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- 米政策金利の適正水準
米国の金融政策はインフレ抑制を最優先に、利上げを続けています。依然インフレは高水準で利上げの継続が想定されます。しかし、利上げの副作用も徐々に懸念され始めています。ただし、過去において適正な政策金利の水準の目安となった金融政策のルールは修正が必要で、新たなアイデアが生まれつつあるようです。
パウエル議長講演:ターミナルレートは若干の上昇にとどまる見込み
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が2022年11月30日に行った講演の内容を受け米国債利回りは低下傾向となっています。パウエル議長は政策金利の到達点予想(ターミナルレート)が若干高まることを示唆、過度な上昇は回避されるとの観測などが国債利回り低下の背景と見られます。
政策金利についてパウエル議長は金融政策を運営するうえで、利上げのペース、ターミナルレートの水準、利下げまでの期間で引き締めを維持するとする中、利上げのペースを落とすことは、先の講演でも明確にしています。今後、ターミナルレートなどの動向を占ううえで重要となるのは客観的な政策金利の引き締め基準と見ています。
政策金利の適正水準を巡り地区連銀から様々な提案
すでに米地区連銀が政策金利もしくは引き締め度合いの基準となるアイデアを公表しています。例えば、サンフランシスコ連銀は信用スプレッドなど市場変数から政策金利の代替レートを合成指数として算出しています。結果を見ると、現在の米政策金利は引き締め過ぎの水準であることが示されています。セントルイス連銀のブラード総裁は、過去に市場で参照されていた「テーラー・ルール」の修正版を使用しています。修正のポイントの一つはマイナス金利への対応です。オリジナルのテーラー・ルールは、金融危機などでマイナス金利を示唆していますが、米国はマイナス金利政策を採用しておらず、これに見合うよう調整しており、修正版テーラー・ルールと呼ぶべきものとなっています。
一方、サンフランシスコ連銀の代替レートは、ゼロ金利制約やフォワードガイダンス、量的金融緩和などの影響を受けなかった市場変数をベースに合成指数を作成し代替レートとしています。
過去に通用した金融政策のルールに見直しが求められる
テーラー・ルールのようなアプローチは債券購入など新たな金融政策の併用で見直しを迫られています。新しい市場環境にふさわしい方策が求められるからです。一方で、議論が煮詰まっていない面もあります。例えば、サンフランシスコ連銀は現在の政策金利が引き締め過ぎの可能性を懸念する一方で、ブラード総裁の修正テーラーモデルは一段の引き締めを支持していました。ただし、最近ブラード総裁はターミナルレートの見通しを引き下げています。筆者はサンフランシスコ連銀の方に分があると見ています。
これまでの例とは全く別の手段による適正な政策金利の水準として実質自然利子率の考え方が知られています。景気に中立的な実質金利で、景気やインフレを安定させる金利水準のイメージです。したがって、マクロ経済を安定させる金利水準とも考えられます。
実質自然利子率は市場で観測できず、推定により求めます。しかしながら、新型コロナウイルスの影響でGDP(国内総生産)成長率が急激に変化したため、推定値の信頼度が低下しました。ニューヨーク連銀は自然利子率の推定に積極的でしたが、20年後半に提供を停止しています。
金融安定性の考えを反映
最近、ニューヨーク連銀は金融安定利子率という別の考え方を示しました。インフレが安定するのに求められる中立金利でなく、金融市場が安定するのに求められる中立金利というイメージです。
金融安定利子率も、先の実質自然利子率同様に市場で観測されずに市場データなどからモデルで推定する必要があります。ニューヨーク連銀のモデルを1つの例にすると、(内政)変数に銀行の保有する安全資産や、家計に提供した預金額などが使用されているようです。なお、(外生)変数に推定されるべき自然利子率などが使われており、今後の発展の余地も残されていると見られます。
イメージとして、金融安定利子率を政策金利が上回れば金融不安定性のリスクが高まるといった使い方が今後想定されます。これまでFRBはインフレ抑制を最優先に政策金利を引き上げてきました。インフレ率に低下の兆しは見られますが、依然水準は高く、当面利上げが続くことも想定されます。しかし、利上げの影響が金融不安につながるのであれば、インフレ抑制の正当性は失われると思われます。その適正な水準の算出に、金融安定利子率のような考え方が今後の金融政策に反映される可能性もあり、今後の展開に注目しています。
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