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- ばら撒き的物価高対策の評価
岸田内閣は、9月9日、『物価・賃金・生活総合対策本部』において、物価上昇に対する追加の対策を決めた。このうち、住民税非課税世帯への5万円の臨時特別給付金には、ばら撒きとの批判が多い。もっとも、円安による賃上げなき物価高は低所得者層への影響が最も大きい。従って、この給付金の是非は、10月に決まる総合経済対策の中身によって決まるのではないか。
円安のインパクト:所得に対して強い逆進性
円安に歯止めが掛からない背景は、1)日米中央銀行による真逆の金融政策、2)日本のエネルギー自給率が低いことによる貿易赤字、3)インフレ対策として輸入物価の抑制を図るジョー・バイデン政権、FRBがドル高を容認していること・・・の3つの相乗効果と言えよう。いずれも直ぐに解消される可能性は低く、円安傾向は今後も続くものと見られる。
この円安が家計に与える影響を想定するため、総務省の産業連関表を使い、円がドルに対し1年間を通じ150円で推移したケースについて、消費者物価の想定される変化を機械的に計算、2021年の家計調査における消費支出へのインパクトを所得5分位に従って推計した(図表1)。結果は、消費者物価が1.96%押し上げられ、消費支出は世帯平均で年間9万7千円の負担増になる。
所得5分位のうち、消費支出の絶対額が多い第5分位(平均所得額1,150万円)が、当然ながら負担増加額は13万円と最も大きな影響になった。ただし、年間所得に対する支出増加の率に関しては、所得の低い第1分位(平均所得額200万円)の世帯が3.4%になり、第5分位の1.1%、平均の1.5%と比べ高い。つまり、円安による物価上昇の影響は、所得に対して逆進性が強いわけだ。緊急避難的な政策としては、低所得世帯を主たる対象に据えざるを得ないだろう。
緊急避難かばら撒きか:決めるのは総合経済対策の中身
岸田内閣は、9月9日、『物価・賃金・生活総合対策本部』において、物価上昇に対する追加対策として、ガソリン全国平均価格への激変緩和のための補助金、輸入小麦政府売り渡し価格の据え置きなどと共に、住民税非課税世帯へ5万円の「臨時特別給付金」の支給を決めた。財源には2022年度予算の一般会計予備費が充てられる。
ちなみに、住民税非課税世帯は、東京都23区の場合、1)生活保護受給世帯、2)年間所得が「35万円+35万円×扶養親族+21万円」以下の世帯、3)障害者、未成年、寡婦(夫)に相当し、年収204万4千円(課税所得125万円)以下の世帯・・・の何れかに該当する世帯だ。家計調査の所得5分位では、第1分位に属する世帯と見られ、総数は全国で1,600万、その多くが高齢者やシングルマザー世帯だろう。円安のインパクトを受け易いだけに、ばら撒きと批判の多い新たな給付金だが、理に適っていないわけではない。
ただし、給付金はあくまで鎮痛剤であって、根本的な治療への準備として位置付けることが必要だ。日本の平均的な所得水準が低いのは、労働生産性の低さによって説明される(図表2)。これだと企業が賃上げをできない上、円安下でも日本国内での生産拠点増強ができず、輸出の拡大も難しい。
岸田内閣は10月中に新たな総合経済対策をまとめる予定だ。賃金を底上げするためには、雇用制度を改革し、労働移動を促進する処方箋が必要だろう。臨時特別給付金は総額8千億円程度。それが生きたお金になるのか、ばら撒きになるのかは、総合経済対策の具体策に懸かっている。
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