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- 2025年のインド株式市場と当ファンドの運用状況
2025年年初来(12月15日時点)のインド株式は、上昇となりましたが(MSCIインド株価指数、現地通貨ベース)、米国の対インド政策などの外的要因が重荷となり、米国株式などに比べると小幅な上昇にとどまりました。こうした市場環境下、当ファンドの基準価額は、ルピー安・円高による為替要因の影響もあり、下落となりました。
2025年のインド株式市場|米国の対インド政策などの外的要因が重荷に
これまで相対的に好パフォーマンスを継続してきたインド株式ですが、2025年年初来(12月15日時点)では、上昇したものの(MSCIインド株価指数、現地通貨ベース)、米国の対インド政策などの外的要因が重荷となり、米国株式などに比べると小幅な上昇にとどまりました。
【期間別にみた、2025年年初来のインド株式の動き】
① 2025年前半|低調なスタート、その後4-6月期は上昇に転じた
2025年年初のインド株式は、2024年秋以降の下落基調を引き継ぎ、低調な推移となりました。その後2月半ば以降、トランプ関税への懸念を巡る不確実性の高まりなどが、世界の株式市場に影を落とし、4月初旬には世界的に大幅安となりました。そうしたなか、インドはトランプ関税によるマイナスの影響度が相対的に小さいとみられることや、景気サイクルや企業業績に好転の兆しがみられたことなどが追い風となり、4-6月期は上昇に転じ、相対的に堅調な推移となりました。
② 一進一退の展開となった7-9月期
7-9月にかけては、米国の対インド政策がマイナス材料となった一方、インド当局の景気下支え策の効果への期待などのプラス材料が交錯し、一進一退の展開となりました。
(マイナス材料)
トランプ米大統領が8月6日、インドがロシア産原油を直接または間接的に輸入しているとし、そのペナルティとして、インドからの輸入品に対して25%の追加関税を課す大統領令に署名したことで、それまでに発表されていた25%の相互関税とあわせて、インドからの輸入品に対し最大50%の関税が課されることとなりました。また、9月には米議会で外国に業務委託(アウトソーシング)を行う米国企業に25%の税金を課す案が浮上したほか、トランプ米大統領が専門技術を持つ外国人向けビザ制度(H1Bビザ)を大幅に見直し、厳格化する大統領令に署名したことなどを受けて、インドの主力産業であるITサービス企業へのマイナスの影響が懸念される状況となりました。
(プラス材料)
一方で、インド政府は、こうした難局を乗り切るため、外交面では米国以外の国々との関係を深める一方、内政面では改革を加速させ、米国の対インド政策などによるマイナスの影響を吸収することを目指してきました。内政面では、2025年9月、物品・サービス税(GST)の税率の区分が簡素化され、さらに多くの品目で税率の引き下げを実施し、減税よる消費の促進などの効果が期待されました。また、インド準備銀行(中央銀行)も、利下げや流動性供給の拡大などによる、景気下支えを継続しました。
③ 懸念がやや後退し、底堅い推移となった10月以降
10月以降は、インドと米国の貿易交渉の進展への期待や、インド国内のインフレ率の低下から追加利下げ期待の高まりなどが下支えとなり、底堅い推移となりました。
2025年年初来の当ファンドのパフォーマンス状況
こうした市場環境下、インド企業の株式に厳選投資を行うアクティブ・ファンドであるiTrustインド株式(以下、当ファンド)の基準価額は2023年、2024年と大きく上昇してきましたが、2025年年初来(12月15日時点)は、ルピー安・円高による為替要因のマイナス寄与などから、-2.1%となりました。
当ファンドの投資先銘柄において、2025年年初来の基準価額に対してマイナスの寄与度が大きかったのは、メイクマイトリップ、インフォシス、マンカインドファーマなどでした。一方、マックス・ファイナンシャル・サービシズやバジャジ・ファイナンスなど、GST減税による恩恵を受けると期待された銘柄などについては、プラス寄与となりました。
【ご参考|2025年年初来の基準価額に対して、マイナス寄与度が大きかった銘柄について】
メイクマイトリップ
(株価下落の背景)
同社の株価は、インド国内の旅行需要の増加期待を背景に2023年以降株価が大きく上昇しており、バリュエーション(投資価値評価)も高い水準にありました。こうしたなかで、業績動向に対するマイナス材料がいくつか浮上したことなどが警戒され、株価が下落したとみられます。
2025年5月に発生したインドとパキスタンの武力衝突などの地政学リスクの高まりを受けて、旅行・レジャー需要の冷え込みが懸念されました。また、インド国内の航空供給制限(6月のエア・インディア機墜落事故を受けた運航停止や安全調査の強化やインド民間航空総局(DGCA)が7月から段階的に導入した新たな乗務時間規制などの影響による)などの影響から、2025年7-9月期決算が予想を下回る内容であったことも、投資家の失望を誘いました。
(運用チームの見方・方針)
消費や旅行などに対して旺盛な意欲を持つインド国内の中間所得層の拡大に支えられ、今後も旅行関連分野について、中長期的に成長が期待できるとの見方には変わりありません。インド国内のオンライン旅行予約サービス大手の同社は、強力なブランド力や事業基盤を有しており、競争優位性があると考えています。こうしたことから、株価が下落した局面で、買い増しを行いました。
インフォシス
(株価下落の背景)
2025年3月期決算の発表と同時に示された売上高見通しが、慎重な内容であったことから、今後の成長に対する懸念が浮上しました。また、引き続き、海外の顧客におけるITプロジェクト向け支出を巡って懸念する向きも多くありました。さらに、トランプ米政権下での、アウトソーシング課税強化や、ビザ制限などの動きから、インドのITサービス企業はマイナスの影響を受けるとの警戒感が、インフォシスを含むインドのITサービス企業全体の株価にとって下押し圧力となりました。
ただし、2025年7-9月期決算は堅調な内容であったほか、人工知能(AI)ブームによってより多くの顧客企業がIT関連プロジェクトへの投資を検討していることなどを背景に、明るい見通しを示しています。
(運用チームの見方・方針)
インドのITサービス企業にとって、米国のビザ制度の見直し(申請手数料の引き上げ)が大きな混乱を引き起こす可能性は低いとみています。多くのインドのITサービス企業の米国拠点では、従業員の大部分が米国の市民権や永住権を有する人材です。また、今回のビザ制度見直しでは、新規に申請する場合に適用されます。また、インドのITサービス企業は、オフショアリングへのシフトを検討し、海外就労ビザへの依存度を減らすことも進めています。そのため、今後もインドのITサービス企業が、米国をはじめとした世界中の顧客企業に対してサービスを提供し、この分野での優位性を維持していくものと考えています。
当ファンドのポートフォリオにおいては、ITサービス分野の企業のなかで投資銘柄の入れ替えを行いました。この一環で、11月にインフォシスについてすべて売却し、その一方でバリュエーション面で魅力があり、成長率や利益率の改善が期待されることから、株価の上値余地がより大きいと考えられる企業への投資を開始しました。
マンカインドファーマ
(株価下落の背景)
医薬品業界における競争激化に対する懸念や、トランプ米大統領の関税政策を巡る思惑などが株価の重荷となったとみられます。また、2025年7-9月期決算でも、慢性疾患治療薬分野の好調などを背景に売上高は堅調であった一方、利益の伸びが予想を下回ったことなどから、2024年に買収したBSV社の統合コストや金利負担などの影響が懸念されました。
(運用チームの見方・方針)
同社は、インド国内で需要拡大が予想される糖尿病などの慢性疾患治療薬に注力していることなどから、注目しています。さらに、ガバナンスの改善に前向きに取り組んでいる点も評価できると考えています。中長期的にみた同社に対する成長期待は、現時点では変わりがなく、11月の株価下落局面で、買い増しを実施しました。
今後の見通しと運用方針
足元のインド株式市場は、米国などの対インド政策の動向や、為替相場の動向などにより、短期的に変動幅が大きくなる局面もみられます。しかし、インド経済は人口と所得の増加などの構造的な成長要因を持っており、インドの株式市場は、長期的に魅力的な投資先であるとの見方に変わりはありません。引き続き、インド当局の安定したガバナンスや継続的な改革への取組み、旺盛な国内需要などが、インド株式市場を支えていくものと考えます。短期的には、国内の政策支援(標的を絞った税制措置や継続的なインフラ支出を含む)などが、世界貿易の弱体化や新たな関税措置からの間接的なマイナスの影響を緩和する助けになると予想しています。
足元のインド株式のバリュエーション水準は、過去の長期的な平均や他の主要国・地域株式の水準をやや上回っていますが、これは、インド経済に対する成長期待やインド企業の成長性・健全性などを反映したプレミアムであると考えられます。一概に割高と警戒するよりも、銘柄をしっかりと選別していくことが重要であると考えます。
過去1年間のインド株式市場の状況をみると、一部の銘柄やセクターなどに集中した熱狂的な動きが後退しています。このような市場環境からも、銘柄選別の重要性が再び増していると考えられます。
当ファンドの運用においては、引き続きボトムアップアプローチによるファンダメンタルズ(基礎的条件)分析により、長期にわたって持続的な成長が期待でき、バリュエーションに過度な割高感がなく適正な水準にあると考えられる優良企業を厳選した上で投資を行う方針です。質の高い銘柄であっても、市場全体が調整する局面では同様に株価が下落する可能性もありますが、そのような場合には、中長期的な投資の好機であると捉えています。
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