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米国経済に関する一抹の不安
市川 眞一
2021/09/10

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概要

新型コロナ禍の急速な落ち込みから米国経済は力強く回復してきた。アフガニスタン問題でジョー・バイデン大統領の支持率は低下しているが、それが米国経済に与える影響はほとんどないだろう。むしろ、バイデン政権の直面する大きな課題は、新型コロナ向けワクチンの接種率向上だ。このまま接種のペースが失速すれば、2022年の米国経済に不透明感が台頭しかねない。



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米国のワクチン接種率と新規感染者:支持政党により州毎に大きな違い

日本を含めてデルタ型の新型コロナの感染が拡大しており、米国も例外ではない。6月下旬に7日移動平均で1万1千人前後だった新規感染者は、9月に入り16万人台になった。州毎のワクチン接種率と直近1週間における人口100万人当たりの新規感染者数の関係を見ると、一次回帰直線は明らかな右肩下がりだ(図表1)。決定係数(R2)は0.52なので、この一次回帰直線には統計的な説明能力が認められる。つまり、デルタ株を含む新型コロナに対して、ワクチンの2回接種には強い感染抑止力があると言えよう。

 

ちなみに、足下、新規感染者の多い10州のうち、サウスカロライナ、アラバマ、フロリダ、ウエストバージニア、ミシシッピなど9州は、昨年11月の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝った州だ。スウィングステートであるフロリダを除き、伝統的に共和党の強い「レッド・ステート」である。

一方、ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカットなど民主党の伝統的地盤である北東部の州では、ワクチンの2回接種率が軒並み70%を超え、新型コロナの新規感染者も相対的に少ない。米国におけるワクチン接種率の地域特性は、支持政党が強く影響していると言えるのではないか。

 

2022年へのリスクシナリオ:共和党支持層への説得が重要な鍵を握る

トランプ前大統領がワクチンに関し「ワープスピード計画」を発動、その早期開発に大きく貢献したことは間違いない。後継のバイデン大統領はワクチンの普及に注力、当初、米国は他の主要国を大幅に上回るペースで接種を進めた(図表2)。

しかしながら、2回の接種を受けた15歳以上の住民が50%を超えた6月頃から、明らかに米国におけるワクチン接種は減速している。足下は64.1%に止まり、80%を超えたカナダ、70%超の英国、ドイツ、フランス、イタリアなど欧主要国の後塵を拝するようになった。さらに、接種を加速させている日本にも数週間以内に抜かれかねない状況だ。

 

アフガニスタンからの米軍撤退に関し、バイデン大統領はその唐突とも言える手法について内外の厳しい批判を受けている。FiveThirtyEightの集計によれば、最新の世論調査で大統領への支持率は不支持率を下回った。もっとも、次の大統領選挙までまだ3年以上残されている。アフガニスタン問題は、米国へのテロを抑止できれば、時間の経過によりダメージをコントロールすることが可能なのではないか。

一方、米国内では、新型コロナのワクチン接種に関し、懐疑的論調や陰謀説が共和党支持層を中心に根強いようだ。バイデン大統領はそうした国民を説得し、ワクチン接種率を一段と引き上げなければ、”with Corona”下における成長シナリオに黄色の信号が点灯しかねない。

この問題は、米国のみならず、世界経済に影響を及ぼす可能性がある。現時点でメインシナリオではないが、2022年に向けたリスクシナリオとして十分注意すべきだろう。

市川 眞一
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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