- Article Title
- 大幅利下げとなった9月FOMCの解釈
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17-18日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%と通常(0.25%)より大幅な利下げ幅で緩和サイクルを開始することを決定した。予防的利下げで労働市場の悪化を防ぎ、現在の堅調な米国経済を維持することが大幅利下げの理由だ。ただし、インフレ懸念は完全に払しょくできているとは言い難く、今後の利下げは比較的落ち着いたペースかもしれない。
9月のFOMC:0.5%の利下げが決定されたが、ボウマン理事は反対を表明
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17-18日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%と通常(0.25%)より大幅な利下げ幅で緩和サイクルを開始することを決定した。
9月のFOMCではボウマン理事が、インフレ懸念が残るとして0.25%の利下げ幅を主張し、大幅利下げに反対した。政策決定にFRB理事が反対したのは2005年以来と異例の事態だ。ボウマン理事は20日に声明を発表し、反対票を投じた理由を説明している(図表1参照)。
労働市場の悪化を予防的に回避するため大幅利下げが決定された
9月のFOMCは直前まで市場の利下げ幅の見方が0.25%と0.50%で二分されていた。結果は大幅利下げとなったが、執行部の一員であるボウマン理事が反対するなど異例の決定となった側面もある。FOMC後の参加者のコメントや、最近の経済データを参考に、今回のFOMCを再考してみよう。
ボウマン理事の20日の声明などによると、反対の理由は最近の米国の経済指標が堅調で、労働市場も完全雇用に近い状況にある一方、インフレ懸念は後退したとはいえ消滅したわけではないことだろう。底堅かった8月の小売売上や鉱工業生産などをみても説得力はある。
これまでFRBは「金融政策はデータ次第」というバックミラー的な説明を繰り返してきた。この方針を維持するのなら、金融政策の引き締め過ぎを0.25%の利下げで微調整することに同意できても、大幅な引き下げ幅で利下げを開始することは、現状に照らして同意しかねたようだ。
一方、パウエル議長はFOMC後の会見で米経済の現状は良いと述べ、これを維持するためフォワードルッキング(予防)的な判断で大幅利下げを決定したと説明している。また、パウエル議長は政策が後手に回るリスクへの質問に対し「労働市場を支援すべきタイミングは労働市場が強いときであって、実際にレイオフが始まってからではない」とも述べている。
足元の経済指標か、それとも先行き重視かで意見が分かれたわけだが、他のFOMC参加者は大幅利下げに同意した。アトランタ連銀のボスティック総裁は利下げ後の政策金利が中立金利(景気を過熱させず冷やしもしない金利水準)を上回ることを念頭に、軟化の兆しが見え始めた労働市場への配慮から大幅利下げ支持に転じた。ミネアポリス連銀カシュカリ総裁も労働市場のさらなる悪化を防ぐことの必要性を指摘している。
異なるのはウォラー理事で、9月に発表された8月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)を取り上げ、「インフレが想定以上に軟化しつつある」ことを主に大幅利下げの理由としている。ウォラー理事の発言は影響力が大きいことから注目度は高いが、20日のインフレ軟化懸念発言に対し、筆者は切れ味がなかったとみている。カシュカリ総裁が、今後は小幅なステップ(0.25%)での利下げを支持しているのは、インフレ懸念が完全に後退したわけではないことの1つの証拠だろう。ウォラー理事は9月のFOMCのブラックアウト期間(FRB高官が金融政策の対外発信を控える)直前に、大幅利下げにオープンマインドと述べつつも、「労働市場は軟化はしているが悪化はしていない」と発言した後でもあり、大幅利下げの理由を労働市場とはしにくかったのかもしれない。
なお、9月のFOMCでは会合前に当局者から大幅利下げを示唆するコメントはほぼ聞かれず、ブラックアウト期間中の新聞報道で織り込みが進んだ印象だ。情報発信のあり方に疑問も残る。
FOMC後の国債利回りが示唆すること
次に、FOMC後の米国債市場を見ると、大幅利下げにもかかわらず、10年国債利回りはFOMC後、小幅ながら上昇した(図表2参照)。おそらくFOMC前に大幅利下げを織り込む過程で生じた利回り低下の反動なのだろう。
反動の背景は、大幅利下げで緩和局面が始まったものの、今後の利下げの道筋には大幅利下げが見込まれていないことが挙げられる。。また、中立金利の代替とみられるフェデラルファンド(FF)金利の長期水準が2.9%へと引き上げられたことも長期金利を下げにくくしているのだろう(図表3参照)。
利下げの道筋は、FF金利の年末水準から25年は4回、26年は2回と想定される。早めに大幅利下げして、その後は通常の利下げで、ペースも急がないイメージだ。仮に今後の経済指標で労働市場の悪化が示されなければ、短期金利はともかく、長期金利への下押し圧力は比較的小さいかもしれない。
長期FF金利の水準の上昇も長期金利を下げにくくしている要因だろう。利下げ局面の終了となるターミナルレートや今後の引き締め度合いの目安として長期FF金利が意識されるからだ。
ターミナルレートや、中立金利を市場がどの程度と見積もっているかは、スワップレートなどに反映されている。それを見ると、FOMC後、両レートとも上がっている。米10年国債利回りばど長期債レートも同じような動きをしている。年内の利下げ回数が市場では注目されるが、今後の利下げの道筋や、ターミナルレートの水準にも目配せが必要だろう。
なお、24日に発表されたコンフェランスボードの9月の消費者信頼感指数は、雇用市場の軟化などを含んで悪化した。このような気になる数字もあることや、利下げの効果が景気を押し上げるまでの時間を考えると、予防的引き下げは必要であったと筆者は考えている。一方で、インフレ懸念は完全に払しょくされたわけではなく、今後の大幅な利下げに対しては慎重に見ている。
現状の経済指標が大幅に悪化しないなら、年内は2回、来年は4回程度の利下げを見込んでいる。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。
手数料およびリスクについてはこちら
ディープ・インサイトの記事一覧
| 日付 | タイトル | タグ |
|---|---|---|
|
日付
2026/04/08
|
タイトル 米国とイランは2週間の停戦合意 ここからの株式市場の展開は? | タグ |
|
日付
2026/04/07
|
タイトル トランプ大統領の誤算がもたらすインフレ圧力 | タグ |
|
日付
2026/03/31
|
タイトル 中東危機下における米国経済 | タグ |
|
日付
2026/03/26
|
タイトル 忍び寄るプライベートクレジットのリスクとその正体 | タグ |
|
日付
2026/03/24
|
タイトル 中東情勢次第となった米国の金融政策 | タグ |
|
日付
2026/03/17
|
タイトル ホルムズ海峡封鎖の長期化観測 カーグ島の米地上部隊派遣は「最悪のシナリオ」か? | タグ |
|
日付
2026/03/17
|
タイトル 高市外交の真価を問われる訪米 | タグ |
|
日付
2026/03/10
|
タイトル イラン攻撃:時間が決める勝敗 | タグ |
|
日付
2026/03/03
|
タイトル 米国によるイラン攻撃の行方 | タグ |
|
日付
2026/02/26
|
タイトル リフレ派とされる2名の日銀人事提案と金融政策 | タグ |