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- 地球温暖化とインフレ
温室効果ガス排出削減の動きが加速するなか、欧州の排出枠取引価格が急騰している。一方、長期的な需要減少の見通しから設備投資が抑制され、原油、天然ガスの国際市況は上昇基調だ。エネルギーの転換には長い時間を要するため、当面、供給のボトルネックが価格の押し上げ要因となる可能性が強い。世界はインフレ期の入り口にいるのではないか。
欧州の事情:排出枠、天然ガスの価格が急上昇
EUの温室効果ガス排出枠取引市場であるEU-ETSでは、価格が史上最高値圏にある(図表1)。2021年から始まった温室効果ガス抑制の「フェーズ4」において、当初、EUは2030年までの削減目標を1990年比で40%削減としていた。しかし、昨年12月11日、ブリュッセルで行われたEU首脳会議において、このターゲットを1990年比55%削減に引き上げたのである。その結果、目標未達企業の排出枠調達が相次ぐとの見方から価格が急騰した。
一方、欧州では天然ガス価格も大きく上昇している。ドイツは2022年中に原子力発電を停止、2038年には石炭・褐炭の使用を止めると表明している。同国の2021年における再生可能エネルギーの発電比率は50%程度に達すると見られるものの、全ての需要を賄えるわけではない。畢竟、天然ガスへの依存度は高まらざるを得ず、その見通しが価格に反映されつつあるのではないか。
供給のボトルネック:価格上昇の構造的要因へ
国際エネルギー市場では、原油価格が上昇基調にあり、7年ぶりの高値圏を推移している(図表2)。需要面での要因は、主要国において新型コロナ禍が収束に向かいつつあり、消費が回復基調にあることだろう。
もっとも、供給面での理由がより大きいのではないか。地球温暖化抑止への取り組みが市場における企業評価に影響を及ぼすなか、化石燃料の使用は長期的に先細りとなることが予想される。当然、産油国、事業者は生産量維持への設備投資を躊躇わざるを得ない。それを象徴するのは、世界最大の産油国になった米国で稼働中の石油リグ数だ。原油価格の上昇にも関わらず、伸び悩みの状態を続けている。
1970年代の第1次、第2次石油危機以降、米国はサウジアラビア、UAEなどOPEC内における有力な穏健産油国との関係再構築に努め、1990年代初頭の湾岸戦争当時にはサウジアラビアが大幅な増産を行って原油価格の上昇を抑え込んだ。しかし、シェール革命により米国のスタンスは激変、今や中東への興味を失ったようだ。力の空白が生じるなか、OPEC主要国は同じ資源国であるロシアとの協調路線により、脱化石燃料化が進むまで高値を維持する意向だろう。石油、天然ガス共にロシアの動きが目立つのは、唯一の覇権国である米国主導のグローバリゼーションが終わり、国際社会で分断の時代が始まったことを示す現象と言えるかもしれない。
異常気象による天然災害は世界規模で起こっており、地球温暖化抑止を加速させる必要がある。一方、供給のボトルネックは価格に反映されざるを得ない。同様のケースは様々な資源や半導体など供給力に限界のある分野で目立つようになった。資源価格の上昇は、新型コロナ禍から世界経済が正常化する過程の一時的なものではなく、より構造的な動きの予兆なのではないか。
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