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- バイデン大統領はエネルギー重視へ
2020年の大統領選挙で地球温暖化抑止を主要公約としたジョー・バイデン大統領だが、エネルギー政策を大きく見直す模様だ。国有地における新たなシェールガス・オイルの開発許可に踏み切った。インフレ阻止が喫緊の課題になったことに加え、ウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁で西側諸国の結束を維持する上で、エネルギーの安定供給が極めて重要だからだろう。
シェールガス・オイル:国有地における新規開発再開へ
米国内務省は、4月15日、石油、ガス採掘事業者に対する国有地賃借権の新規売却再開を発表した。広さは14万4千エーカー(583km²)で、適地と評価された面積の約2割程度に止まる。また、リース料は石油、天然ガス産出額の18.75%とされ、従来の12.5%から大幅に引き上げられた。
ただし、これはバイデン政権のエネルギー政策の大きな転換を意味する。同大統領は、就任日の昨年1月20日、シェールガス・オイルの生産に供する国有地の新規賃借を禁止する大統領令に署名していたからだ。温室効果ガス排出削減のため、化石燃料の開発抑止が狙いだったのだろう。
しかし、新型コロナ禍から世界経済が立ち直る過程で、エネルギー需要は急拡大した。さらに、地球温暖化抑止への国際的潮流を背景として、事業者が投資を抑制するとの見方が強まり、化石燃料価格は軒並み急騰している。そうしたなか、昨年秋に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、石炭の段階的使用削減が決まった。相対的に二酸化炭素排出量の少ない天然ガスの価格は、欧州市場を中心に特に高騰が著しい(図表1)。
インフレ圧力の高まりを懸念するバイデン大統領にとり、エネルギー価格の大幅な上昇は深刻な懸念材料だ。ただし、選挙公約に反するシェール開発へのテコ入れは政治的リスクが高い。同大統領は環境とインフレの板挟み状態に陥った。
そうした状況下、ロシアがウクライナを侵略したのである。ロシアの天然ガス純輸出量は年間2千億㎥を超えており、EUは調達量の約40%を同国に依存してきた。ロシアへの経済制裁を長期的に続ける上で、増産余力のあるシェールガス・オイルは極めて有力な代替手段だ。バイデン大統領は、期せずしてエネルギー政策転換の理由を手に入れた。
バイデン政権:環境・物価・輸出拡大の一石三鳥目指す
2021年における米国の天然ガス純輸出量は1,089億㎥に達し、ロシアに次ぐ世界第2位の規模だった(図表2)。価格の上昇が事業者に対する増産へのインセンティブになっている模様だが、ロシアの供給量を代替するには不十分だ。対ロ制裁の長期化により、価格は高止まりする可能性が強い。
バイデン政権は、地球温暖化抑止とのバランスを取る上で、米国国内における再生可能エネルギー、原子力の開発にも引き続き注力するだろう。一方、エネルギー政策を慎重に調整し、環境、インフレ抑制、天然ガス・石油の輸出拡大の一石三鳥を目指すと考えられる。米国の強かさは、緊迫する国際情勢の下、資源輸出を拡大することにより、長期的には経済の帳尻を合わせられることだ。
一方、資源価格の高止まりと円安の相乗効果により、日本経済は内需拡大なきインフレに悩まされるのではないか。それは、為替市場にいてさらなる円の下落圧力となりかねない。
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