■ 10月の投資環境

10月の世界株式市場は、MSCI世界株価指数（現地通貨ベース）で上昇しました。

世界の株式市場は、上旬は、米国の政府機関閉鎖などが懸念材料となりながらも、堅調な企業業績や米国の利下げ観測などを背景に、上昇基調となりました。その後、トランプ米大統領が中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げると警告したことを受けて、一時、株式市場は大きく下落しましたが、中旬以降は、AI（人工知能）関連の大型投資案件の発表を受けて、テクノロジー銘柄を中心に世界の株式市場は上昇基調が継続しました。また下旬に米中貿易合意への期待が高まったことなども株価の上昇要因となりました。月を通じても、世界の株式市場は上昇しました。

業種別では、情報技術、ヘルスケア、公益事業などが相対的に大きく上昇した一方、不動産、金融、一般消費財・サービスなどは下落しました。

水関連企業（現地通貨ベース）の株価は上昇しました。環境マネジメント・サービスセクターが軟調となった一方、装置製造・エンジニアリングセクターおよび上下水道ビジネスセクターが堅調となりました。

装置製造・エンジニアリングセクターでは、主にモニタリング関連が堅調となり、全体をけん引しました。9月末以降、モニタリング関連の銘柄の主要顧客である製薬会社の一部が、米国政府との間で米国内での薬価引き下げに同意し、3年間の関税猶予を得たことなどを受けて、製薬業界を取り巻く不透明感が後退したことが、サーモフィッシャーサイエンティフィックやアジレント・テクノロジーの株価を押し上げる材料となりました。また、9月中旬に発表した決算の内容が良好だったファーガソン・エンタープライゼズの株価は、10月に入ってからも堅調に推移しました。上下水道ビジネスセクターでは、インフレ圧力の緩和などを背景に金利が低下したことが追い風となり、英国の水道事業者の株価が堅調となりました。

一方、環境マネジメント・サービスセクターでは、コンサルティング関連が比較的堅調となったものの、廃棄物処理関連は10月末の7-9月期決算発表において一部の銘柄が年間売上高見通しを下方修正した影響などから全般に軟調となりました。

■ 今後の見通し

トランプ関税に関する協議に進展がみられたことで世界経済の不確実性は一定程度後退したものの、景気の減速とインフレに対する懸念は依然としてくすぶっています。世界の多くの地域で消費者は慎重で、裁量的な支出を控えています。一方で、米国や中国の製造業購買担当者景気指数（PMI）は依然として低調なものの、欧州では2023年の低い水準から徐々に改善しています。2025年の住宅建設の見通しは、高金利を背景に抑えられたものになると予想していますが、長期的には供給不足を反映して米国および欧州において需要が回復していくでしょう。

水関連の企業については、米国の財政プログラムに基づく受注が増加し始めており、これが米国に拠点を置く地方自治体のインフラ関連企業や、多角経営産業、コンサルティング企業の収益を支えると予想しています。また、廃棄物処理と上下水道関連の企業は、引き続きインフレ連動型の価格設定が高い利益率を支えると見込んでいます。装置製造・エンジニアリングの企業については、短期的には調達コストの増加や顧客の設備投資計画の見直しなどを通じて、各国の通商政策の影響が相対的に大きくなることが見込まれるため、引き続き動向を注視していきます。

水関連インフラへの投資は必要不可欠であり、中長期的に見ると、世界的に事業展開を行う水関連銘柄のファンダメンタルズ（基礎的条件）は堅調であると考えます。温暖化の影響から世界的な気候変動によって引き起こされる干ばつや洪水の問題なども、水関連インフラへの投資を呼び起こしています。中長期的に水関連銘柄は引き続き魅力的な投資対象であると考えます。