- Article Title
- ECB、予想通りの据え置きと、不確実なこれから
ECBは7月24日に政策金利を2.00%に据え置くことを全会一致で決定したが、次回の追加利下げについてはデータ次第で判断すると述べた。ユーロ圏のインフレ率が目標の2%に達していることや、景況感の回復などを受け、当面は据え置かれる可能性も示唆された。一方、ユーロ高の金融政策への影響などには注意が必要で、多くのECBメンバーは追加利下げを選択肢としてしっかり確保したいようだ。
ECB、24年7月以来8会合ぶりに政策金利を据え置き
欧州中央銀行(ECB)は7月24日の政策理事会(会合)で市場予想通り、政策金利(中銀預金金利)を2.00%で据え置いた(図表1参照)。据え置きの決定は全会一致だった。ECBは前回(6月)の会合まで連続して利下げをしてきたことで政策金利が「良いポジション」になったと表現したことから、市場は7月会合での据え置きを確実視していた。
そうした中、今回の会合の注目点は、今後の追加利下げの有無であったが、記者会見でECBのラガルド総裁は当面の金融政策は「データ次第で会合ごとに判断する」という従来の説明を繰り返しヒントを与えなかった。市場の反応を見ると、ユーロは方向感が定まらず、国債利回りは若干上昇した。
今後の金融政策はデータ次第という姿勢だが、当面据え置きの可能性も
今回のECBの会合を受けて、ユーロ圏の国債の指標であるドイツ国債利回りの動きを確認する。目立ったのは、金融政策を反映しやすい短期セクターで0.1%近い上昇が見られた一方、財政政策などを反映しやすい超長期セクターの上昇は相対的に小幅だったことだ。市場の一部は今回の会合は据え置きであっても、次の9月会合では利下げを再開するとの見方もあったが、会見でラガルド総裁はユーロ圏のインフレ率が2%であると強調し、目先の利下げの必要性を否定した(図表2参照)。
市場の一部が9月の利下げを想定した理由の1つはインフレ率が2%を大幅に下回るリスクを先読みしていることが挙げられる。しかし、ラガルド総裁は米国と欧州連合(EU)の通商交渉の行方、地政学リスク、これまでのインフレ対策とその後の利下げの効果、などの影響を、今後数ヵ月は見守るのによい状況と会見で指摘した。当面は据え置きとなる可能性を示唆したようにも聞こえる。
不確実性の中で最も注目度が高い米国とEUの通商交渉は、いつ結果が発表されるのか、どのような内容になるのかなどについて不確実性が高い。ラガルド総裁は、会見で通商交渉については予測ではなく、発表内容を待つ姿勢を示唆しており、この要因も様子見が適当と考える理由なのだろう。
昨日のユーロ圏の金利上昇の(会合以外)背景としてユーロ圏の景況感の回復も挙げられる。会合と同じ24日に発表された7月のユーロ圏総合(製造業、サービス業)購買担当者景気指数(PMI、図表3参照)は51と拡大・縮小の分かれ目である50を超えた。3年に及ぶ不振が続いた製造業PMIも7月は49.8と22年7月以来の高水準で拡大・縮小の分かれ目となる50に近づいた。サービス業は51.2と、市場予想の50.6を上回った。PMIはユーロ圏の景気が様子見を続けたとしても、ある程度は余裕があることを示唆しているようだ。
ユーロ高継続による物価押し下げ懸念はあるが、影響は測りにくい
米国との通商交渉、インフレや景気動向以外に金融政策の判断に影響を与えそうなのが、ユーロの動向だ。記者会見でも最近のユーロ高(図表1参照)が物価、ひいては金融政策への影響についての質問が複数あった。ラガルド総裁は為替水準についてはECBの政策目標ではないという前置きをしたうえで、「ユーロの動向がインフレ予想に影響を与えるかモニターしている」と説明した。要は為替動向も気にかけているということだろう。
会見でも取り上げられたのはユーロの水準に言及したデギンドス副総裁のコメントだ。1ユーロ=1.2程度をインフレ率の低下と、製造業の競争力低下の目安と指摘した(図表4参照)。フランス中銀総裁などもユーロ高によるインフレ下振れには懸念を示している。ユーロ高の背景の一つはドル離れという、ECBには対応しがたい側面はあるものの、金融政策への影響は無視できない。ただし、為替レートがどの水準になったら金融政策を変更するということではなく、あくまで通貨がインフレに影響を与えるという予想に基づいての対応になりそうだ。
なお、ECBの他のメンバーの発言を見ると、6月会合より後の会合での追加利下げを明確に否定しているのはホルツマン・オーストリア中銀総裁とシュナーベル理事らに限られそうだ。
むしろ大半は、どのくらいの期間になるかは不確実だが当面は据え置きとしつつ、追加利下げの選択肢をしっかり確保すべきと考えているようだ。筆者も同様の見方をしている。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。