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12月米雇用統計、総じてみれば底堅い面もある
梅澤 利文
2026/01/13

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概要

2025年12月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数が市場予想を下回り、緩やかな鈍化となったが、失業率の低下などに米労働市場の底堅さが示された。失業率は低下したが、求人件数の減少は失業率上昇の要因となる可能性もあり、今後の動向に注視が必要だ。FRBは昨年9月に、労働市場悪化を理由に追加利下げを再開したが、今回の雇用統計は、当面の様子見を支持する内容だろう。




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12月米雇用統計、非農業部門の就業者数は市場予想を下回った

米労働省が1月9日に発表した2025年12月の雇用統計で、非農業部門の就業者数は前月比5.0万人増と、市場予想の7.0万人増、11月の5.6万人増(速報値の6.4万人増から下方修正)を下回った(図表1参照)。

なお、10月は10.5万人の減から17.3万人減へ下方修正され減少幅が拡大した。トランプ米政権が導入した米政府効率化省(DOGE)による連邦政府職員の早期退職プログラムは9月まで給与の支払いを認めたため、統計上は10月に大幅な雇用減となり、それが大幅減の背景となった。ただし、11月以降の就業者数(緑線)は民間部門と同様の動きとなっており、落ち着きを取り戻した。

12月の民間サービス部門の就業者数は前月を上回り底堅さを示した

12月米雇用統計の就業者数は米労働市場の緩やかな減速が示唆された。一方で、失業率は比較的底堅い結果だった。依然注意点は残るが、12月の米雇用統計全体を見ると、米労働市場は懸念されるほど弱くはないように思われる。

12月の非農業部門の就業者数の伸びは市場予想、前月を下回ったが、5.0万人増と、緩やかな鈍化にとどまったと見られよう。

業種別に見ると、雇用の伸びは、変動が大きい娯楽・ホスピタリティーや、景気変動の影響を受けにくい医療がけん引した(図表2参照)。一方で、小売りや建設、製造業などでは伸びが前月に比べ減少した。幅広い部門に採用が広がる様子が見られないことは、注意点として残されている。

なお、足元の就業者数の動向としては、政府部門の影響を受けにくい民間部門の就業者数の伸びに筆者は注目しているが、12月は図表1にあるように落ち着いた動きだった。そのうえ、民間部門のうちサービス業だけに絞ってみると、12月は前月比で5.8万人増と、11月の3.2万人増を上回り、底堅い一面も見られた。このように、非農業部門の就業者数の動向は、全体としては、緩やかな鈍化にとどまると見られよう。

12月の失業率は市場予想を下回り、じり高傾向に歯止めがかかった

12月の失業率(U3)は4.4%と、前月の4.5%(速報値の4.6%から下方修正)を下回った(図表3参照)。経済的理由によるパートタイム就業者等を失業者にカウントして算出した失業率(U6)は12月が8.4%と、前月の8.7%を下回った。なお、図表3では政府機関閉鎖の影響で公表が見送られた10月分は欠損値のため、空白としている。

12月の失業率は低下し、米労働市場に対する懸念をある程度後退させたようだ。12月16日に発表された11月の失業率(速報値)は4.6%と、失業率の上昇傾向を示唆する数字であった。仮に12月の失業率が速報値を上回る(悪化)ようであれば、米労働市場への懸念はそれなりに高まったと思われるが、毎年12月に実施される季節調整の改定により、11月の失業率が4.5%に下方修正(労働市場の改善)されたうえ、12月は4.4%と低下した。失業者を幅広くとらえ失業率の質を反映するとされるU6失業率も、12月の失業率が前月に比べ低下したことはある程度の安心材料だろう。

10月や11月の米雇用統計はデータ取得期間や回答率の低さなどデータにノイズが含まれていた可能性があるが、ノイズが少ないとみられる12月の失業率が改善した。このことは、米労働市場の底堅さを浮き彫りにした可能性があると見られよう。

12月の米雇用統計から、米企業は新規採用に慎重(雇用の伸びが低い)な一方で、解雇にも慎重(失業率は安定)な姿勢が示された。ただし、失業率上昇の懸念は残る。求人件数が減少傾向だからだ(図表4参照)。経験的に求人件数の減少は失業率の上昇を伴うことがある。雇用動態調査(JOLTS)によると、11月の求人件数は714.6万件と前月を下回った。求人件数がどこまで低下したら失業率が急上昇するかを事前に特定するのは困難だが、当面注意は必要だろう。

なお、JOLTSの求人件数の代替指数として参照されるインディード指数は11月以降改善の兆しも見られ、求人の先行きは強弱両面が想定される。

米連邦準備制度理事会(FRB)は労働市場悪化への懸念から25年9月に利下げを再開した。12月の米雇用統計の底堅さから、少なくとも次回会合では様子見が支持されると筆者は見ている。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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