- Article Title
- 次のステージへ移行する米国のインフレ
5月3、4日のFOMCでFRBは50bpの利上げと6月からの量的縮小を決めた。ジョー・バイデン大統領が内政での最重要課題を「インフレ抑制」とするなか、金融政策はその中心的な役割を担うだろう。4月の消費者物価は上昇率がやや低下したものの、資源主導型からより広範な物価上昇への転換が示唆されている。FRBによる金融引き締めは長期化する可能性が強い。
米国の物価動向:資源主導型からの転換
4月の米国消費者物価は、総合指数が前年同月比8.3%(3月:8.5%)、コア指数が6.2%(同:6.5%)の上昇であり、3月より若干ながら伸びが鈍った。ただし、家賃を除くサービスが同5.6%、家賃が同5.1%値上がりしており、物価上昇は資源主導型から広がりを見せつつある(図表1)。
サービス価格や家賃が上昇する背景には、雇用環境の変化があるのではないか。
新型コロナウィルス感染第1波に見舞われた2020年3月から6月にかけ、米国では労働力人口の11.3%に相当する1,837万人が職を失った。しかしながら、リモートワークの急速な普及、宅配サービスの拡大、ワクチンの開発・接種などにより、米国経済は急速に回復、凹凸を均せば2000年代に入ってからの成長トレンドへ戻っている。その結果、むしろ足下の問題は人手不足に他ならない。
5月3日に米国労働省が発表した3月の産業別求人数は過去最多の1,155万人だった。一方、4月の失業者(≒求職者)は594万人なので、求人と求職者の間には労働力人口の3.4%に相当する561万人のギャップが存在する(図表2)。足下、米国の労働市場は完全な売り手優位だ。3月は自発的離職者が454万人を記録しが、離職しても直ぐ次が見つかる環境であり、より有利な雇用条件を求め、労働力の流動化が加速していると見て間違いないだろう。
FRBの金融政策:引き締め局面が長引く可能性
労働市場が逼迫、賃金が上昇局面にあれば、より良い住環境を求める動きが強まるため、家賃の上昇は避けられないだろう。また、サービスは労務費のウェートが高いため、米国においては賃上げ分が価格転嫁され易い。その結果、物価上昇率と賃上げ率がスパイラル的に高止まり、米国経済のインフレ傾向は新たな局面を迎えている。消費者物価上昇率が低下したとしても、1990~2019年の平均である2.4%よりはかなり高い状態が続くのではないか。
5月10日、民主党全国委員会資金調達会合で挨拶したバイデン大統領は、内政問題に関して「インフレの抑制が最大の課題」と語った。完全雇用の達成と物価の安定を「デュアルマンデート」とするFRBは、少なくとも雇用に偏重の兆しが現れるまで、物価の安定に注力することになるだろう。
インフレ連動債と10年国債の利回りから算出した市場が織り込む物価上昇率は、4月21日に3.04%まで上昇したが、足下は2.9%前後で推移している。1991年の旧ソ連崩壊以降、30年間に亘って物価安定の時代が続いてきたことから、マーケットはまだインフレの持続力には懐疑的のようだ。
しかしながら、国際情勢、米国の雇用市場を考えると、物価上昇率の高止まり状態は続くのではないか。畢竟、FRBの金融引き締めも長期化することが予想される。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。
手数料およびリスクについてはこちら
ディープ・インサイトの記事一覧
| 日付 | タイトル | タグ |
|---|---|---|
|
日付
2026/04/14
|
タイトル 中東混迷下での金の考え方 | タグ |
|
日付
2026/04/08
|
タイトル 米国とイランは2週間の停戦合意 ここからの株式市場の展開は? | タグ |
|
日付
2026/04/07
|
タイトル トランプ大統領の誤算がもたらすインフレ圧力 | タグ |
|
日付
2026/03/31
|
タイトル 中東危機下における米国経済 | タグ |
|
日付
2026/03/26
|
タイトル 忍び寄るプライベートクレジットのリスクとその正体 | タグ |
|
日付
2026/03/24
|
タイトル 中東情勢次第となった米国の金融政策 | タグ |
|
日付
2026/03/17
|
タイトル ホルムズ海峡封鎖の長期化観測 カーグ島の米地上部隊派遣は「最悪のシナリオ」か? | タグ |
|
日付
2026/03/17
|
タイトル 高市外交の真価を問われる訪米 | タグ |
|
日付
2026/03/10
|
タイトル イラン攻撃:時間が決める勝敗 | タグ |
|
日付
2026/03/03
|
タイトル 米国によるイラン攻撃の行方 | タグ |