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- ピクテのインド株式運用チームが体感、インドの「今」 2025
●当ファンドは、発展が期待できる産業において、誠実な経営陣によって経営されている優良企業の株式を厳選した上で投資を行う、アクティブ・ファンド。投資先企業の選定の過程では、現地インドでの企業訪問や人々との交流から得られる生の情報も重視。
●今年9月、ピクテのインド株式運用チームのリード・ポートフォリオ・マネージャー、プラシャント・コタリがインドを再訪。この訪問で得た知見の一部を彼の言葉で紹介します。
今回のインド訪問では、北部の活気ある首都デリーから、南部の海岸都市チェンナイ、そしてIT産業の中心地ベンガルールを巡り、政策立案者や企業の経営陣との面談をはじめ、多くの現地の人々と対話し、実際に目で確かめることでしか得られないインドの「今」を知る貴重な機会となりました。
デリー、政治の首都|改革とチャンス
デリーでは、政策立案者やコンサルタントと面談する機会を得て、政策の風向きを探りました。米トランプ政権がインドに対して、懲罰的関税を課した後、インド政府は、この難局を乗り切るために、外交面では米国以外の国々との関係を深める一方、内政面では改革を加速させています。
2025年9月、物品・サービス税(GST)の税率の区分が簡素化され、さらに多くの品目で税率の引き下げが実施されました。これにより、減税による消費の促進や、税制簡素化によるコンプライアンス負担が軽減されるといった効果が期待されます。インド政府は規制緩和により、官僚的なプロセスを減らし、ビジネスのしやすさをよりいっそう向上させることに熱心に取り組む姿勢を示しています。米トランプ政権による関税やビザ政策などによるインド経済に対するマイナスの影響は、インド政府による経済成長を促すための各種政策によって吸収できるのではないかと考えられます。
チェンナイ、南部の大都市|保守的な街の、着実な変化
チェンナイへの訪問は、バナナの葉の上に朝食を提供するローカルな食堂から始まりました。インドの伝統は環境に優しいということを、改めて思い出すことのできるひと時となりました。
保守的な土地とみられることが多いチェンナイも、少しずつではありますが、着実に変化していることが感じられました。
ここでは、株式、不動産、金など資産価格の上昇によって、業績が好調な資産運用会社の経営陣と面談する機会があり、新たな発見がありました。それは、かつて、顧客である投資家は、運用会社ではなく、自分を担当するリレーションシップ・マネージャーに大きく依存する傾向が強くみられました。このため、優秀なリレーションシップ・マネージャーの獲得競争が激化してきました。しかし、今では、顧客は、担当のリレーションシップ・マネージャーよりも、運用会社自体に対してよりロイヤリティを高めているということです。こうした変化を理解することは、業界の勝者を見極めるカギにもなると考えられます。
また、当ファンドの2025年9月末時点の組入第8位のヒュンダイ・モーター・インディアの工場と販売店にも訪問しました。工場で印象的だったのは、大衆車の製造ラインでも、200台以上のロボットが稼働し、高級車の製造でみられる「マルチライン」(複数の異なる車種やモデルを同時にかつ柔軟に生産できる組み立てライン)を採用していたことです。これには、需要パターンが変化しても、生産は柔軟に対応できるという利点があります。また、「ヒュンダイ」のブランド力も優位性をもたらすと考えられます。インドの自動車普及率は、米国や日本などの主要国に比べると依然として低く、市場拡大余地は大きく残されていると考えられていますが、そのなかで、ブランド力のある同社の自動車は憧れの存在として人気を集めることが期待されます。足元で、ヒュンダイ・モーター・インディアは、インド国内に1,300以上の販売店網を有しています。
インドの総合情報通信技術(ICT)ソリューション・サービス・プロバイダーによって建設された130MWの容量を持つ南インド最大のAI(人工知能)データセンターにも訪問しました。興味深いことに、最初のテナントであるハイパースケーラー(膨大なサーバーリソースを保有し、クラウドサービスを提供する大手IT企業)は、インド国内のデータではなく、米国のデータのバックアップとしてこのデータセンターを利用しているということでした。こうしたことは、グローバルなテクノロジー・インフラにおいて、インドが果たす役割の高まりを示唆するものと考えられます。
ベンガルール、IT産業の中心地|ITだけではない、インド経済をけん引する産業都市
ベンガルールでは、インドの起業家精神を肌で感じることができました。ここでは、上場・非上場のスタートアップ企業の創業者やベンチャーキャピタル投資家と面談する機会を得ました。インド株式市場へのインド国内投資家からの堅調な資金流入動向から、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティの投資家は、スタートアップ企業への投資により自信を強めているようでした。
ベンガルールというと、まずはIT産業が思い浮かぶかもしれませんが、今では、超効率的なエアコンの開発からAIビジョンベースの不正検出まで、様々なスタートアップ企業も存在します。そうした企業の経営陣の多くが、AIをコーディングだけでなく、マーケティングにおいても活用していると話していました。
ちなみに、ある医薬品企業では、消費者向けに自社のヘルスケアブランドを宣伝するために、AIによって生成された女性モデルの画像を使用していました。
さらに、ベンガルールは、800以上の多国籍企業を擁するグローバル・ケイパビリティ・センター(GCC、多国籍企業のIT、R&D、人事、金融サービス、データ分析など幅広いサービスを担当)の中心地でもあります。
私がこの地に滞在中、ロールス・ロイス(英国)のインド国内最大の拠点となるGCCがオープンしました。同社はインドで航空・防衛分野で使われるエンジンなどの動力システムの開発を行っていますが、同施設は航空宇宙および先端工学の世界的な拠点として活用される予定です(ジェット・エンジンも英国の気まぐれな天気から離れる必要がある(?)のかもしれません)。
ダッソー・システムズ(フランス)の最高経営責任者(CEO)は、インドを「未来の工場」と宣言しています。また、イーライリリー(米国)は2025年10月初め、インドに10米億ドル(約1,500億円、1米ドル=150円で換算)超を投資し、委託生産拠点を新設する計画を明らかにしました。米国の新興AI企業であるアンソロピックも、ベンガルールにオフィスを開設しています。
ベンガルールは、インドの経済成長をけん引する産業都市として進化を遂げていることが確認できました。
インドの消費事情(1)|プレミアム志向の高まり ~成長市場における消費者のニーズの変化をみる~
家電製品のショールームに訪問し、インドの消費者トレンドを理解する機会もありました。大型の洗濯乾燥機や、モニターや気分に合わせて変化するライトを備えた冷蔵庫が、飛ぶように売れ、インドの消費者におけるプレミアム志向が、確実に高まっていることを実感しました。
インドの消費事情(2)|クイックコマース ~市場の拡大と競争が激化するなかでの勝者は?~
インドの消費行動の変化は、プレミアム志向の高まりだけではありません。クイックコマース(オンラインで注文した食品や日用品などを、最短数十分で即時配達する次世代型のECサービス)が、人々の買い物習慣を大きく変化させています。
昨年に続き今回も、クイックコマースの「ダークストア」(食料品、おもちゃ、本など様々な商品をおよそ20分以内に配達するための、住宅地にある小さな倉庫)を訪問しました。ダークストア型クイックコマースのビジネスモデルは急速に拡大しており、一部のクイックコマース事業者は、より幅広い製品を提供するための「メガポッド」(大型の倉庫型ダークストア)も構築しつつあり、アマゾン・ドットコム(米国)のような巨大企業に挑戦しています。
また、投資家の観点からは、クイックコマースの収益性は高いのか?ということも気になるところです。エターナル(当ファンドの2025年9月末時点の組入第2位)が運営するクイックコマースのブリンキットは、コスト効率が良いプレーヤーになっています。ブリンキットは、優れたコスト管理能力と顧客を第一に考える経営姿勢などにより、競争激化が懸念されるクイックコマース市場において、今後も優位性を発揮し、同市場のリーディング・カンパニーとして成長を続けることが期待されます。同市場における競争は、2位の座を巡るものになるかもしれません。
最後に|なによりも重要なのは「人」 ~有望な投資先企業の厳選に向けて~
インドに訪れる度に、ビジネスとは、顔のない企業によって行われる単純な数字のゲームではない、ということを思い出させてくれます。重要なのは、「人」をみることなのだと思います。製品を作る人、販売する人、消費する人・・・それぞれが実現したいと願う夢を追及しています(時にそれは、気分に合わせて変化するライトを備えた冷蔵庫(?)なのかもしれません)。顧客のニーズをしっかりと捉え、それに応えるために熱意をもってビジネスを推し進めていく有能な経営陣が、最終的に成功を収めることができるのではないでしょうか。
ヒマラヤ山脈が見守るガンジス川の岸辺でくつろぐ時間も、少しだけありました。ヒンドゥー教の女神「ガンガー」として崇拝されている川の岸辺で、今回の訪問で出会った人々のエネルギーや野心、そして新たな発見などについて振り返り、思いを巡らしていると、川のほとりの木に、あるメッセージが掲げられていることに気づきました。奇しくも、そのメッセージは、今回の訪問を一言で要約するようなものでした。それは、「人生で最も大切なものは――“もの”ではない」。
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