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- エネルギー自給率から見た為替相場
カンザスシティ連銀の年次シンポジウム(ジャクソンホール会議)におけるジェローム・パウエルFRB議長の講演を契機に、ドルが改めて上昇している。金利差は為替相場を決めるファンダメンタルズ上の極めて重要な要因だ。もっとも、国際社会の分断が加速するなか、エネルギーも為替の変動要因になったのではないか。日本の低い自給率は、円安の背景の1つと言えそうだ。
化石燃料の輸入急拡大:原因は量の増加ではなく単価の上昇
今年1~7月期における原油、LNG、石炭の輸入額は15兆720億円であり、前年同期の6兆7,177億円から2.2倍になった。この間、総輸入額は18兆895億円増加したのだが、そのうちの46.2%は化石燃料3種が要因だ。結果として、今年に入っての貿易収支は9兆3,832億円の赤字であり、前年の1兆2,417億円の黒字から10兆6,249億円悪化した。
化石燃料の内訳を見ると、LNGは輸入量が前年同期比3.1%減少したものの、輸入額は98.9%増だ(図表1)。また、石油は輸入量が前年同期比11.5%の増加に対し、輸入額は106.5%増加している。さらに、石炭は輸入量が3.0%増、輸入額は223.5%増だった。
それぞれの単価を計算すると、LNGは105.9%、原油は85.3%、石炭は214.8%、前年同期比でそれぞれ上昇している。化石燃料はドル建てにより取引されるが、円/ドルの平均レートは今年1~7月期が125円04銭、昨年同期は108円12銭だった。ドルベースでの価格上昇に加え、13.5%の円安が輸入単価をさらに押し上げたことは間違いない。
エネルギー自給率:低い国・地域の通貨は弱い
化石燃料価格の上昇が一段落すれば、物価に与える影響は時間の経過と共に中立的になって行くだろう。しかしながら、貿易収支の赤字化は維持されることになる。その結果、エネルギー自給率の脆弱性が、実は為替レートにも影響を及ぼしている可能性は否定できない。
ロシアがウクライナに侵攻した2月24日を起点に、ドルをベンチマークとして主要国・地域通貨の変動率とエネルギー自給率との関係を見ると、統計的に概ね正の相関が示された(図表2)。例えば、エネルギー自給率が100%を超えているオーストラリア、カナダ、ブラジルは、通貨の対ドル下落率が相対的に小さい。エネルギー自給率727%で図表2に収まらないノルウェーの場合、クローネは対ドルで9.6%上昇した。
一方、円、そしてユーロが対ドルで大きく売られている背景として、FRBによる積極的な利上げが影響していることに疑問の余地はない。特に円の場合、日銀はゼロ金利政策の下でイールドカーブ・コントロールを継続しており、FRBに対する真逆の金融政策が円安の最大の理由と考えられる。
ただし、世界が新たな分断の時代に入るなか、エネルギー安全保障面での脆弱性も、円の弱さの背景ではないか。これは、ロシアに天然ガス調達の約4割を依存してきたEUにも言えることだ。化石燃料輸入額の急増による貿易収支の悪化が、円安、ユーロ安の一因になっているのだろう。
岸田文雄首相は、次世代原子炉の開発、新設を検討する方針を公にした。ただし、既存の原子力発電所の再稼働もまだ進んでおらず、原子力活用のハードルは依然高い。エネルギー自給率の低さは、今後も為替相場に影響を及ぼすことが見込まれ、これも円安傾向が続くと考える重要な要因だ。
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