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12月の米CPI、どちらかといえば利下げ支持要因
梅澤 利文
2026/01/14

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概要

2025年12月のCPIは前年同月比2.7%上昇し、市場予想と一致した。コアCPIは2.6%上昇と市場予想を下回り、追加利下げに含みを持たせた。住居関連のデータのノイズが解消されつつある中、サービス価格は概ね鈍化傾向だった。財の価格動向に不確実性は残るが、落ち着きを見せており、企業の価格設定行動を見極めたい。2026年前半に価格転嫁が落ち着けば、利下げのサポート要因となろう。




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12月の米コアCPIは前年同月比で2.6%上昇と市場予想を下回った

米労働省が1月13日に発表した2025年12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.7%上昇と、市場予想、11月(ともに2.7%上昇)に一致した(図表1参照)。政府閉鎖前だった9月の3.0%上昇に比べて伸びは鈍った。エネルギーと食品を除くコア指数の伸び率は前年同月比で2.6%上昇と、11月の2.6%から横ばいながら、市場予想の2.7%上昇を下回った。なお、政府閉鎖の影響で10月分は公表されなかった(図中の空白部分)。

短期的な動向を示す前月比の伸び率は0.3%上昇と市場予想通りだった。コアCPIは前月比で0.2%上昇と市場予想の0.3%上昇を下回った。なお、前月比は10月と11月分が公表されていない。

12月の米CPIにおいて、項目別寄与度に過度な変化は見られなかった

12月の米CPIは前年同月比、前月比がともに公表され、政府機関閉鎖の影響は明確に低下した。ただし、前月比のデータの公表は9月以来となるため比較には使いづらいことから、今回は主に前年同月比データを取り上げる。

12月のCPIではコアCPIは前年同月比で2.6%上昇と、市場予想を下回ったことを受け、市場では追加利下げの材料との期待もあったようだが、短期的な動きにとどまった。

12月(総合)CPIの前年同月比の伸びを、エネルギー、食品、財、及びサービスの4項目に分けて寄与度を見ると(図表2参照)、サービス項目の寄与度が伸びの大半を占めるが、過去に比べ寄与度は縮小しており、鈍化傾向となっている。

関税の影響を受ける品目が多いため注目される財の12月の前年同月比での伸びは、前月と変わらずだった一方、9月と比べて鈍化した。関税の影響は均してみると比較的小幅であったとみられる。

食料品価格は前月比0.7%上昇と高水準だった。一時的な上振れなのか、今後も確認し続けたい。

エネルギーは、ガソリン価格の低下などを背景に12月の前年同月比の寄与度が11月に比べ縮小した(図表3参照)。電力料金なども下押し要因だった。ガソリン価格は原油価格の下落基調とようやく整合的となってきたが、原油価格の先行きは地政学リスクなどを受け不確実性が高い。その分エネルギー価格の先行きは読みにくい。

サービスや財価格は全体に落ち着くも、品目別には注意点が残る

12月のサービスの伸びは前年同月比で3.0%上昇と、11月と同程度で、9月の3.5%上昇から鈍化した。サービス価格全体の数字に驚きは少ないが、サービスを構成する品目には、いくつか注目点があった。

サービス価格指数に占める構成割合が過半を占める住居(持家賃貸と帰属家賃)はともに12月は前月比0.3%上昇と巡航速度に戻った。10月、11月に、労働省は賃貸データなどの不足から低めの伸びが設定されたようだが、12月のデータを見る限り、データのノイズは解消されつつあるようだ。

サービスから住宅(賃貸と帰属家賃)とエネルギー・サービスを除いた「スーパーコア」サービス価格は12月が前年同月比で2.7%上昇と、前月から横ばいだった(図表4参照)。ただし、明らかにピーク時(22年の6%超)からは鈍化した。米連邦準備制度理事会(FRB)は過去の会見などで、スーパーコアに注目していると指摘している。なお、コロナ禍前、スーパーコアは概ね2%前後で推移していた。足元の水準はほぼ許容範囲とみられ、この鈍化傾向は、追加利下げの後押し要因だろう。

モノの価格を反映する財価格は、12月が前年同月比で1.4%上昇と、前月から横ばいだった。ただし、品目によって価格動向にばらつきがみられた。例えば、関税の影響が懸念される衣料品や、一部の医療用品の価格は上昇した。一方で家電製品などは下落した。また、中古車・トラックなども下落した。

米企業は輸入品にかかる関税支払い分を米国内の販売価格に緩やかなペースで転嫁する価格設定を行っている。これは価格上昇圧力となることがあり、FRBは価格転嫁がいつまで続くかに注意を払っている。財価格の動向から、関税政策の再強化などがない限り、26年前半に価格転嫁の落ち着く可能性もある。筆者は、必要なら6月までに利下げが行われる可能性があるとみている。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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