- Article Title
- 日銀が見逃す3つのリスク
1月17、18日の政策決定会合に合わせて発表された年4回の『経済・物価情勢の展望(展望レポート)』では、2022、23年度のコア消費者物価上昇率が小幅上方修正された。ただし、日銀はインフレよりもデフレ再燃のリスクを懸念しており、国際的な経済環境変化の可能性には無頓着のようだ。結果として、日本経済にはインフレ圧力が高まる3つのリスクがあるのではないか。
消費者物価:エネルギー、通信を除く寄与度は+0.9pt
展望レポートの物価に関する部分は、今後、エネルギー価格の高騰と携帯電話通信料引き下げの影響が共に剥落するなか、予想物価の上昇を背景とした需給ギャップの縮小により、2022、23年度のコア消費者物価は「1%程度の上昇率が続く」・・・と要約できるだろう。政策委員による物価見通しの中央値は、2022、23年度とも1.1%の上昇だった。
昨年11月の消費者物価上昇率を見ると、総合指数が前年同月比0.6%、生鮮食品を除くコア指数が同0.5%だった。コア指数への寄与度は、エネルギーが+1.2ポイント、通信が▲1.6ポイントであり、確かにこの2つの影響は大きい(図表1)。
もっとも、エネルギー及び通信以外の寄与度が+0.9ポイントに達していることに注目すべきだろう。特殊要因を除いても物価は着実に上昇しつつあると考えられるからだ。
通信料金に関しては、菅義偉前首相の強い意向により、実質的に政策的な引き下げが行われた。その影響は、日銀が指摘するように2022年度に入ると概ね解消される。
一方、エネルギー、その他の国際商品市況については、上昇が続く可能性は否定できない。新型コロナ禍からの回復局面における一過性の要因以上に、米中対立の下での資源争奪戦の影響が強まっており、コモディティ価格は全般に上昇基調だ(図表2)。さらに、地球温暖化抑止への取り組みにより、構造的な需要先細りを懸念する化石燃料事業者は投資を躊躇うだろう。もっとも、当面は化石燃料に依存せざるを得ないため、需要は高止まりが予想され、結果としてエネルギー価格には上昇圧力が生じ易い。この点は、日銀の物価見通しに対する第1のリスクと言える。
後手に回る日銀:リスクを意識した資産運用の重要性
日銀は、予想物価水準の高まりについて、需要を刺激する要因と想定している。しかしながら、硬直的な雇用制度の下、賃金上昇が見込めない日本の場合、インフレ期待が高まると、消費者はむしろ生活防衛のために財布の紐を締める可能性が強い。この縮小均衡シナリオは第2のリスクだろう。
また、想定外のインフレ下で日銀が短兵急に出口戦略を採らざるを得ない一方、政府が新規財源債の発行を縮減できず、国債市況が急激に悪化する可能性がある。これは第3のリスクだ。日銀が長短金利操作を採用していることで、期待インフレ率の高まりや利上げ観測を事前に織り込み、市場はイールドカーブを自律的に調整するこができない。結果として国債価格が急落し、予想外の円安により物価が一段と押し上げられるリスクがあるのではないか。
そうした3つのリスクに関し、日銀は「フォワード・ルッキング」な姿勢で十分に説明をしているとは言い難い。むしろ、日銀自身が適合的期待形成によって後手に回っている印象だ。
資産運用においては、蓋然性のあるリスクに着目、インフレや円安に備え、国際分散投資を進める必要があるだろう。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。
手数料およびリスクについてはこちら
ディープ・インサイトの記事一覧
| 日付 | タイトル | タグ |
|---|---|---|
|
日付
2026/02/26
|
タイトル リフレ派とされる2名の日銀人事提案と金融政策 | タグ |
|
日付
2026/02/26
|
タイトル 長期金利上昇のリスクシナリオ:過去事例からの検討 | タグ |
|
日付
2026/02/24
|
タイトル 関税敗訴 トランプ大統領の次の一手 | タグ |
|
日付
2026/02/16
|
タイトル 政府債務対GDP比率は減るのか? | タグ |
|
日付
2026/02/12
|
タイトル 自民大勝は日経平均6万円超えの号砲か? | タグ |
|
日付
2026/02/09
|
タイトル 圧勝した高市首相の難敵 | タグ |
|
日付
2026/02/03
|
タイトル FRBの政策を左右する3つのポイント | タグ |
|
日付
2026/01/27
|
タイトル 日本株の行方 | タグ |
|
日付
2026/01/20
|
タイトル 米銀行決算の裏に潜むリスク | タグ |
|
日付
2026/01/15
|
タイトル 高市首相の解散で政権選択選挙へ | タグ |