Article Title
2022年 米国のイールドカーブに要注意
市川 眞一
2021/12/17

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

12月14,15日のFOMCで、FRBはテーパリング完了を2022年3月に前倒しした。また、参加者による政策金利の見通しでは、来年中に3回の利上げが想定されている。一方、新型コロナ禍で金融市場が混乱に陥った昨春と比べ、イールドカーブに大きな変化はない。FRBの出口戦略加速を織り込む時、米国の金利体系は大きく変動し、資産市場にも強い影響が及ぶのではないか。



Article Body Text

FRBの役割:インフレファイターへの変化

14,15日に開催されたFOMC後に発表された声明では、従来の「インフレは一時的」との部分が抜けていた。足下の物価急上昇を背景に、FRBがインフレ警戒型に軸足を移したことは明らかだ。その結果、市場の事前想定通り、テーパリングの完了時期は来年6月から3月へ前倒しされた。

一方、FOMCメンバー18人が示した政策金利の見通しでは、2022年末のFFレートについて0.75~1.00%との観測が10人に達している(図表1)。つまり、1回0.25ポイントとして3回の引き上げが想定されており、11月2、3日の前回FOMCと比べ利上げ積極派が大幅に増加した。

雇用環境が急速に改善する一方、実質賃金がマイナスになり、有権者の間ではインフレへの懸念が高まっている模様だ。これは、ジョー・バイデン政権にとっても憂慮すべき事態と言え、FRBの役割は政治的にもインフレファイターへ変化したと言えよう。テーパリングが終了する来年3月に1回目の利上げが行われるとの見方は、最早、コンセンサスではないか。

 

米国の金利体系:出口戦略で大きく変わる可能性

FRBが利上げへの準備段階に入っているにも関わらず、イールドカーブは新型コロナ禍で金融市場が大きく動揺した昨春とあまり変わっていない。過去30年間に亘って物価安定期が続いてきたことにより、現在の米国の金利体系はインフレに関して未だ警戒的とは言えないだろう。

米国の物価上昇率は、エネルギー価格の安定で今より落ち着くとしても、賃金に牽引されて高止まりが予想される。そうしたなか、仮に2022年中に3回の利上げを織り込むとすれば、10年国債の利回りが年後半に2.5%を超えても不思議ではない。それでも、実質金利は長短ともにマイナスだろう。

マーケットは、旧ソ連崩壊以降、過去30年間に亘ってグローバリゼーションの下で進んできた物価安定を基本的な前提として堅持している模様だ。しかし、それは市場が抱える最大のリスクなのではないか。インフレが所与の条件に変わり、FRBによる出口戦略が加速した時、金利体系の変化が多様な資産のバリュエーションに影響を及ぼす可能性があるからだ。物価安定の固定観念を見直し、インフレ局面において起こり得るシナリオに準備をすべき時と言えるだろう。


関連記事


米国・イラン停戦合意を受けた市場見通しと投資戦略

トランプ大統領の誤算がもたらすインフレ圧力

3月米雇用統計は中東情勢を反映したのだろうか


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。

手数料およびリスクについてはこちら



ディープ・インサイトの記事一覧