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5月FOMCで抑えたいポイント
梅澤 利文
2022/04/27

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概要

米国のインフレ率はピークに近づいていると見られるものの、明確な低下は先の話しと思われます。そうした中、5月のFOMCでは0.25%ではなく、0.50%の利上げが想定されています。またその後の利上げペースには多くの検討課題が残されています。FRBの保有資産縮小について5月のFOMCで開始時期がアナウンスされる見込みですが、こちらも注目ポイントが多く見られます。



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5月FOMC:利上げペースと、保有資産縮小の開始時期などが注目されると見る

米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年5月3日~4日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する予定です。

FOMC参加者の最近の発言や(図表1参照)、前回FOMC(3月15日~16日)の議事要旨の内容などから判断して、今回のFOMCで注目を集めそうなポイントとして

①利上げ幅を0.5%とするのか、政策金利の最終的水準

②FRB保有資産縮小(QT)開始時期とその後の方針

などがあげられます。

5月のFOMCでは利上げペースと、FRBの保有資産縮小開始時期とMBS削減方法に注目

まず、5月のFOMCで想定される政策金利の検討事項を最近のFOMC参加者の発言などをもとに振り返ります。想定されるのは今後数回、例えば5月、6月、可能性として7月頃までは0.5%の利上げ、以降今年の残りのFOMCでは0.25%の利上げとすることが検討されそうです。シカゴ連銀総裁などの発言がこの点を指摘しています。

なお、年内のFOMCは5月を含め6回開催されます。上で述べたペースでの利上げを想定すれば、年末時点で多くのFOMC参加者が中立と見なす金利水準(2.25%~2.50%)に到達することが予想されます。

なお市場予想を見ると、ブラックアウト期間(FOMC参加者の発言停止期間、4月23日から)直前の討論会でパウエル議長が0.5%という具体的な数字に言及したこともあり、5月の利上げは0.5%が見込まれています。しかし市場は6月や7月についてはエネルギー価格動向などを受け0.75%の利上げを想定する声が増えています。ただFOMC参加者の中で0.75%の利上げ支持は少数派です。通常金融引締めを選好する傾向のメスター総裁でも0.75%の利上げに否定的です。5月のFOMCでは利上げ幅拡大の議論の内容が注目です。

次に、FRBの保有資産縮小、QTについてです。今回、QT開始に言及するとの見方が大半です。バランスシートの縮小は月次で上限950億ドル(米国債650億ドル/住宅ローン担保証券(MBS)350億ドル)とすることが議事要旨などからうかがえます。もっとも縮小開始当初はスムーズにQTを導入するため、より低い上限、例えば米国債を150億ドル、MBSを100億ドルとし、徐々に上限を950億ドルに引き上げる方針と見られます。

QTについてはMBSの売却方針に不透明なところが残されており、5月のFOMCでの注目点のひとつと見ています。QTは債券の償還で、いわば自然に保有債券が縮小するのが基本方針ですが、MBSについては将来的に売却の可能性が示唆されています。米国住宅市場の着工などはピークを過ぎたようですが、住宅価格は依然高水準で、当局はMBS購入による支援を早く終わらせたい意向があるのかもしれません。

別の要因として、MBSは金融政策ツールとして使いにくい面が見られます。FRBは金利を引き上げていますが、MBSは金利上昇局面では期限前償還が減少する不都合な傾向があります。そのため、MBS償還による削減が進まない場合、売却が求められます。ただ、QTにおける債券売却は例外的な手法であるため市場が過剰反応をする懸念もあります。そのショックを和らげるため同時に国債を購入しバランスシートの構成を変更しながら削減を進めることなどが考えられます。このようなMBSの課題に言及があるかにも注目しています。


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梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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