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グロイン | 歴史は繰り返す~「資産株の時代」到来?
2022/06/10

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概要

●世界公益株式は2021年11月頃から世界株式のパフォーマンスを上回って推移
●ウクライナ侵攻と資源価格高騰で公益株式のインフレ耐性やディフェンシブ性が注目される
●1970年代のオイルショックを機に到来した「資産株の時代」と現在の状況に多くの類似点



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底堅い世界公益株式パフォーマンス

世界経済の成長鈍化懸念や物価高進に加えて、ウクライナ情勢には解決の兆しが見られず、中国では新型コロナウイルス対応のロックダウン(都市封鎖)が経済成長の障害となっています。また、日銀など一部を除く主要中央銀行による積極的な金融引き締めに対する警戒感も高まっており、金融市場は不安定な動きとなっています。2022年の市場予想*では引き続き物価の上昇が予想される一方、経済成長率予想は鈍化しており、景気停滞下で物価が上昇するスタグフレーションが懸念されています。   (*ブルームバーグ集計のコンセンサス予想)

このような状況下、世界株式は成長株中心に低迷するなか、世界公益株式は底堅く推移し、2021年11月頃から世界株式のパフォーマンスを上回って推移しています。この背景には、物価が高騰するなかで、1)実物資産を多く所有する公益企業の企業価値が高まっていること、2)公益企業の業績が景気変動の影響を受けにくく、物価上昇に強い特性が注目されたことなどがあげられます。

歴史は繰り返す~市場は「成長株の時代」から「資産株の時代」へ移行?

世界公益株式の世界株式に対する相対パフォーマンスは、2021年11月頃を直近のボトムとして上昇基調にありますが、過去60年以上の長期実績のデータが入手可能な米国株式でみても同様に、2021年11月を直近のボトムとして、米国公益株式は、米国株式全体を上回って上昇しています。

下図では、米国株式全体のパフォーマンスが米国公益株式(資産株)を上回った時期を「成長株の時代」、逆に米国公益株式のパフォーマンスが米国株式を上回った時期を「資産株の時代」としています。過去の実績では、産業のイノベーションが起こり普及が一段落しブームが終焉すると、見通しの安定性などが注目され公益株などの資産株がアウトパフォームする「資産株の時代」が到来しました。その後、再びイノベーションが起こると成長株ブームが到来し、成長株がアウトパフォームする「成長株の時代」となるという長期的なサイクルを概ね10年のスパンで繰り返してきました

1962年からの「成長株の時代」~ 「ニフティ・フィフティ」がけん引

1962年からの「成長株の時代」(上図②)は、当時の「ニュー・エコノミー」を代表するハイテクや新手のサービスの企業である、ポラロイド、デジタル・イクイップメント、ゼロックス、そして大型コンピュータの普及に伴い、IBMなどの上場優良50銘柄、「ニフティ・フィフティ」がけん引しました。

「資産株の時代」(1974年6月末~1990年10月末)へ

「ニフティ・フィフティ」がけん引した「成長株の時代」(上図②)から「資産株の時代」 (上図③)に移行する1974年前後の市場環境を振り返ると、1)1972年末には 「ニフティ・フィフティ」の多くの銘柄の株価収益率(PER)が40倍を超え、当時のS&P500の株価収益率の18倍を大きく上回るほど割高なところまで買い進まれていました。その後、物価がゆっくりと上昇に転じたあと、米連邦準備制度理事会(FRB)は1972年3月から利上げを開始し、これをきっかけに、ニフティ・フィフティ相場は大幅下落、ニフティ・フィフティ銘柄の多くがピークから半値以下となり高値回復まで数年を要しました。2)1973年10月には第4次中東戦争が勃発、アラブ石油輸出国機構(OAPEC)が石油の減産・禁輸を行ったのに並行して、OPEC(石油輸出国機構)が原油価格を翌年にかけて4倍に引き上げたため、3)原油価格が高騰、オイルショックとなり、物価が高騰、4)更に米国の政策金利は引き上げられました。5)公益業界では石油依存脱却のため、主要国の原子力発電の設備投資が拡大し、公益企業の保有資産も増価していきました。こうした環境下、1974年6月以降16年以上にわたり「資産株の時代」が続きました。

「資産株の時代」(1999年12月末~2009年1月末)へ~IT(情報技術)バブル崩壊

1990年代に入るとIT相場がけん引する「成長株の時代」(上図④)が到来しましたが、IT相場は2000年に入り崩壊し、それに続き約9年以上にわたる「資産株の時代」(前頁上図表⑤)となりました。1)IT相場が崩壊した理由の1つはPCやインターネットの普及が十分進んでいないもかかわらず、過度に割高な水準まで買い進まれたことがあげられます。2)原油の余剰生産能力が低下するなか、3)中国をはじめとした主要新興国の急速な経済拡大を背景に需要が拡大し、1990年代には1バレル20ドル前後で推移していた原油価格は2008年に140ドル台をつけるまで上昇していきました。主要国の全体の物価も上昇していきましたが、新興国の安価な労働力と製品の輸出などを背景に1970年代のような大幅な上昇には至りませんでした。4)米国は2004年6月から利上げを開始しました。5)公益業界では、天然ガスや石炭発電の設備投資が増加し、同発電の比率が高まっていきました。

現在の環境~1970年代の「資産株の時代」と多くの点が類似

その後2009年1月からFAANGがけん引する「成長株の時代」(上図⑥)が到来しました。現在の市場環境をみると、1)2021年11月以降、PERが割高な水準に上昇していたFAANG関連銘柄は利上げ懸念をきっかけに下落、2)2022年2月のロシアのウクライナ侵攻を背景に、3)コロナ禍での需給逼迫で上昇基調にあった原油をはじめとした資源価格が更に高騰し、世界的に物価が上昇、4)米国が利上げを開始、今後物価抑制を視野に更なる利上げが想定されています。5)また、公益業界では、化石燃料依存から風力・太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーへのシフトが加速し、設備投資が拡大すると予測しています。

歴史は繰り返すと言われますが、時代の変遷時には、1)割高な成長株、2)戦争などによる供給問題、市場の分断、3)資源価格高騰、物価上昇、4)利上げ、5)電力新規設備投資拡大など、共通点が多くみられます。特に現在の状況は1970年代の「資産株の時代」と多くの点が類似していることに注目です。

 



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