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加速する米国経済の再開 回復は「モノ消費」から「コト消費」へ
田中 純平
2021/06/14

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概要

新型コロナワクチンの接種が進む米国では経済再開が加速している。直接給付金によって蓄積した過剰貯蓄の取り崩しや、経済正常化に伴う消費機会の拡大によって、米国の小売売上高はすでにコロナ前の水準を大きく上回っている。しかし、商品の所有によって価値を見出す「モノ消費」は回復する一方、体験や経験に価値を見出す「コト消費」の回復はまだ道半ばだ。



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ワクチン接種で加速する米国経済の再開

Our World in Dataの集計によれば、米国の新型コロナワクチンの接種回数は6月11日時点で人口100人当たり91.65回となっており、すでに「経済の正常化」が現実味を帯びてきている。その状況は、米国の小売売上高を見れば一目瞭然だ。今年4月の米国小売売上高(除く飲食サービス、自動車ディーラー、ガソリン、建設資材)は3,359億ドルとなり、コロナショック前の2020年3月の2,959億ドルを13.5%も上回っている(図表1)。特に増加率が高かった主な品目をみると、家具が2020年3月比で+49.8%、電気製品が同+37.4%、衣料品が同104.4%だった。

米国では個人に対して多額の給付金(注:所得制限あり)が付与されたことも大きい。新型コロナ対策として、トランプ政権下では2020年3月に1人当たり1,200ドル、2020年12月に同600ドル、そしてバイデン政権下では今年3月に同1,400ドルが付与されることが決まり、合計額は単純計算で3,200ドルにもなる。この一部が過剰貯蓄として積みあがっていたことを考慮すれば、足元の好調な消費は貯蓄の取り崩し分も含まれている可能性が高い。

今後は「モノ消費」から「コト消費」へ拡大か?

前述した家具や電気製品、衣料品などの商品の所有に価値を見出す「モノ消費」は好調に推移する半面、所有では得られない体験や経験に価値を見出す「コト消費」の回復はまだ道半ばだ。

米国の空港利用者数を見ると、徐々に回復している様子がうかがえるが、コロナ前の1日当たり200万~250万人の水準には達していないことが分かる(図表2)。

また、世界各国で「マリオット」や「ザ・リッツ・カールトン」などのブランド名でホテルを運営・フランチャイズ展開するマリオット・インターナショナルの北米ホテル稼働率をみても、2021年1-3月期は27.9%とコロナ前の2020年1-3月期の55.9%に程遠いことが確認できる(図表3)。

しかし、人と接する機会が多い「コト消費」の回復も時間の問題と言えるだろう。空港利用者数の改善が示すとおり、回復基調に変化は無い。ワクチン接種が進み、新型コロナ感染に対する警戒感が徐々に後退すれば、いよいよ「コト消費」も正常化に向かう可能性がある。

個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


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田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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