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- 成長株相場の終わり、円安の始まり
米国では、5月の消費者物価上昇率が前年同月比8.6%に達し、40年ぶりの高水準になった。これは、国際社会がグローバリゼーションの時代から分断の時代へ移行しつつある状況を象徴するだろう。30年間に亘って金利低下の下で続いてきた成長株主導の株式市場は、大きな転換点を迎えた。一方、日銀はインフレ下で量的緩和を強化しており、円安は止まりそうにない。
インフレの背景:安定から分断の時代への劇的な変化
1991年12月に旧ソ連が消滅して以降、世界は米国主導の下でグローバリゼーションの時代になった。その結果、韓国、中国、ASEANなどが安価な労働コストを活用して工業製品の輸出を拡大、米国もインフレから解放されたのだ。東西冷戦期の1961~90年、米国の消費者物価上昇率は年平均5.2%だが、1991~2020年は2.2%に落ち着いた(図表1)。
しかしながら、リーマンショック前後から中国の経済成長が著しくなり、それに伴って軍事力を急速に強化していることから、米中両国の覇権争いが激しさを増している。そうしたなか、新型コロナ禍で世界のサプライチェーンが寸断され、ロシアによるウクライナへの侵略で世界最大級の資源国から原油、天然ガスの輸出が滞る可能性が高まった。
加えて、ドナルド・トランプ前大統領の時代に米国は移民の流入を抑制し、新型コロナにより重症化の懸念がある年齢の高い層が労働市場から撤退して戻っていない。4月の米国の求人は1,140万人、求職者は600万人であり、総労働力人口の3.6%に相当する巨大な労働力不足が起こっている。米国企業は人手確保のため賃金を上げており、その価格転嫁が物価をさらに押し上げる局面になったと言えよう。
雇用が堅調なため、FRBはインフレ抑制に重心を置き、6月14、15日のFOMCで75bpの利上げを実施している。5月31日、ホワイトハウスでジェローム・パウェルFRB議長と会談したジョー・バイデン大統領は、「FRBの独立性を尊重する」と明言、金融引き締めへ強い支持を表明した。バイデン政権にとり、内政上の最優先課題はインフレの抑制だからだろう。
日米の金融政策:真逆の方向が導くドル高・円安
ソ連崩壊以降の30年間、物価安定を背景に米国の市場金利は趨勢的に低下した(図表2)。この間、株式市場では、NASDAQ総合指数をS&P500で割ったレシオが上昇を続けている。これは、成長株が概ね市場をアウトパフォームしていたことを示すが、背景は金利低下によってリスク許容度が高まり、高いバリュエーションが正当化されてきたことだろう。
しかし、インフレの時代に入ったとすれば、シナリオは大きく変らざるを得ない。金利上昇の下では、期待成長率よりも確実なキャッシュフローが評価されるのではないか。言い換えれば、物色の対象は、IT系中心の「ニューエコノミー」から、エネルギー、公益、軍事産業などの「オールドエコノミー」に大きくシフトすることが予想されよう。
一方、日本では、インフレ期待が高まり、市場金利が上昇する局面で、日銀はイールドカーブ・コントロール下で10年国債の連続指値オペを実施している。これは、実質的には量的緩和の強化に他ならない。日米の中央銀行が真逆の金融政策を実施している以上、為替のドル高・円安は続くのではないか。バイデン政権も、米国の物価抑制への効果を考慮、「強いドル」を歓迎しているだろう。
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