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- 金需要を後押しする中央銀行の積極的な金購入
・中央銀行による金需要は2023年1-3月期に前年同期比で約176%増加
・新興国を中心に中央銀行の金需要は底堅い推移が予想される
・金融不安や景気後退懸念などを背景に足元では投資対象としての金需要も増加傾向
中央銀行による金需要は2023年1-3月期に前年同期比で約176%増加
金価格の変動要因は景気やインフレ、金利動向など多岐にわたりますが、商品(コモディティ)としての側面からは需要と供給が価格に影響し、需要超過であれば価格の上昇要因、供給過剰であれば下落要因となるといえます。なお、金に対する需要は宝飾品とテクノロジー(電子部品などの工業用品)、投資および中央銀行に代表される公的部門注1(以下、中央銀行)に大きく分けられます(図表1参照)。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した四半期ごとの需要レポートでは、2023年1-3月期の金の総需要の内訳において、中央銀行による金購入が前年同期比約176%増の228.4トンに達したことが示されました(図表2参照)。
新興国を中心に中央銀行の金需要は底堅い推移が予想される
中央銀行による金需要は2022年以降、インフレ圧力やロシアのウクライナ侵攻による地政学的な不確実性の高まりなどを背景に新興国を中心に大きく増加しました。2023年1-3月期の中央銀行の金需要は2022年後半の水準を下回りましたが、過去との比較では依然として高い水準となっています(図表3参照)。世界の主要な中央銀行を対象とした調査注3では、金を保有する理由として危機下における価値の安定性に対する期待や通貨分散の手段として評価する傾向が強いことが示されています。また、米ドルを基軸通貨とした国際通貨システムの変化を受けて、米ドルへの依存度を下げたいという一部の新興国の思惑なども金需要の増加につながっていると考えられます。米中の対立など地政学的な不確実性が高まる中で、外貨準備を多様化させる動きなどが構造的な要因となり、中央銀行の金需要は今後も底堅く推移する可能性があると考えられます。
注3 WGCによる2022年の年次中央銀行調査
一方で、中央銀行以外の金需要の項目を見ると、現物の金を裏付け資産とする金ETFからの資金流出などを背景に、投資対象としての金の需要が低下しました。金は金利が付かない資産であるため、世界的な金利上昇に伴い金の相対的な魅力度が低下したことなどから、2022年4-6月期以降は金ETFからの資金流出超の傾向が続いています(図表4参照)。
金融不安などを背景に足元では投資対象としての金需要も増加傾向
しかし、金ETFの月次需要動向をみると、2023年3月以降は金ETFへの資金流入に伴い、投資対象としての金需要が増加に転じていることが示されています(図表5参照)。金は実物資産としてそのもの自体に価値を持ち、株式や債券のように発行体の信用リスクがないことから、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻のように地政学リスクが高まる局面などで資金の逃避先としての需要が高まる傾向があります。2023年3月以降については、米国の地銀の破綻を契機とする金融不安の高まりや景気後退への懸念などを背景に、投資対象としての金の需要が増加していると考えられます。
その他の主要な金需要の項目である宝飾品とテクノロジーについては、短期的には需要の高い伸びが期待できない状況にあると考えられます。宝飾品需要については物価や金価格の上昇に伴う宝飾品価格の上昇から買い控えの動きが見込まれることに加え、コロナショック後の経済再開後は旅行などレジャー消費が優先される傾向にあることなどが要因です。テクノロジーについても、コロナショックに伴う特需の剥落などが需要を抑制する要因になると考えられます。そのため、総合的な金需要の動向は力強さに欠く可能性がありますが、米国の連邦債務上限を巡る懸念といった短期的な要因も含めて地政学的な不確実性などを背景に中央銀行や投資需要の増加が見込まれることは、金価格を下支えする要因になると期待されます。
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