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米国中間選挙の考え方
市川 眞一
2022/08/19

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概要

11月8日の米国中間選挙へ向け3ヶ月を切った。『インフレ抑制法』、『2022年半導体及び科学法』の成立で民主党への支持率はやや盛り返しているが、ジョー・バイデン政権が連邦下院で過半数を失う可能性が強まっている。ただし、バイデン大統領にとって真に重要なのは2023、24年の米国経済だろう。景気拡大を演出するため、今年はインフレ抑制に専心するのではないか。



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中間選挙:1期目の大統領与党は勝てない

戦後の米国には12人の大統領がいたが、最初の中間選挙で全議席改選となる下院において与党が議席を増やしたケースは、2002年のジョージ・ブッシュ大統領(子)の1例のみだ。当時は同時多発テロの翌年であり、大統領への国民の支持率が異例の高さだった。一方、民主党のビル・クリントン、バラク・オバマ両大統領は中間選挙で大敗を喫したものの、2年後の自らの選挙では圧勝して再選に成功している。


直近5人の大統領の1期目における実質成長率を見ると、再選されたクリントン、ブッシュ(子)、オバマ3大統領は中間選挙後の2年間はプラス成長だった(図表1)。これに対し、再選に失敗したジョージ・H・W・ブッシュ(父)、トランプ両大統領は、3、4年目のいずれかの年がマイナス成長だ。つまり、大統領再選の重要な鍵は、中間選挙の結果ではなく、中間選挙後2年間の米国景気の動向に他ならない。

ちなみに、今回の中間選挙で改選されるのは、上院の場合はClass3の34議席であり、民主党の現職は14人に止まる。その多くは同党が強力な支持層を持つ「ブルーステート」だ。従って、非改選も含め民主党が上院で現有の50議席を確保する可能性が低いとは言えないだろう。

一方、全定数435議席が改選される下院に関して、ABCニュースが運営するWebサイトの「ファイブ・サーティ・エイト」は、直近の世論調査の分析により、現在のところ80%の確率で共和党が過半数を奪還すると予測している。

米国連邦議会の場合、一部の例外を除いて上院、下院の権限は同等だ。仮に民主党が下院で少数与党になった場合、バイデン大統領の議会対策はこれまで以上に難しさを伴うものになるだろう。ただし、三権分立が厳格に保たれる米国では、それは共和党も政策に強い責任を有することを意味する。従って、中間選挙での勝敗は、2年後の大統領選挙を含めた総選挙とかならずしも直結しないのではないか。

米国経済:名目成長の強さが示す政策の方向性


2022年における米国経済は、既に終わった前半2四半期が実質ベースの前期比・年率で連続のマイナス成長になった(図表2)。しかし、この両四半期とも名目成長率は6.6、7.8%と高く、70%近くを占める個人の消費支出は、堅調な雇用環境を背景に名目ベースでは伸びている。

つまり、インフレ率を抑制することができれば、米国経済が実質でもプラス成長となる可能性は高い。特に7月の平均時給は前年同月比5.2%と高い伸びを示したものの、消費者物価上昇率は鈍化したとは言え上昇率が8.5%で、実質賃金は依然としてマイナスの状態だ。これでは、実質購買力が減少すると同時に、有権者の政治に対する不満が溜まるだろう。

バイデン大統領は、2023、24年の成長力を確保する上で、年内はFRBと共にインフレ抑制に注力すると見られる。その成功が、2024年11月の再選へ向け必要条件と言えそうだ。

 


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市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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