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ESG投資編(16)ESG投資と資産運用会社を取り巻く環境
2021/11/25

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概要

ESG投資への関心が世界的に高まる中、ESG投資の普及を後押しする要因として、米国のエリサ法の解釈に関する議論の動向が注目されています。欧州では、ESG投資としての実体を伴わないファンドの増加などに対処するため、ESG投資の透明性を高めるための規則が導入され、受益者の保護などが図られています。




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米国におけるESG投資の規模拡大の見通し

世界のESG投資戦略の残高は拡大傾向にあり、世界の運用資産総額に占める割合は2020年に35.9%となりました(図表1)。このESG投資の今後の動向を見通す上で、米国のエリサ法(ERISA※1)の解釈に関する議論の動向が注目されています。エリサ法は10兆ドル以上の規模があるとされる米企業年金制度の運営を規定する連邦法で、受託者責任(資産運用に関わる者が受益者に負う責務)などについて定めるものです。これまで、この中で規定されている、資産運用会社は「受益者の利益のためにのみ誠実に行動する」という要件について、ESG要素の考慮の是非が議論されてきました。トランプ前政権下では「受託者の利益」について経済的利益のみを考慮すべきであると規定されたことから、この要件は企業年金運用におけるESG投資の採用に対する障壁となっていました。しかし、2021年10月に企業年金制度を所管する労働省がエリサ法の改正案を公表し、ESG要素の考慮を認める方針が示されたことで、ESG投資の普及を後押しする要因になると考えられます。

図表1:世界の運用資産残高に占めるESG投資戦略の割合

出所:GSIA※3 2020 Global Sustainable Investment Reviewのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

ESG投資の透明性を高めるための規則

一方、ESG投資への関心が高まり規模が拡大する中で、環境に配慮していると誇張した主張をする「グリーンウォッシング」などの行為や、ESG投資として実態を伴わないファンドの増加が問題視されてきています。こうした問題に対処するため、欧州連合(EU)においては、金融機関に対して持続可能性に関する情報開示を求める規則が施行されています。この規則は「SFDR※2」と呼ばれるもので、欧州の運用会社は自社のファンドがどれだけサステナビリティ(社会や環境の持続可能性)に配慮しているのかを公表することが求められるようになりました(図表2) 。このような動きなどを背景にESG投資戦略の定義が見直されたことから、増加傾向にあった欧州のESG投資戦略の残高は2020年に減少しました(図表3) 。運用会社の開示義務が明確化され、実態を伴わないファンドの排除や受益者保護の強化が図られたことで、欧州のESG投資はより着実な発展が可能になったと考えられます。

図表2:SFDRにおけるファンド分類

出所:REGULATION(EU)2019/2088 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 27 November 2019 on sustainability-related disclosures in the financial services sectorよりピクテ投信投資顧問作成

図表3:欧州のESG投資戦略の運用残高の推移

出所:GSIA※3 2020 Global Sustainable Investment Reviewのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※1 Employee Retirement Income Security Actの頭文字をとった略称(従業員退職後所得保障法)。
※2 Sustainable Finance Disclosure Regulationの頭文字をとった略称 (サステナブルファイナンス開示規則)。
※3 Global Sustainable Investment Allianceの頭文字をとった略称。世界各国、地域の持続可能な投資の普及を推進する団体により構成される国際組織。


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