾向が想定されるものの、SAFEなどを見ると、鈍化のペースは緩やかで、ECBは鈍化を確認をしながら金融政策の次の一手(利下げ)を進めてゆく展開を筆者は想定しています。足元ユーロ圏の景気が再び減速の兆しを見せていることもあり、年内は9月、12月が次の利下げの候補と考えています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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