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ECBのテーパリング観測が高まる 欧州株の波乱はあるのか?
田中 純平
2021/09/06

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概要

8月31日に発表された8月ユーロ圏CPIの上振れや、相次ぐECB理事会メンバーのタカ派発言によって、マーケットではECBのテーパリング観測が浮上している。今のところ欧州株式市場への影響は限定的となっているが、テーパリングを実行するにあたってはパウエルFRB議長と同様、ラガルドECB総裁も市場との「対話力」が求められることになる。



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8月ユーロ圏消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る

8月31日に発表された8月ユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比+3.0%と市場予想の同+2.7%を上回り、前月の+2.2%から加速した(図表1)。足元のインフレ率の上振れは一時的と捉える見方はあるものの、世界的に物価上昇圧力が高まる中では、欧州においても物価見通しに対して警戒感が強まってもおかしくない状況だ。

ここにきて欧州中央銀行(ECB)当局者の発言にも変化が表れ始めている。ECB理事会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は8月31日、新型コロナウイルスの危機に対応する資産購入の特別枠である「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」の縮小を検討できる状況になっているとし、9月9日のECB理事会で10-12月期の縮小開始が議論されるとの見方を示した。また、ECB理事会メンバーのワイトマン独連銀総裁は翌日9月1日、経済が回復し、インフレが上向く中で、ECBはPEPP終了に向けて準備し始める必要があると語った。さらに、ECBのラガルド総裁は同日、ユーロ圏経済は新型コロナウイルスによるパンデミックから回復しつつあり、なお苦境に立つ一部のセクターに的を絞った外科的な支援のみが必要だとの認識を示した。

ECBのテーパリング観測による欧州株への影響は今のところ限定的

次回9月9日のECB理事会では、今年4月以降に実行された「(年初よりも)かなり速いペースでの」PEPPを減速させる方針が示されるかが焦点になる。PEPPは今年1-3月に毎月平均622億ユーロのペースだったが、これが4-7月は毎月平均821億ユーロに増額されている(図表2)。8月ユーロ圏CPIの上振れ後に相次いだECB理事会メンバーのタカ派発言は、PEPPの減額(テーパリング)に向けた地ならしとも解釈できる。いずれにせよ、次回理事会ではECB理事会メンバーの真意がある程度明らかになるだろう。

前述した8月ユーロ圏CPIの上振れとECB理事会メンバーのタカ派発言をきっかけとしたECBのテーパリング観測の高まりから、8月31日以降の欧州債券市場ではドイツ10年国債利回りが上昇、為替市場でもユーロ高米ドル安となったが、欧州株式市場(STOXX600指数)への影響は今のところ限定的となっている(図表3)。

8月27日のジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の「対話力」が際立ったように、欧州株式市場が今後波乱無くECBのテーパリングを消化するには、ラガルドECB総裁の「対話力」が求められることになる。その試金石とも呼べるイベントが、次回のECB理事会になる可能性がある。


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田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
投資戦略部長

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。日経CNBC「朝エクスプレス」、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「NIKKEI NEWS NEXT」に出演。週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載中。日本経済新聞やブルームバーグではコメント多数引用。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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