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中国、経済成長目標達成の中身と今後の課題
梅澤 利文
2026/01/20

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概要

中国の2025年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比4.5%増で、市場予想通りだったが、前期を下回った。2025年前半の経済成長は堅調だったが、後半は鈍化した。補助金による家電・通信機器の買い替えや輸出が成長を支えたが、補助金効果の低減や不動産問題の長期化、消費の落ち込みが課題となった。今年については的を絞った金融・財政政策による経済への対応が求められるだろう。




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中国、2025年10-12月期GDP成長率は4.5%増で、成長目標は一応クリア

中国国家統計局が1月19日に発表した2025年10-12月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比で4.5%増と、市場予想に一致し、前期の4.8%増を下回った(図表1参照)。中国経済は、25年前半については比較的堅調だったが、後半の成長率は緩やかに鈍化した。

25年の成長率を年初来前年同期比(年初来)でみると前年比5.0%増だった。中国政府の成長目標である「5%前後」は達成したこととなる。しかし、25年前半の成長率は高かったものの、後半は失速気味であった。また、より生活実感に近いとされる名目GDPは10-12月期が前年同期比で3.8%増で、25年全体の名目GDP成長率は4%増だった。

中国の2極化、底堅い工業生産と、軟調な個人消費(小売売上高)

中国は昨年の経済成長目標を達成したが、名目成長率が低く満足する結果とは言い難いだろう。25年の中国の成長の押し上げ要因は、主に年前半、補助金により家電・通信機器の買い替えを促進したこと、輸出が堅調であったことによる。中国政府による買い替え促進策は24年7月に開始されたが、25年には買い替え対象として、従来の冷蔵庫やテレビなど家電に加え、スマートフォンなど通信機器も対象となった。

輸出も押し上げ要因だった。トランプ関税の影響で対米向け輸出は大幅に減少したが、他地域向けの輸出が拡大した。堅調な輸出は工業生産を下支えする要因となった(図表2参照)。

10-12月期GDPと同時に発表された月次データにおいて小売売上高と工業生産は25年の中国経済を色濃く反映している。

工業生産は不動産不況を反映して建築資材関連(セメント、鉄鋼など)は全般に軟調だが、電気自動車(EV)など新エネルギー車(前年同月比で8.7%増)や産業AI機器(14.7%増)などが工業生産をけん引した。ガソリン車やEVに対する補助金は25年も維持された。

ただし、新エネルギー車は25年9月までは前年同月比で20%超の伸びを確保していたことに比べると、12月の8.7%増などに明確なペースダウンが見受けられる。そのうえ、自動車の販売現場では大幅な値引きも行われていたとみられる。自動車販売金額の伸びが軟調であったからだ。これは中国における過剰生産の一面を物語っている。

補助金効果の低減などの問題を含みながら、堅調な輸出などを背景に25年の工業生産は底堅く、中国経済は供給サイドに支えられた格好だ。

一方、小売売上高に反映される需要サイドは、昨年末に向け鈍化傾向が明らかだ。12月は前年同月比で0.9%増と、軟調に思われた11月の1.3%増をさらに下回った。小売売上高を品目別にみると買い替え促進策の失速がより明確だ。電気用品は25年6月には前年同月比で32.4%増であったが、半年後の12月は18.7%減と大幅なマイナスに転じた。家具などにも同様のパターンがみられる。

一方で、通信機器は12月が20.9%増と、6月の13.9%増を上回った。新型スマホの売れ行きが好調だったことなどが背景とみられる。

25年の中国の小売売上高は、補助金政策の効果が低減したことに加え、米中貿易問題による不確実性、会食の自粛を意図した「倹約と浪費反対に関する条例」が過度な会食控えを引き起こしたことなどがマイナス要因だった。米中貿易問題や倹約条例の影響は低下したようだが、補助金政策を26年も続けるのであれば、購買意欲を高める工夫が必要だろう。

消費の落ち込みで気になる別の要因は、不動産問題の長期化である。25年は不動産問題への対応が後手に回ったこともあり、住宅販売価格は足元下落傾向だ。12月の販売価格(70都市平均)は前年同月比3.0%減と、11月の2.8%減を下回った。住宅価格の動向と消費には緩やかな関連がみられるだけに、住宅市場の先行きが気がかりだ。

12月の固定資産投資は年初来前年比で3.8%減と、前月の2.6%減を下回った(図表3参照)。不動産投資は17.2%減と前月からさらに悪化した。

今年の中国に求められる経済政策は的を絞った対策となりそうだ

今年の中国の経済対策に何が求められるのか。これまでに中国当局から発表された今年の経済対策では具体策はほぼ示されていないが、1月9日の国務院の発表では、財政政策と金融政策が主体となることが示唆された。また、今月15日に中国人民銀行が再貸出制度(市中銀行に幅広い分野の企業に融資することを促す金融手段で焦点を絞った景気支援)の引き下げを発表した。幅広くというより的を絞った政策が選択された。中国は不動産などに深刻な問題が残る一方で、株式市場は堅調など、経済に2面性もある。このような状況では、幅広い経済政策よりも、的を絞った重点的な政策が求められると筆者はみている。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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