- Article Title
- 米国の政策変更が及ぼす、インドのITサービス企業への影響について
●インド株式市場は底堅く推移するも、ITサービス企業については米国の政策変更などが株価の重荷に
●ただし、ITサービス企業への直接的な影響は限定的とみられ、持続的に発展が期待できるとの見方に変わりなし
●迅速なインド政府の政策対応などにより、インド経済は成長率の加速が予想されるなど、明るい材料も
インド株式市場は底堅く推移するも、ITサービス企業については、米国の政策変更などが株価の重荷に
2025年年初来のインドの株式市場は、トランプ関税を巡る不確実性の高まりが懸念されながらも、金融緩和や減税、インフラ投資などの財政出動による景気下支えへの期待などを背景に、底堅く推移しています。
その一方、2025年9月には米議会で外国に業務委託(アウトソーシング)を行う米国企業に25%の税金を課す案が浮上したほか、トランプ米大統領が専門技術を持つ外国人向けビザ制度(H1Bビザ)を大幅に見直し、厳格化する大統領令に署名したことなどを受けて、ITサービス企業の株価は、低調な動きとなっています。
米国の政策変更による、ITサービス企業への直接的な影響は限定的とみる
当ファンドの運用チーム(以下、運用チーム)では、米国による就労ビザ厳格化や、アウトソーシング課税などによるITサービス企業の業績への直接的な影響は限定的であるとみています。
多くのITサービス企業が米国に配置する社員数は、全社員の10分の1から6分の1程度にとどまり、しかもその大部分は、米国の市民権や永住権を有する人材であり、ビザを必要としていません。今回の就労ビザの厳格化は、新規申請に対して適用されるため、一段とオフショア化を進めることなどによっても、マイナスの影響を吸収できると考えられます。特に、大手企業では、これまでも、米国での現地採用を増やすほか、自動化やデジタル配信への投資を増強してきました。
さらに注目すべきは、ドイツ、英国、カナダなどの国々が、H1Bビザを取得できないかもしれない、インドのエンジニアの受け入れを歓迎すると表明していることです。これは、新たな成長機会につながる可能性もあると考えられます。
持続的に発展が期待できる注目分野との見方に変わりなし
インドは、英語を話す、優秀で若い理系人材の宝庫です。ITサービス企業は、こうした人材を活用してきました。多くの場合、エンジニアはインドを拠点とし、相対的に低い賃金で、世界中の企業のあらゆる技術ニーズをサポートしています。情報技術は、動きの速い分野です。Y2K問題(多くのコンピュータシステムが、西暦年を下2ケタで管理していたため、西暦2000年を正しく認識できず、誤作動の可能性があるという問題)から、SAPなどのERP(企業の会計、人事、生産、販売などの基幹業務を統合管理するシステム)、セールスフォースなどの顧客関係管理プラットフォーム、さらに直近ではAI(人工知能)などが登場しています。多くの企業は、発展していくために、情報技術に関連した課題や新しい情報技術を活用する必要に迫られており、ITサービス企業のサポートが必要とされてきました。それは、今後も同様であると考えられます。
こうしたことから、運用チームは、インドにおけるITサービスを、今後も持続的に発展が期待できる注目分野の1つと位置付けています。当ファンドにおける2025年8月末時点のITサービス企業を含む情報技術セクターの組入比率は、12.4%と相対的に高位としています。より多様な顧客基盤を有し、質の高い経営が行われているITサービス企業を厳選したうえで、当面は、現時点の組入比率を維持する方針です。
※組入比率は、主たる投資対象であるピクテ-インディアン・エクイティーズの状況
迅速なインド政府の政策対応などにより、経済成長率の加速が予想されるなど、明るい材料も
インド経済および株式市場は、安定した政権による継続的な改革の推進や旺盛な国内需要などによって支えられていくとみられます。
インド準備銀行(中央銀行)は2025年10月1日、2025年度(3月期末)の実質国内総生産(GDP)の成長率見通しを、前年度比6.5%から6.8%に上方修正しました。米国による高関税や就労ビザ厳格化などによるインド経済への直接的な影響は限定的であり、9月に実施された物品・サービス税(GST)減税などによって消費が活性化し、経済が底上げされるとの見方を示しました。引き続き、消費は、インド経済の成長にとって大きな原動力です。
より注視すべきは、米国のインドに対する政策の変化がもたらす、二国間関係です。インド政府は、米トランプ政権と積極的に交渉を継続しており、両国にとって良い結果に至るよう、多くの関係者が取り組んでいます。しかし、二国間関係の緊張の度合いは、これまでより強くなっています。また、交渉の最終的な決着の時期、内容を予測するのは困難です。
こうしたなかで、インド政府は、米国への輸出依存度を低下させるため、輸出先の多角化に向けた輸出促進プログラムの立ち上げや、高関税で影響を受けるとみられる繊維業界などに対して支援措置を打ち出しています。また、GSTの税率の合理化や、ビジネスがしやすい環境の整備などの改革を加速させ、外的なショックを吸収すべく、経済の強靭化を進めています。
インド株式市場においては、今後も当面、米国とインドの二国間関係を巡る動向を受けて、値動きが大きくなる可能性があり、引き続き注視していく必要はあります。しかし、中長期的なインド経済およびインド企業の成長力には変わりはありません。足元でも、迅速なインド政府の政策対応などにより、経済成長率の加速が予想されていることは、明るい材料であると考えられます。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した販売用資料であり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。取得の申込みにあたっては、販売会社よりお渡しする最新の投資信託説明書(交付目論見書)等の内容を必ずご確認の上、ご自身でご判断ください。
●投資信託は、値動きのある有価証券等(外貨建資産に投資する場合は、為替変動リスクもあります)に投資いたしますので、基準価額は変動します。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。
MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。
個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。