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金投資における為替ヘッジの要否を考える
2023/04/20

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概要

・金は米ドル建てで取引されるため、円からの投資には米ドル・円の為替変動リスクが伴う
・為替ヘッジの要否は為替ヘッジコストの水準だけで判断するべきではない
・為替の変動による分散投資効果の低下を抑えるには為替ヘッジの活用も選択肢に



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■  為替変動リスクを伴う金への投資

金の価格は1トロイオンス(約31.1グラム)あたりの米ドル建てで表されます。そのため、金に投資を行う際には米ドル建ての金の価格変動リスクに加えて米ドル・円の為替変動リスクにも留意する必要があります。

ピクテ・ゴールド(以下、当ファンド)は、投資先ファンド※1への投資を通じて、米ドル建ての金価格※2の値動きを概ねとらえることを目指す運用を行っているため、米ドル・円の為替レートの変動が基準価額に影響を及ぼします。当ファンドは「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」の2ファンドからお選びいただけますが、以下では、それぞれの特徴を概観したのち、金投資における為替変動リスクと為替ヘッジの考え方について確認します。

※1 ピクテ(CH)プレシャス・メタル・ファンド-フィジカル・ゴールド(スイス籍)やETF
※2 ロンドン貴金属市場協会(LBMA)のロンドン時間午後3時の金価格(米ドル建て)

■  為替ヘッジとは

ヘッジとはリスクを回避するために行う行動で、為替ヘッジは外貨建て資産に投資する際の為替の変動による影響を抑えるために行う手段となります※3。また、為替ヘッジを行うに際には為替ヘッジ「コスト」の支払い、もしくは為替ヘッジ「プレミアム」の受け取りが生じます(図表3参照)。

為替ヘッジを行う際には、通常、為替予約が用いられます。為替予約は、取引相手との間であらかじめ将来のある時点における交換レートを取り決めるものですが、その際の通貨間の短期金利差が為替ヘッジコストの主な決定要素となります※4。例えば、米ドル・円の変動リスクをヘッジする際、足元の環境のように円の短期金利が米ドルの短期金利よりも低い場合には取引相手に対して金利差分を負担する形になるため、為替ヘッジ「コスト」が生じます。一方、円の短期金利が米ドルの短期金利よりも高い場合には、取引相手から金利差分を受け取る形になるため、為替ヘッジ「プレミアム」となります。

足元では、日米の政策金利差の拡大に伴って短期金利差も拡大していることから、米ドル・円の為替ヘッジを行うには為替ヘッジコストがかかる状況にあります(図表4参照) 。

※3 為替ヘッジは為替変動の影響を完全に排除できるものではなく、為替ヘッジ後の金価格は為替変動の影響を受ける場合があります。
※4 通貨間の短期金利差のほか、需給要因も影響します。ベーシススワップと呼ばれる通貨を調達する際に必要となる上乗せ金利がこれに相当し、各通貨の需給に応じて変動します。

■  為替ヘッジの要否についての考え方

足元の米ドル・円の為替ヘッジコストは5.3%となっています(年率、2023年4月14日現在)。この水準は過去と比較して高い水準にあるといえますが、為替ヘッジコストは将来の不確実性に備えるための費用であるといえ、過去の水準との比較などから単純に割高であるという評価ができるものではありません。

為替は比較的変動が大きく、ファンダメンタルズ(基礎的条件)から大きく乖離することもあります。1990年以降の米ドル・円の為替レートの年間騰落率の推移を見ると、最大で±20%程度の変動があることがわかります(図表5参照)。足元の為替ヘッジコストの水準を踏まえて、金価格と米ドル・円の為替レートがそれぞれ上昇/下落した場合に分けて金投資のリターンの試算を行ったところ、図表6の①で示されるように金価格が上昇し、米ドル高・円安となった場合には為替ヘッジなしが優位となりますが、図表6の②で示されるように金価格が下落し、米ドル安・円高になる局面においては、為替変動のマイナスの影響を抑制する効果から為替ヘッジが優位となることがわかります。



また、金は商品(コモディティ)としての側面だけでなく、通貨としての側面を持つ資産であり、基軸通貨である米ドルの代替資産と見なされることがあるため、米ドルと逆の動きをする傾向があります。2023年3月以降の場面では、米国のインフレや金利見通しの変化などを背景とする米ドル安を受けて金価格が上昇しました(図表7参照)。金価格と米ドル・円の為替レートがそれぞれ上昇/下落した場合に分けた金投資のリターンの試算では、為替ヘッジなしの場合、金価格の上昇による基準価額へのプラスの効果が米ドル安・円高によるマイナスの効果によって押し下げられることがわかります(図表8の③参照) 。

このように、金投資における為替ヘッジの活用の要否は、為替ヘッジコストの水準のみによって判断すべきものではなく、米ドル・円の為替レートの変動の大きさや見通しなどを踏まえた判断が重要であるといえます。また、金と他の資産を組み合わせた場合の分散投資効果など、金投資に期待する役割も為替ヘッジの活用の要否を考えるうえでは重要な判断材料です。


■  分散投資効果に及ぼす為替の影響

例えば、投資ポートフォリオの分散投資効果を高めることを目的に金投資を行う場合について考えてみます。金の価格は株式などの主要な資産の価格とは異なる値動きをする傾向があるため、米国株式などとの持ち合わせを行うことで、投資ポートフォリオ全体の値動きを安定させる分散投資効果が期待されます。過去20年間の金と米国の主要な資産の値動きを米ドル建てで見てみると、図表9の左側に示されているように、金と米国株式は相関係数が0.02と低相関の関係にありました。資産間の相関が逆相関(マイナス)の場合はそれぞれの資産が逆の動きをする傾向があること、相関が低い(ゼロに近い)場合は価格の動きに関連性が小さいことを意味します。このことから、金と米国株式は、分散効果が期待できる可能性のある組み合わせといえます。

しかし、円からの外貨建て資産への投資を想定した場合、円と外貨の為替レートの変動の影響により、分散投資効果が低下する可能性があることに留意が必要です。図表9の右側には、同期間の金と米国の主要な資産の値動きについて、米ドル・円の為替レートの変動を考慮した円換算後の相関係数を示しています。円換算後では、金と米国株式の相関係数が0.22と米ドル建ての相関係数と比較して高まっていることがわかります。依然としてある程度の分散投資効果が見込まれる低相関の関係にあるといえますが、米ドル・円の為替レートの変動が相対的に大きくなる場面においては、円換算後の両資産の連動性が高まることで分散投資効果が低下する可能性があります。そのため、投資ポートフォリオの分散投資効果を高め、中長期的に安定的な値動きを目指すために金投資を行う場合においては、為替ヘッジの活用が有効であると考えられます。


金投資において為替ヘッジを活用することは、2022年のように米ドル高・円安が進行する局面においては、為替差益を得る機会を逃すことに加えて、為替ヘッジコストの負担が投資のリターンを低下させる要因となります。

一方で、米ドル安・円高が進行する局面での為替差損の抑制や、金と他の資産を組み合わせた分散投資ポートフォリオ運用において安定的な値動きを目指す場合においては為替ヘッジの活用は有効な手段であると考えられるため、為替ヘッジコストの水準のみを判断基準として選択肢から排除されるべきものではないといえます。



●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した販売用資料であり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。取得の申込みにあたっては、販売会社よりお渡しする最新の投資信託説明書(交付目論見書)等の内容を必ずご確認の上、ご自身でご判断ください。
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