■ 8月の投資環境

8月の世界株式市場は、MSCI世界株価指数（現地通貨ベース）で上昇しました。

世界の株式市場は、7月の米雇用統計が市場予想を下回り、米国の労働市場に対する懸念が高まったことなどから下落しましたが、その後は、米国の利下げ期待の高まりや堅調な企業業績などを背景に上昇基調となりました。月半ばに8月の米ミシガン大学消費者マインド指数が予想外に低下する中、それまで堅調に推移していたハイテク銘柄を中心に下落する局面もありました。しかしその後は、パウエル米連邦準備制度理事会（FRB）議長の講演内容がハト派的に受け止められたことなどを受けて再び上昇基調となり、月間でも上昇となりました。

業種別では、コミュニケーション・サービス、素材、一般消費財・サービスなどが相対的に大きく上昇しました。一方、公益事業は下落、資本財・サービスや不動産なども相対的に小幅な上昇にとどまりました。

水関連企業（現地通貨ベース）の株価は上昇しました。装置製造・エンジニアリングセクターと上下水道ビジネスセクターが堅調となった一方、環境マネジメント・サービスセクターは軟調となりました。

装置製造・エンジニアリングセクターは全般に堅調となりました。ザイレムは、4-6月期の決算で、株式市場の予想を上回る増収を示したことなどから株価が大きく上昇しました。また、値上げや構造改革の進捗などを背景に、4-6月期の決算内容が良好だったペンテアの株価も大きく上昇しました。

上下水道ビジネスセクターでは、サンパウロ州基礎衛生公社のプラス寄与が大きくなりました。4-6月期の決算で、株式市場の想定以上にオペレーション効率が改善していることが確認され、株価が大きく上昇しました。

環境マネジメント・サービスセクターでは、廃棄物処理関連の銘柄が軟調となりました。廃棄物処理関連は、4-6月期の決算発表において複数の銘柄が、建設活動が弱含んでいることなどを背景に、年間の売上高見通しを下方修正したことから全般に軟調な株価推移となりました。

■ 今後の見通し

トランプ関税に関する協議に進展がみられたことで世界経済の不確実性は一定程度後退したものの、景気の減速とインフレに対する懸念は依然としてくすぶっています。世界の多くの地域で消費者は慎重で、裁量的な支出を控えています。一方で、米国や中国の製造業PMIは依然として低調なものの、欧州では2023年の低い水準から徐々に改善しています。2025年の住宅建設の見通しは、高金利を背景に抑えられたものになると予想していますが、長期的には供給不足を反映して米国および欧州において需要が回復していくでしょう。

水関連の企業については、米国の財政プログラムに基づく受注が増加し始めており、これが米国に拠点を置く地方自治体のインフラ関連企業や、多角経営産業、コンサルティング企業の収益を支えると予想しています。また、廃棄物処理と上下水道関連の企業は、引き続きインフレ連動型の価格設定が高い利益率を支えると見込んでいます。装置製造・エンジニアリングの企業については、短期的には調達コストの増加や顧客の設備投資計画の見直しなどを通じて、各国の通商政策の影響が相対的に大きくなることが見込まれるため、引き続き動向を注視していきます。

水関連インフラへの投資は必要不可欠であり、中長期的に見ると、世界的に事業展開を行う水関連柄のファンダメンタルズは堅調であると考えます。温暖化の影響から世界的な気候変動によって引き起こされる干ばつや洪水の問題なども、水関連インフラへの投資を呼び起こしています。中長期的に水関連銘柄は引き続き魅力的な投資対象であると考えます。