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ESG投資編(7)インデックス運用の弱点を知る
2021/06/17

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概要

ESG投資の流れはインデックス運用の領域にも広がりを見せています。そうしたなか、インデックスおよびインデックス運用にまつわる基本的な事柄への理解を深めておくことは有益でしょう。ここでは、一般的にはあまり強調されることのないインデックス運用の弱点にも焦点を当てていきます。




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インデックスとは?

「インデックス」とは市場動向を示す指数のことで、日本の株式市場の動向を示すインデックスであればTOPIXや日経平均株価などが挙げられます(図表1)。インデックスの対象は株式市場に限らず、債券や商品の市場動向を示すインデックスもあります。インデックスを作成・算出・公表する主体を「インデックスプロバイダー」と言い、主なインデックスプロバイダーとして、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス、MSCI、FTSE Russell、ブルームバーグなどが挙げられます。
インデックスの種類は多岐にわたり、市場全体を対象とするものだけでなく、インデックスプロバイダーはそれぞれが独自に定めた判断基準に基づいて市場の一部(特定の業種、特定の時価総額順位帯、特定のテーマ、など)を対象としたインデックスも作成しています。
近年は、ESG投資への関心の高まりを背景に、ESG評価が高い(とインデックスプロバイダーが判断した)銘柄を組入れたテーマ型のインデックスも相次いで発表されています。

インデックスの算出方法にはいくつかありますが、「時価総額加重平均型」(時価総額が大きい銘柄のインデックスへの影響度が大きい)が主流です。一般によく知られる日経平均株価やダウ工業株30種平均は「株価平均型」(株価水準の高い「値がさ株」のインデックスへの影響度が大きい)を採用しています。
ちなみに、ブラジルのボベスパ指数は「出来高加重平均型・配当込み」という独特の方法で算出されています。ボベスパ指数のように配当収入(債券の場合はクーポン収入)を含むトータル・リターンを考慮したインデックスを「トータル・リターン指数」と言います。我々が日常的に目にするTOPIXや日経平均株価は純粋な価格推移を示す「価格指数」ですが、TOPIXや日経平均株価にもトータル・リターン指数があります。

図表1:各国・地域の株式市場の動向を示す主なインデックス

注1:構成銘柄数および時価総額は2021年6月9日時点
注2:売買代金は2021年6月9日を含む過去20営業日の平均
注3:MSCI指数(世界/先進国/新興国)およびボベスパ指数はトータル・リターンベース
※当資料内で使用するMSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。
出所: ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

インデックス運用とは?

資産運用の方法には大きく分けて、「パッシブ(受動的な)運用」と「アクティブ(能動的な)運用」があります。パッシブ運用はその名の通り「受動的に」運用するもので、代表的な運用方法に「インデックス運用」があります。インデックス運用では、特定のインデックスをベンチマークとして同様の構成銘柄・構成比でポートフォリオを組成し、インデックスに連動する運用パフォーマンスを目指します。
なお、インデックスは運用パフォーマンス測定のベンチマークとなります。アクティブ運用ではインデックスとの比較でどれだけ超過収益(アクティブリターン)を上げることができたか、インデックス運用ではインデックスのパフォーマンスとのかい離をどれだけ抑えることができたか、が計測されます。

認識しておくべきインデックス運用の弱点-1

一般的にはコストの低さを理由にインデックス運用のアクティブ運用に対する優位性が強調されるケースが多いように見受けられますが、インデックス運用にも弱点はあります。実際の投資においては、それも踏まえたうえで、双方を有効活用するのがよいでしょう。

投資家がインデックス運用商品に投資することによる利点(図表2)としては、①アクティブ運用商品と比較して一般にコストが低いこと、②銘柄選択などの手間がかからないこと、③分散投資が可能なこと、などが挙げられます。しかし、②と③に関してはアクティブ運用商品に投資した場合も同様です。①のコストに関しては、確かにアクティブ運用商品に対してインデックス運用商品の方が優位なケースが多いものの、そのコストの対価として得られるリターンを事前に正しく予見することはできません。過去にはインデックス運用商品のリターンがアクティブ運用商品のリターンに勝るケースが多かったことが事実だとしても、それが今後もインデックス運用商品のリターンがアクティブ運用商品のリターンに勝ち続ける保証になるわけではない点には留意が必要でしょう。

一方、インデックス運用商品の弱点(図表2)としては、①アクティブ運用商品と比較して低いとはいえコストがかかること、②定期的に行われる「リバランス(構成銘柄や構成比の見直し)」の際に先回りして対象となるであろう銘柄の売買が行われ、価格が上がったところでの買付や価格が下がったところでの売却を余儀なくされ、投資家が不利益を被ることがあること(インデックス運用商品に固有)、③時価総額が大きかったり、流動性が潤沢であれば投資家が個別には投資したくないと考える銘柄であってもインデックスに組入れられ投資することになってしまうこと、などがあります。ちなみに、後段の事例のように、リバランス対象銘柄は、事前公表がなかったとしても、相応の確度で予見可能なケースがあります。

図表2:インデックス運用商品の利点と弱点

認識しておくべきインデックス運用の弱点-2

ここでは、先ほどインデックス運用の弱点として挙げた3つの点についてもう少し詳しく見ていきましょう。まずは、コストの問題です。例えば、日経平均株価と日経平均株価に連動する投資信託の運用パフォーマンスを比べるとどのような差が生じるでしょうか。実は、図表3に示した通り、投資信託には購入時・保有期間中・解約時に諸々の費用がかかります。そのため、日経平均株価に連動する投資信託の運用パフォーマンスは、日経平均株価のパフォーマンスに対してこれらのコストの分だけ確実に劣後することになります。

図表3:投資信託の主な費用

次に、リバランスの際に先回りして売買されることによって投資家が不利益を被る可能性があるという点についてです。直近の事例として、S&P Global Clean Energy Indexがリバランスを実施した際のケースをご紹介します。
2021年4月2日、同インデックスのプロバイダーであるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、構成銘柄数をそれまでの30から81へと拡充することを発表しました。このケースでは、同インデックスをベンチマークとする金融商品(ETFが3本存在)において、新規組入銘柄の購入資金を確保するために既存銘柄の一部を売却する必要が生じることが容易に想像されます。実際のリバランスは2021年4月19日であり、リバランスを投資機会ととらえる市場参加者はこの間にETFに先回りしてリバランスの対象となるであろう銘柄を売買することが可能でした(ETFはインデックスとのパフォーマンスの連動性を保つため、このような先回りはできない)。図表4はリバランス前後の構成比上位30銘柄のリストで、やはり、元々組入れられていた銘柄の構成比は低下したケースが大半であることが確認できます。構成比の低下が予見される銘柄については先回りして売られればETFは下がったところで売ることになり、新規組入れが期待される銘柄についても先回りして買われればETFは上がったところで買うことになるため、どの銘柄でどの程度、と言うことは困難ですが、リバランスの前後で同インデックスをベンチマークとするETFの投資家が一定の不利益を被った可能性は否定できないでしょう。

図表4:S&P Global Clean Energy IndexをベンチマークとするETFにおける構成比上位30銘柄の推移

出所: iShares Global Clean Energy ETFのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

インデックスのもう一つの問題として、市場全体を対象とするインデックスにおいてはもちろんのこと、例えば、ESGの観点からは避けられるような事業を手がける銘柄も時価総額が大きかったり、流動性が潤沢であれば自動的に組入れられてしまうことが挙げられます。この点に関して、ピクテではインデックスプロバイダーの責任も重要と考えており、2018年8月にSwiss Sustainable Financeと共同で、主要インデックスプロバイダーに対し武器製造に関わる企業を主要インデックスから除外するよう求める公開状を発表しました。ピクテでは、こうしたインデックスプロバイダーへの働きかけなどを通じて、ESG投資をより一般的なものにしていきたいと考えています。



●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
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