AIによるインドのITサービス業界への影響を考える ~市場の懸念は行き過ぎ?~
新たに開発されたAIエージェントが多くの業務系ソフトウェアを代替するとの見方などから、世界的にソフトウェア銘柄の株価が下落するなか、インドのITサービス企業の株価も、足元で大きく下落しています。多くの投資家が、AIの登場がインドITサービス業界にマイナスの影響を及ぼすと懸念していますが、そうした懸念は行き過ぎである可能性があるとみられます。
2026年年初来、インドのITサービス企業の株価は下落
世界的なマクロ経済の不確実性に加えて、新たに開発されたAI(人工知能)エージェントが、多くの業務系ソフトウェアを代替するとの見方などから、2026年年初来のインドのITサービス企業の株価は大きく下落しています。当面は、株価の変動が大きくなる局面が続く可能性もあり、警戒を怠るべきではないと考えます。しかし、株式のバリュエーション(投資価値評価)水準をみると、悲観的な見方の大半はすでに織り込み済みとみられる水準にまで低下しています。
多くの投資家が懸念する、AIによるインドのITサービス業界へのマイナスの影響
確かに、インドのITサービス業界は、重要な転換点にあるとみられます。多くの投資家が懸念しているのは、短期的な業績変動ではありません。AIといわゆる「バイブコーディング」(人間の自然言語による指示(雰囲気・ノリ=Vibe)に基づき、AIがアプリやソフトウェアのコードを生成・修正する次世代の開発スタイル。プログラミング言語の知識不要で、非エンジニアでもソフトウェアの開発を可能にするもの)が、ソフトウェア開発を容易にすることで、従来型のソフトウェアの需要やインドのITサービス企業が歴史的に担ってきた実装や統合、サービス業務が構造的に減少するという“終末的な”リスクです。また、AIを駆使することで、コーディングの効率が向上するため、開発に携わるエンジニアの必要人数は減少し、結果として業務契約料金が低く設定され、ITサービス企業の売上高にマイナスの影響を及ぼす可能性があることも懸念されています。
現時点で、実際の企業のファンダメンタルズに変化はみられていない
当ファンドの運用チームでは、多くの投資家がインドのITサービス企業に対して抱いているこうした見方は、過度に悲観的なものと考えています。多くの投資家の見方は急速に変化しているものの、企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)は大きく変化していません。インドのITサービス企業では、引き続き底堅い決算実績を報告しており、多くの場合、2026年度については業績の改善を見込んでいます。
顧客である企業側では、事業運営に深く組み込まれたソフトウェアシステムを簡単に置き換えることはできません。既存のシステムに加えて、新たにAIを活用した機能が追加される、ということが現実的で、実際に顧客側から求められています。一部の低価格帯のサードパーティソフトウェア(OSの開発元(ファーストパーティ)以外の企業・団体が開発・販売する、互換性のあるソフトウェア(非純正品))については、AIで構築されたより安価なカスタムソリューションに置き換えられる可能性があります。ただし、1990年代のインドのITサービス業界の台頭は、低コストのカスタム開発によって促進されたという事実を思い出すべきでしょう。経済性の観点から、高価な既製ソフトウェアよりもオーダーメイドのソリューションが選ばれるなら、インドのITサービス企業の活躍の場は十分にあると考えられます。
テクノロジー単価の低下は、需要を増加させる可能性も
業務契約料金の低下による、ITサービス企業の売上高に対するマイナスの影響についても、現時点では大きな影響はないものとみています。テクノロジーの単価低下は、デジタル変革の潜在的な加速要因であり、制約要因ではないと考えています。多くのプロセスは、依然としてレガシーシステム(過去の技術や仕組みで構築され、保守・運用が困難になりつつも、長年使い続けられている企業の基幹システム)や手作業によって運用されています。ここでは、IT投資への予算が主な制約要因となっています。AIが特定のタスクのコスト削減に貢献すれば、仕事の減少ではなく、より多くのプロジェクトが限られた予算のなかでも実行可能になるのではないでしょうか。これは「ジェボンズのパラドックス」(技術の進歩により資源利用の効率性が向上したにもかかわらず、資源の消費量は減らずにむしろ増加する)に一致しています。
実際、大手ITサービス企業は直近四半期決算発表時に、堅調な成長を予測する2026年度の見通しを示しています。
新たな需要に対して、体制を整えるインドのITサービス企業
インドのIT企業から報告されている決算実績や見通しはおおむね堅調なものである一方、投資家のセンチメントが急速に冷え込んでいることから、現状は実際のビジネスの状況と株価の動きには乖離があるとみています。今後、実際にリスクがあるとすれば、裁量的なIT支出の回復が予想よりも遅れることや、AIが新たな需要の拡大よりも速く、従来の収益源を圧縮する可能性などが考えられます。
しかし、コードのモダナイゼーション(古くなったレガシーシステムを最新の技術環境(クラウド、API、コンテナ化など)に適合するよう刷新すること)、AIを活用したプロセス再設計、レガシーシステムとAI機能の統合など、新たな需要の道筋は既にみえています。インドのITサービス企業では、すでにAI関連技術でのパートナーシップ強化や、従業員のスキルアップ、特定領域向けソリューション投資などを通して、企業変革の中心的存在であり続けるよう努めています。
当ファンドの運用方針~短期的な下落リスクを抑えるため、ITサービス企業の組入比率をやや引き下げ~
当ファンドの運用チームでは、ITサービス業界について中長期的には持続的な成長が期待できる注目分野と位置付けており、平時にはITサービス企業を中心とした情報技術セクターの組入比率を、インドの代表的な株価指数(MSCIインド株価指数)に対してオーバーウェイトとしていますが、足元では、市場環境を考慮し短期的な下落リスクを抑えるため、この組入比率をやや引き下げ、株価指数並みとしています。今後、顧客企業におけるIT支出の改善や投資家のセンチメントの改善が見通せるようになった段階では、組入比率を再び引き上げることも検討する方針です。また、株価が低迷した局面で、ITサービス企業自身が大規模な自社株買いプログラム導入を検討する可能性もあり、注視していく考えです。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した販売用資料であり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。取得の申込みにあたっては、販売会社よりお渡しする最新の投資信託説明書(交付目論見書)等の内容を必ずご確認の上、ご自身でご判断ください。
●投資信託は、値動きのある有価証券等(外貨建資産に投資する場合は、為替変動リスクもあります)に投資いたしますので、基準価額は変動します。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。